葉加瀬マイ 2018年11月29日号

シダックスは事業売却 生き残りを賭けたカラオケ業界の試行錯誤

掲載日時 2018年06月22日 08時00分 [社会] / 掲載号 2018年6月28日号

 5月30日、カラオケや給食産業で知られるシダックスが、事実上、カラオケ事業から撤退することを発表した。同社は『カラオケ館』を運営するB&V社に、カラオケ事業の運営子会社であるシダックス・コミュニティー(SC)の持ち株81%を売却し、約97億円の債権も譲渡するという。
 「カラオケ人口はバブル期のピーク時には及ばないが、2011年の最低の状況からは回復し、今も増加傾向にあります。その背景には、若い世代の“一人カラオケ”や、シニア世代のカラオケ人気の根強さがある。そのため、運営する『ビッグエコー』が今年30周年を迎える業界トップの第一興商は売上高289億700万円、前年同期比6.7%増と過去最高で絶好調。同じく業界大手で『まねきねこ』を展開するコシダカHDも好調を維持している。そうした中、シダックスのカラオケ事業のみが一人負け状態だったのです」(業界関係者)

 シダックスのカラオケ店は、ピーク時に全国300店舗以上、約1万6000ルームを展開し、'07年度の売上高は629億円と、当時2位の第一興商を倍近く引き離していた。それが一転、'15年度決算ではカラオケ事業の不振で71億円もの最終赤字に転落。'16年4〜9月期も34億円の最終赤字を計上。カラオケ店を合計78店舗閉店するという苦境に立たされた。

 シダックスはもともと、'59年に大手企業の社員食堂を請け負い急成長。現在も社員食堂や病院食堂、学校給食などを主力事業に、近年は学童保育へも事業展開している。一方でシダックスといえば即、カラオケ店を連想するのは、全国の幹線道路沿いでの店舗展開を精力的に行ったためだ。
 「'91年にファミレスを改装してカラオケ事業に参入したシダックスの最大戦略は、大型でのサービス提供でした。当初は同社の和食レストランが不振だったことから、“レストランカラオケ”の形態を取り入れ、一店舗700坪以上の大きくて綺麗な“レストランカラオケ”“食事と酒が付いた身近なレジャー”がウケたのです。忘年会や新年会などでの一次会からの貸し切りが大流行し、急速に成長しました」(同)

 自信満々のシダックスは一方で、店舗契約も15〜20年という長期のものを主体にして、解約に大きな違約金が発生する内容となっていた。
 「そこへ、時代の流れが襲ったのです。'06年、福岡県で起きた飲酒運転による追突事故で、車中にいた幼い子ども3人が死亡する事故が発生し、飲酒運転の厳罰化が進んだ。これにより郊外型の大型カラオケ店舗で飲んで歌った場合、代行車かタクシーで帰宅することが常識となり客が激減。さらに若者の酒離れ、一人カラオケブームと、シダックスの商売路線から真逆の方向へと需要が移ってしまった。加えて、店舗は長期契約のため、閉鎖も後手にまわり、シダックスの経営を大きく揺るがしたのです」(業界記者)

 これに対し第一興商は、シダックスとは異なり繁華街、鉄道駅近くのビルの中に店舗展開し、車社会とは最初から一線を画した戦略だったことが、功を奏したと言える。
 「第一興商のカラオケ機器(DAM)は改良を重ね、最新のものは2種類の映像を同時にプロジェクターへ投影させ、メーン映像はライブで歌うアーティスト本人、もう一方にライブ会場の観客の様子を映し出し、まるでライブ会場にいる雰囲気が味わえる。他にも女子会用やキッズルーム、歌って踊れるフリカラルーム、CDが作れるレコーディングルームと、客の多様性に応えるサービスが当たった。さらに第一興商の関連飲食店をカラオケ店舗と同じビル内に展開するなど、次々に新機軸を打ち出し、ことごとくウケたのです」(同)

 '16年11月に東証一部上場も果たしたコシダカHDは、'97年6月に群馬県伊勢崎市で閉店したカラオケボックスを居抜きで改装し『まねきねこ』をオープンさせて大成功。以来、全国展開で500店舗を突破するまでに成長している。
 「居抜きを改装しての店舗展開のため、他店より格安の料金設定が可能で、飲食の持ち込みも自由など、当時は他社になかったアイデアで、あっという間に全国に拡大。ついに一部上場にまで到達した。他のフィットネス事業も順調で業績を伸ばしている」(同)

 しかし、前出の業界関係者は、今後のカラオケ業界についてこう話す。
 「この業界が人口減少の煽りをモロに受けやすいことを考えれば、どこも順風満帆とは言えない状況が待ち受けている。そのため少ない客の取り合いとなり、客単価の引き上げ、一方で人件費などのコスト削減をしつつ、飽きられないために新たなサービスを展開しなければならない。その中でどこが脱落するのか。これからが正念場です」

 試行錯誤は続きそうだ。

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