米国が着々と進める北朝鮮、イラク「同時軍事作戦」

社会・2020/02/07 06:00 / 掲載号 2020年2月13日号
米国が着々と進める北朝鮮、イラク「同時軍事作戦」

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 1月26日夜、イラクの首都・バグダッドにある米大使館の敷地に、ロケット弾が着弾したことが判明した。イラクでは、米軍がイランの革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害以降、米軍施設への攻撃が相次いでいるが、米大使館を直撃したのは初めてとみられる。

 フランスの通信社『AFP通信』によると、3発が米大使館の敷地に着弾。現時点では、犯行声明は出ていないと報じている。

 米国とイランの全面衝突はいったん回避されていたが、軍事的な緊張が再び高まりつつあるようだ。

 恐ろしいのは、米国側はいつイランと戦争になってもいいように、着々と準備を進めているということだ。

「米国は、今年3月上旬に予定していた対ロシア戦に備えるヨーロッパ諸国との合同軍事演習『コールド・レスポンス』を中止しました。ノルウェー政府はその理由を、参加予定の米兵3000人が『イランとの戦闘に振り向けるもようだ』と、明かしています」(軍事ジャーナリスト)

 これ以外にも、対イラン戦の準備は急ピッチで進められている。

「インド洋のディエゴ・ガルシア島にある米軍基地には、B−52重爆撃機編隊が緊急配備されています。ここはイランの長距離ミサイルの射程外であり、イランに不穏な動きがあった場合は、いつでも攻撃できる場所でもあります」(同)

 ただ、米国が警戒しないといけないのはイランだけではない。今回の米大使館への攻撃に関しては、イラクが関わっていた可能性があるという。

 現在のイラク政府は、イラク戦争後に米国が支援してできた政権なのだが、そもそもイラク戦争は、サダム・フセインによるバース党支配の打倒にあった。同党を排除した結果、反イラン勢力(=イスラム教スンニ派)は新生イラクから排除。結果的に新生イラクは、シーア派(イラク人口の6割前後)から構成されることになった。

「イランはシーア派大国なので、当然、イラクに対するイランの影響力は高まったわけです。実際、ソレイマニ司令官は、イラク国内で何の気兼ねもなく反米活動ができていましたからね。今回の米大使館への攻撃も、ソレイマニ氏殺害に反発した親イランのイラク武装組織が、米国に報復したとも噂されています」(同)

 イラク政府は米国がソレイマニ氏殺害後に「外国駐留軍の追放」という決議を行って、米軍を追い出しにかかっている。1月24日には、バグダッドで駐留米軍の撤退を求めて、数万人の市民が参加したデモも勃発した。

 米国はイラン&イラクの警戒を怠ってはいけない状況が続いている一方、こうした米国の足元を見透かした北朝鮮は、2月16日の「光明星節(金正日総書記生誕祭)」に合わせて、長距離弾道ミサイル(ICBM)発射などの挑発行為に出る恐れがある。

「トランプ大統領は昨年12月、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議のために訪英した際には、金正恩党委員長を再び『ロケットマン』と呼びICBMなどのミサイル発射再開の動きを牽制している。短距離ミサイル発射には沈黙したトランプ氏も、米本土到達可能なICBMとなれば黙ってはいないはずです」(北朝鮮ウオッチャー)

 事実、米国は北朝鮮のICBM発射を厳重警戒しており、米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」と「ロナルド・レーガン」を中心とする2つの空母打撃群を朝鮮半島周辺に同時展開させた。また、核実験再開に備え、実験を探知する米空軍の特殊偵察機「WC−135(通称コンスタント・フェニックス)」も1月中旬に沖縄・嘉手納基地に配置している。

「両空母は、それぞれ戦闘攻撃機『FA18スーパーホーネット』などを約90機搭載。さらにミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦などと空母打撃群を構成する。まさに動く軍事基地です。このような複数の空母打撃群が朝鮮半島周辺に展開するのは、朝鮮半島が極度な緊張状態にあった2017年の北朝鮮危機以来のことです」(軍事アナリスト)

 正恩氏が、ソレイマニ司令官殺害を知ったのは、自身が昨年末に「新しい戦略兵器を目撃するだろう」と大見得を切った後だ。

「米国の本気を知った正恩氏は、いまさら取り消すのはみっともないかなと、悔やんでいるかもしれない。いまは『どこまでやったら、トランプ大統領を本気で怒らせるか』というレッドラインを真剣に計算しているでしょうね」(同)

 正恩氏が米国から怒りを買う行動は、ICBM発射だけではない。イランはソレイマニ氏殺害を受け、’15年に締結した「核合意(JCPOA)」をこれ以上遵守しないことを明らかにしている。つまり過去4年間、制約を受けていたウラン濃縮を再開させ、核兵器開発に乗り出す意向を表明したのだが、この核兵器開発に北朝鮮が関わることが予想されている。

「北朝鮮とイランは、1983年にミサイル協力協定を締結以降、核開発やミサイル供給といった軍事的な面で協力してきました。もし、イランの核兵器開発に北朝鮮が本格的に協力していることが明らかになれば、米国は両国を許すわけにはいかない。なので、水面下では北朝鮮とイランへの『同時軍事作戦』も進めているはずです」(同)

 戦争まで一触即発の状況が続く。

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