中島史恵 2019年6月6日号

〈男と女の性犯罪実録調書〉③息を吹き返したら殺される

掲載日時 2019年04月11日 00時00分 [官能] / 掲載号 2019年4月18日号

 事件当日、文男が殺されることになったのも、ごく些細なことが原因だった。文男の父親がパジャマ姿でトイレ掃除をしていたので、尚美が「お父さんにパジャマを洗濯物に出すように言って欲しい」と頼むと、文男は機嫌が悪くなり、「謝れ!」と怒鳴ってきた。

 尚美は謝罪したが、それだけでは気が済まず、文男は「土下座しろ!」と要求。近くにあったリモコンや競馬新聞を投げつけられ、2時間近くも説教されることになった。

 その後、2人は外食に行ったが、また話を蒸し返され、尚美はラーメンのスープをかけられるという“暴行”を受けた。尚美は逃げるように家に帰ったが、まもなく文男も帰ってきて、「また前みたいにボコボコにしてやるぞ!」と言いながら、胸ぐらをつかみ、宙に浮くほど持ち上げられた。

 身の危険を感じた尚美は、とっさにテーブルの上にあった電気コードを手に取り、文男の首に巻き付けて絞め続けた。すると、文男は力が抜けたような感じで、膝から崩れ落ちて座り込んだ。

 文男の父親に見つかったら大変だと思い、リビングから隣の部屋に運ぼうとしていると、文男の父親がやって来て、酔い潰れた文男を尚美が運んでいるのかと勘違いし、足を持って運ぶのを手伝ってくれた。
「お父さん、ありがとう。後は私がやりますので…」

 尚美は衣装タンスにネクタイがあることを思い出し、再び首を絞めてトドメを刺した。文男が息を吹き返したら、確実に自分が殺されてしまうと思ったからだ。

 尚美はその夜、母親に犯行を告白したが、自首を勧められても翌日まで決心をつけられなかった。母親に「昼までに自首しなければ、こっちから110番する」と言われ、ようやく観念した。尚美は自ら夫を殺したことを通報し、駆け付けた警察官に殺人容疑で逮捕された。

 「風俗で働いていたことがバレてから、些細なことで暴力を振るわれるようになった。名前で呼ばれなくなり、『バカ、アバズレ、売女、貧乏神』と耳元で言われ続けた。最初は殺す気はなかったが、反撃されたらどうしようと怖くなり、夢中でやってしまいました」

 裁判所は「犯行直前に恐怖を感じたことはやむを得ず、経緯には酌むべきものがある。だが、気を失った後にネクタイで首を絞めたのは死を確実にするためで、防衛の範囲を大きく逸脱している」として、尚美に懲役3年6月を言い渡した。

 夫婦ゲンカで妻の過去の風俗勤務を持ち出すのはルール違反だろう。そうすると、離婚へ直結した道が待っているだけだ。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

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