園都 2018年6月28日号

話題の1冊 著者インタビュー 溝手康史 『登山者のための法律入門 山の法的トラブルを回避する』 ヤマケイ新書 900円(本体価格)

掲載日時 2018年02月19日 14時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年2月22日号

 ――最近、山でのトラブルが増えているといいます。何が法的に問題になっているのでしょうか?

 溝手 さまざまなケースがありますが、ツアー登山の場合、ツアーガイドは客の安全を守る義務があります。実際に事故が起きた際、ガイドに過失があったかどうかが争われるケースがありますね。また、登山ブームの中で、主に初・中級者を中心とした『登山講習会』が盛んですが、講習中に事故が起きると主催者の責任が問題になる場合もあります。
 読者の皆さんも友人と一緒に登山することがあると思いますが、リーダーに参加者の安全を守る法的義務はありません。もし、事故が起きた時に“連れて行ってもらった”という気持ちが強いとトラブルになってしまいますので注意してください。日本における登山は、山の所有者の黙認のもとに行われており、登山道が山の所有者によって通行禁止になったりすることがあります。登山道をマウンテンバイクで走ってもよいのか、トレイルランニングができるのか、犬連れ登山を認めるか、などの問題もありますね。

 ――よく遭難時に高額の救助費用が請求されるという話を聞きますが、実際はどうなんでしょうか?

 溝手 ヘリを含めて警察や消防の山岳救助活動は無料ですが、埼玉県の防災ヘリだけは有料です。警察や消防の山岳救助活動は期間が限られており、救助に日数が掛かった場合は、民間に救助活動を依頼することになります。
 この場合は、救助隊員1人について1日数万円も費用が掛かりますし、民間のヘリを利用した場合、1時間のフライトで数十万円の費用が掛かります。いざという時のために、費用をカバーする山岳保険に入っていた方が安心でしょう。

 ――登山を楽しむために、注意しなければならないポイントを教えてください。

 溝手 自然の中には街中と違って何が起きるか分からないリスクがあります。登山する時は“自分がリスクのあることをしている”という自覚を持ってください。登山では“自分の命は自分で守る”という自覚が基本になります。登山者1人1人、体力や技術が異なるので、まず自分のできるレベルを知り、無理をしないことが大切ですね。
 ツアーや講習会ではガイドの援助を期待できますが、転倒しないように歩くことや体調管理などはすべて自己責任です。登山は社会全体の仕組みの中で行われています。今まであまり意識しなかった人も、ぜひ本書を読んで、登山を巡る法律の仕組みの概要を理解し、考えてみてください。
(聞き手/程原ケン)

溝手康史(みぞて・やすふみ)
1955年生まれ。東京大学法学部卒。弁護士。日本山岳サーチ・アンド・レスキュー研究機構理事。著書に『登山の法律学』(東京新聞出版局)など。

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