紗綾 2019年8月1日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★日産で起きたクーデター

掲載日時 2018年12月03日 07時00分 [社会] / 掲載号 2018年12月13日号

 11月19日に東京地検特捜部が、金融商品取引法違反の疑いで、日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏と同社代表取締役のグレッグ・ケリー氏の2人を逮捕した。ゴーン氏は、直近5年間の報酬を総額50億円と有価証券報告書に記載していたのに、実際は2倍の100億円を受け取っていた。

 逮捕を受けて、20日の東京株式市場では、日産の株価が5%強下落。理由の一つは、ゴーン氏なきあとの経営への不安だ。ゴーン氏は、’99年の入社直後に日産リバイバルプランを発表し、当時2兆円以上あった有利子負債をたった4年でゼロにする奇跡を起こしたことで、その経営力が高く評価されている。ただ、ゴーン氏が行った経営改革は、工場の閉鎖・売却、2万人を超えるリストラ、そして下請けの半分を切り捨てるコストカットであり、取り立てて目新しい戦略ではなかった。だから、ゴーン氏がいなくても日産はやっていけるだろう。

 もう一つの理由は、日産が上場廃止になる懸念だ。実際、’04年に西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載を理由として上場廃止になっている。上場廃止で、資金調達に行き詰まった西武鉄道は、ハゲタカファンドのサーベラスからの出資を仰ぐ羽目になり、一時は経営権を奪われかけた。ただ、日産が上場廃止になる可能性は低いだろう。今回の逮捕は、周到に準備されたクーデターとみられるからだ。

 その証拠に、ゴーン会長に逮捕状が執行される前に、日産はゴーン氏解任のための取締役会を開くと発表している。同時に日産側は、ゴーン氏の犯罪を告発した内部通報者が罰せられないよう、検察当局と司法取引をしている可能性が高いのだ。そうした点を考えると、ゴーン氏にすべての責任を負わせて、日産は上場継続ということで、東証と話がついている可能性も高いのではないだろうか。

 問題は、ゴーン氏がなぜ、こんな犯罪に手を染めたのかということだ。最大の理由は、彼の高額報酬に対する世間の批判が強いからだろう。ゴーン氏が会長を務めるフランスの自動車メーカー、ルノーの株主総会では、ゴーン会長の報酬が9億を超える高額であることが問題になり、54%の株主が報酬案に反対した。結果、ゴーン氏は報酬の一部削減に追い詰められたのだ。

 ただ、ゴーン氏の直近の報酬は、日産7億円、三菱自動車3億円、ルノー9億円と、3社合計で20億円近くに達している。これまでの経歴を考えると、ゴーン氏の手元には100億円以上の資産が残っているだろう。そんな大金持ちが、なぜ犯罪に手を染めてでも、裏金のような形で報酬を増やそうとしたのか。

 もちろん、最大の要因は、彼が長年権力を握り続けたこと。長期の権力は、必ず腐敗するのだ。ただ、もう一つ重要なことは、お金は持ちすぎると、“お金中毒”という病気にかかってしまうということ。100億円もお金があれば、孫の代まで全員が遊んで暮らせる。それでも、不正な形で、お金を増やそうとするのは、お金中毒になると、お金を増やすことでしか、幸福を感じられなくなってしまうからだ。

 今後、中毒患者の発生を防ぐためにも、企業の役員に億単位の報酬を支払うアメリカ型経営は、そろそろ抜本的に見直した方がよいのではないだろうか。

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