片山萌美 2019年7月4日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』第313回 第313回反・グローバリズムのトリニティ

掲載日時 2019年03月26日 06時30分 [政治] / 掲載号 2019年4月4日号

 2018年秋の第197回臨時国会において、移民法(改正出入国管理法)や水道民営化法(コンセッション方式)が成立したことを受け、さすがに「反・グローバリズム」の声が高まってきている。要するに「安倍政権、いい加減にしろ!」という話なのだろう。

 改めて、安倍政権が実施した政策を並べると恐ろしくなる。過去に、これほどまでに「グローバリズムのトリニティ」に沿った政策を実現した政権は存在しない。

 消費税増税、診療報酬・介護報酬の削減、公共事業抑制、移民法、コンセッション方式の水道民営化、漁業法改正、農協改革、種子法廃止、発送電分離、患者申出療養(混合診療)、インバウンド拡大、カジノ法(IR法)、残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)、派遣労働固定化、TPP、日欧EPA。さらには、グローバリズム路線を最終的に「後戻り不可能」にすることが明らかな日米FTA(TAGと呼んでいるが)までをも推進している。

 グローバリズムのトリニティとは、「緊縮財政」「規制緩和」「自由貿易(モノ、ヒト、サービス、カネの国境を超えた移動の自由化)」という政策パッケージになる。三つは必ず同時に推進され、不可分だ。よって、トリニティ(三位一体)なのである。

 年が明けて以降、反・グローバリズム系の言論人と話す、あるいは講演に招かれる機会が増えているが、「財政破綻論者」だらけであることに驚かされている。特定の誰かの利益最大化を目的とした「規制緩和」や、外国資本に得をさせる(そして、日本人が損をする)「自由貿易」に反対するのはいいのだが、同時に、
「だが、日本は財政破綻すると思う」
 と、口を揃えて主張するのだ。反グローバリズムを気取っていたところで、財政破綻論者も立派なグローバリストの手先だ。あるいは、自分が「不整合」なことを口にしていることすら理解できていないほどに、レベルが低い。

 例えば、反グローバリストが、
「日本のタネを守れ! 日本政府は食品の安全を守れ!」
 と、主張したとしよう。実にもっともで、筆者にしてもそう思う。

 とはいえ、政府がタネを守る、あるいは食品の安全基準を強化し、民間に守らせるためには「政府の支出」が必要なのだ。当たり前である。

 政府が交通インフラを整備するのも、医療や介護サービスを充実させるのも、科学技術を振興するのも、安全な水道水を適正価格で提供し続けるのも、食料の安定的な供給を維持するのも、グリホサート等の有害物質を排除するのも、すべて同じだ。

 政府は支出をしなければならないのである。ということは、財政破綻論が存在している限り、どれだけ、
「私たちの子供が食べる食品の安全を守ろう!」
「グリホサートまみれの小麦の輸入はやめよう!」
 と、叫んだところで、実現不可能ということになる。すべては政府が「支出するか、否か」の問題なのだ。

 しかも、現在の我が国はデフレーションという「支出不足=需要不足」に苦しめられている。デフレとは、国民経済の供給能力に対し、消費や投資という支出=需要が足りない経済現象なのである。つまりは、政府が国民を守るためにおカネを支出すれば、デフレ脱却に近づく。

 さらには、国債の100%が日本円建てで、国債金利は世界最低水準。加えて、日本銀行が量的緩和政策により国債の50%近くを購入し、実質的に返済不要。

 この状況で、どうやって財政破綻しろというのだろうか。

 日本の財政破綻論の歴史は長く、まずは1975年。通常予算において初となる赤字国債が発行され、当時の大平正芳蔵相は「万死に値する! 一生かけて償う」と嘆いた。さらに、1982年には鈴木善幸首相が「財政非常事態」を、1995年には村山内閣の武村正義蔵相が「財政危機」を宣言するなど、過去の政治家までもが繰り返し財政破綻を叫んできたわけだが、現実の日本は10年物国債でマイナス金利(▲0・044%)という、異常事態。つまりは、金融市場が「国債の不足」に苦しんでいる。

 ちなみに、2018年の政府の長期債務残高は1107・4兆円。村山内閣時の2.7倍、鈴木内閣時の5.4倍、そして「万死に値する」三木内閣時の「34・5倍」、1970年の「152・6倍」に達しているのである。それにも関わらず、国債金利は10年物でマイナス金利。つまりは、国債が買われすぎ、価格が高すぎるのだ。
「何か、おかしい」
 と、思わない方がおかしい。

 いずれにせよ、安倍政権のグローバリズム的な政策を批判する勢力、筆者の価値観でいえば「真っ当な人々」は、「緊縮財政」「規制緩和」「自由貿易」はトリニティであることを理解しなければならない。

 そして、反・規制緩和、反・自由貿易的な政策を推進するためには、緊縮財政では不可能という事実を知って欲しい。「政府は金を使うな」、「国民の安全は守れ」などと、無茶を言ってはいけない。

 さらに、我が国に財政問題などない。財政破綻の可能性はゼロで、緊縮財政に背を向け、国民の安全や豊かさを守る反・規制緩和、反・自由貿易の政策は、普通に推進できるのだ。

 反・緊縮財政、反・規制緩和、反・自由貿易のトリニティこそが、正しい反グローバリズムなのである。いわば、反グローバリズムのトリニティだ。

 落ち着いて考えてみれば、誰にでも理解できるはずだ。政府が国民を守るためには、支出を増やさなければならない。そして、デフレで国債金利が超低迷している以上、現在の日本政府は支出を増やすことが、むしろ望ましいのだ。

 上記の構造が理解できずに、反グローバリズムの運動を進めても、必ず負ける。
「国民の安全を守れ? 言っていることは正しいが、政府は財政破綻するから、もうおカネは出せない」
 というレトリックで反撃されるだけの話である。

 その際に、財政破綻論を完膚なきまでに否定できなければ、国民を守るために政府を動かすことはできない。反グローバリズムの本質を理解して欲しい。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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