菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 銀行冬の時代が始まった

掲載日時 2018年06月01日 08時00分 [社会] / 掲載号 2018年6月7日号

 三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクが、ATMを共通化する方向で協議に入ったと、5月11日付の読売新聞が報じた。銀行は、利用者の利便性を高めるためとしている。例えば、納付書を使ってATMで税金を納められるようにしたり、スマホで現金が引き出せるような高機能化を目指すとしているが、銀行の本音は、間違いなくコスト削減だ。ATMは、銀行と預金者の接点であり、銀行の顔だ。それを共通化しなければならないほど、銀行の経営が厳しくなっているのだ。
 3大メガバンクは、合計で2万台のATMを設置しているが、その費用は年間2000億円にも達している。ATMを共通化して台数を半減することができれば、1000億円の節約ができる。もちろん、そうなれば、利用者が不便になるのだが、それでも、やらざるをえないほど、銀行経営が追い詰められていると言える。

 バブル崩壊以前、メガバンクの経営は最強だった。20代終わりで支店長代理になると年収1000万円になり、30代で年収2000万円という強者も存在した。それだけの人件費を支払っても銀行が儲かったのは、「信用創造」と呼ばれる仕組みがあるからだ。
 銀行は、融資をするときに現金を提供するのではなく、借入する人の口座に融資金を振り込む。するとその分、預金が増えるから、その預金をもとに更なる貸し出しが可能になる。そうしたことを繰り返して、本来の預金の何倍ものお金を貸し付けることができた。日本の銀行は、貸し出しが預金を上回るオーバーローンという状態を続けたのだ。

 しかし、経済が低迷すると、資金需要が減った。いまや、メガバンクの貸出額は、預金額の3分の2ほどしかなくなったのだ。
 しかも、資金需要の低迷は、利ザヤの低下をもたらしている。いまや銀行の利ザヤは0.14%と、10年前の半分以下。これでは、預金を集めて貸し出しで儲けるという銀行本来の業務が、成り立つはずがない。
 実際、メガバンク3行は、店舗の統廃合だけでなく、大規模リストラを打ち出している。みずほグループは10年で1万9000人、三菱UFJは7年で9500人、三井住友は4年で4000人の削減を決めている。

 いまだに銀行員の年収はトップクラスを維持しているが、それも風前の灯だ。若い層を中心に、確実に年収が下がってきているからだ。今後は、定年まで勤めても年収1000万円に届かない可能性が高まってくる。ところが学生は、まだその事実に気付いていないようだ。キャリタスが行った来年4月に就職する大学生の就職希望ランキングで、文系の首位は三菱UFJ銀行、7位が三井住友銀行、10位がみずほフィナンシャルグループと、3大メガバンクが顔を揃えた。
 銀行員の処遇が悪化するのは、日銀の低金利政策のせいではない。金融自由化の影響が一番大きい。日本よりずっと早く金融自由化が進んだ欧米では、自由化後大きな変化が起きたという。それまで、世間から尊敬され、高収入が保証された銀行員が、普通のサラリーマンになってしまったのだ。現に米国では、窓口業務を行う行員の年収は200万円程度だ。日本も遠からず、そうした処遇になっていくに違いない。

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