菜乃花 2018年10月04日号

半導体事業で真逆を行く ソニーと東芝の明と不安

掲載日時 2018年09月05日 15時00分 [社会] / 掲載号 2018年9月13日号

 IT、AI(人工知能)やEV(電気自動車)に不可欠な半導体事業を巡り、日本を代表する二大企業の対応が大きく分かれ、日本、世界の産業界が今後の成り行きを注視している。

 その二大企業とは、東芝とソニーだ。東芝は8月8日、2018年4―6月期連結決算報告をした。それによれば、つい先日まで粉飾決算、原発事業の失敗などで1兆円の赤字を抱え破綻寸前だったが、純利益が前年比20・2倍の1兆167億円と急伸。理由は虎の子の半導体企業の東芝メモリを約2兆円で売却できたためだ。

 米調査会社によれば、'16年時点の東芝の半導体メモリは、世界で35%のシェアを占めるサムスン電子(韓国)に次ぎ約19%で世界2位だった。その特筆すべき技術は、NAND型フラッシュメモリ。多くの情報の記憶が可能で書き込みが高速、電源を切ってもデータが消えない上に、安価なのが特徴だ。

 「スマートフォンやデジタルカメラ、パソコンなど、今となっては欠かすことができない技術。サムスン電子がシェアトップですが、もともとは東芝が開発し、海外普及のためにサムスンに情報提供したのです。今は容量アップのため、平面から立体的に容量を増やそうと、三次元開発競争が激化しています」(経済誌記者)

 それだけに東芝メモリが“売り”に出されると、シャープを買収した台湾の鴻海精密工業など世界中の電子関連企業が、こぞって買いに走った。その結果、日米韓の企業連合が設立したPangeaへの売却がまとまった。

 しかし、半導体事業を手放してしまった東芝は、一時的に利益が出たとはいえ、長期的にどう経営を立て直し、何を柱とするのか。5月中旬の記者会見で車谷暢昭CEOは「ようやくスタートラインに立てた」と述べ、赤字事業の立て直しを図る一方、AIやモノのインターネット=IoT技術を活用した事業の強化を検討するという。

 「そもそもの東芝の3本柱は、一つが売却してしまった半導体。もう一つが、やはり赤字解消のためキヤノンに売却した医療機器。残った一つは原発事業なのですが、こちらは東日本大震災以降、世界的に原発が敬遠される風潮の中で立ち往生している。つまりスタートラインとはいえ、今の東芝には今後の稼ぎ頭の柱がない状況なのです」(同)

 一方、'18年3月期に20年ぶりに過去最高の7348億円の営業利益を計上したのがソニー。こちらは半導体への対応が東芝と真逆で、5月に公表した中期経営計画では、今後2年で半導体中心の設備投資に1兆円もの資金を充てる方針をぶち上げている。
「ソニーは今後3年間で、2兆円のキャッシュフローの目標を立てている。その稼ぎ柱の一つが、現在の好調さを支えるゲーム機『PS4』に代表されるネットワークサービスの堅持。二つ目が、定額のストリーミング配信向けの音楽コンテンツ。三つ目が4K、8Kのテレビやカメラなどの高付加価値家電。これらグループ全体で稼ぐ豊富なキャッシュをベースに、半導体事業に資金を注ぎ込むという」(経営アナリスト)

 ソニーの半導体事業とはどんなものか。IT関係者はこう言う。
「強みは世界で52%のシェアを持つ、高機能スマホ画像に欠かせない、CMOSイメージセンサー技術。そこへ、さらに1兆円投資するといいます。このCMOS技術の先行度は断トツで、今後はサムスンでさえ大きく引き離すとされているのです」(同)

 ただし、そんなソニーにも不安はある。現時点では、CMOS技術の大半がスマホ向け。そのスマホの年間出荷台数は15億台弱と大きいが、市場の成熟が進み徐々に縮小の気配も見せ始めている。

 しかし、前出の経営アナリストは、ソニーの強気な投資をこう評価する。
「スマホの画像技術は、ソニー以外からもいいものが出揃いつつある。そのためソニーは、'19年の売上高を厳しく捉え、前年比約2.9%のマイナスを予測しています。しかし、それでも半導体投資を緩めない。つまり、一時的なスマホの不振による減速を想定し、次のステージを見据えているということ。今後は、防犯カメラや自動運転のクルマ用のカメラなどを強化する段階に来ている。そのための投資なのです」

 そうしたステージでブランドを確立させ圧勝するようなことがあれば、かつてウォークマンなどの大ヒットで脚光を浴びた強いソニーの再来となる可能性を秘めているという。

「東芝は売却で得た資金をどこに投下するか。IoT分野でもかなりの遅れをとっており、相当なスピード感が求められる」(同)
 半導体事業での選択が、今後の二大企業の行く末を大きく左右しそうだ。

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