鈴木ふみ奈 2018年11月1日号

【話題の1冊】著者インタビュー 桂歌助 『師匠 歌丸 背中を追い続けた三十二年』イースト・プレス 1,500円(本体価格)

掲載日時 2018年09月21日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年9月27日号

師匠の“ほめる人は敵 叱る人は味方”という教え

――東京理科大在籍中に入門した歌助さんですが、数いる師匠の中で歌丸さんに弟子入りした理由はなんだったのでしょうか?
歌助 当時、私は高校の教員を目指していたのですが、人前で話すのがとても苦手でした。当然、教員になるなら、生徒の前で上手に話ができないと話になりません。どうにかしなくちゃと考えた方法が“落語のテープを聴く”ことでした。私が好きになったのは、先代の5代目古今亭今輔師匠の『ラーメン屋』でした。この噺を聞いて、自分でも落語をやってみたいと思ったのです。
 そんな願望が芽生えていたある時、歌丸師匠がNHKの番組に出演しているのを見たんです。歌丸師匠は『藁人形』という噺を一席演じていました。そして「埋もれてしまった噺を見つけ出して、息を吹き返すのをライフワークにしている」と話していたのです。
 そんな師匠の落語家としての姿勢が大変、魅力的に思えました。
 しかも、私が初めて面白いと感じた『ラーメン屋』の5代目古今亭今輔師匠は、歌丸師匠が最初に入門した師匠だったのです。そんな経緯があって、歌丸師匠に入門する事を決めました。

――歌丸さんの晩年は入退院の繰り返しでした。どのような様子でしたか?
歌助 私が入門してから、数えきれないほど入退院を繰り返した師匠でした。実際、プロフィル欄に“趣味は入院、特技は退院”と自分で書くほどです(笑)。
 入院中は寝ても冷めても落語のことばかりでしたね。入院する時は、明治期に活躍し落語の神様といわれた三遊亭圓朝の全集を必ず病院に持っていき、いつも枕元に置いていました。圓朝の『塩原多助一代記』という人情噺がありますが、ギリギリまでこの噺を完成させようとしていましたね。
 残念ながら、完成前に目を瞑ってしまいました。無念だったと思います。あとを継いで私が完成させようと思っています。

――落語家になって32年、師匠からの教えで一番大切にしているものはなんですか?
歌助 師匠の教えで一番心に残っているのは“ほめる人は敵と思え、叱る人は味方と思え”という言葉です。「叱る人は自分を思ってくれている証し。ほめられて成長して行く人もいるが、周りがほめないとやらなくなるのは本物ではない。自分で考えて上手くいったら、自分で自分を心の中でほめなさい」というのが師匠の教えでした。
 この言葉がなければ、私はこの厳しい世界を生き抜くことはできなかったでしょう。
_(聞き手/程原ケン)
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桂歌助(かつら・うたすけ)
1962年9月19日、新潟県十日町市生まれ。'87年東京理科大学卒業。大学在学中の'85年12月、師匠歌丸に入門。'99年5月、真打昇進。古典落語を中心に活動中。

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