RaMu 2018年12月27日号

本好きのリビドー(231)

掲載日時 2018年12月05日 15時30分 [エンタメ] / 掲載号 2018年12月13日号

◎快楽の1冊
『証言UWF完全崩壊の真実』
髙田延彦、船木誠勝、坂田亘、ミノワマン、大仁田厚ほか 宝島社 1500円(本体価格)

★UWFの全内幕を髙田が独占告白
 UWFとは何か?
 それはプロレス史上初のひとつの運動体であった、とこれはターザン山本氏の台詞だが、『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 最終章 3派分裂の真実』と続くオーラル・ヒストリーのいわば“完結編”に当たる本書。

“夢と理想を追い求めた男たちの苦悩―シリーズ最終作!”なんてオビに記された惹句を見ると、思わず『仁義なき戦い』五部作か『日本の首領』三部作のイメージが脳裏をよぎってしまう。しかし、改めて通読してみれば、UWFの誕生と消滅、再生から解散、分裂とその後の展開には90年代以降、つい最近に至るまでそこらの政党の離合集散劇より、はるかに思想性が宿っていたのが分かるだろう(渦中にいた当事者たちの好むと好まざるとにかかわらず)。

 目指す形は違えどU系各団体がそれぞれ追求した「最強」の果てに、やがてグレイシー一族の存在を世界中に知らしめたやはり奇しくも“U”の字の付く苛烈極まる総合格闘技の祭典、UFCという名の海外から押し寄せる大波との対決を余儀なくされる…といった流れには、左翼じみた言い方は極力避けたいものの、何だか歴史の弁証法的因縁とでも呼びたい無限の物語性を感じさせられる。

 異端は異教より憎しの例えではないが、かつて堅く結ばれた同士的間柄であればあったほど袂を分かってからの近親憎悪は他者には計りしれない。だが、歳月を経て遂に、前田日明氏の語りに始まるこの大河シリーズ最終巻の巻頭を髙田延彦氏の回想が飾る意味は大きい。さらに、本書で光るのは編集構成の妙。インタビューの大トリがUWFからあらゆる意味で最も遠い所にいたかにみえる大仁田厚氏とは。そう、FMWも実は“U”の副産物だったのだ。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 麻薬王エル・チャポ。その名をニュースなどで聞いた読者諸兄も少なくないはずだ。

 本名ホアキン・グスマン、メキシコ人。世界最大の麻薬組織の首領。逮捕されるも2度にわたる脱獄に成功し、2016年には警察とド派手な銃撃戦を展開、3度目の逮捕。アメリカへ移送され、現在収監中。

「アル・カポネ以来の社会の最大の敵」と称される稀代の犯罪者が捕まるに至った迫真のドキュメントが、今回紹介する『標的:麻薬王エル・チャポ』(ハーパーコリンズ・ジャパン/2200円+税)である。

 分厚い書籍だが、ベラボーに面白い。麻薬捜査に携わり、エル・チャポの身柄拘束に執念を燃やす捜査官が実名で登場する。本書の著者、アンドルー・ホーガンだ。誰もが不可能と思われた麻薬王の素性と、謎のヴェールに包まれた組織の実態を地道に解明していく。その結果、分かったのは警察や軍にまで染み渡った腐敗の数々。

 ホーガン自身も命の危険にさらされながら捕獲作戦を実践するまでの姿は、さながら映画を鑑賞しているようなハラハラ、ドキドキの連続だ。

 世界には、「事件簿」といわれる種類の本が膨大に存在するが、広大かつ途方もない捜査の記録は、他に類を見ないほど複雑で緻密といっていい。同時に、日本では考えられないほど麻薬が浸透している中米の実態もつかめ、改めてわが国の平和をかみしめることもできるだろう。

 サスペンスやアクション好きの方には、ぜひオススメの1冊だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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