菜乃花 2018年10月04日号

郵便事業頭打ちで迷走する日本郵政の不動産会社設立の不安

掲載日時 2018年04月16日 15時00分 [社会] / 掲載号 2018年4月19日号

郵便事業頭打ちで迷走する日本郵政の不動産会社設立の不安

 ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、日本郵便3子会社からなる日本郵政が、4月2日に不動産子会社、「日本郵政不動産」を立ち上げた。同社は日本郵政の完全出資で、資本金は150億円、社員は50人程度というが、早くもこれを不安視する声が上がっている。

 日本郵政の不動産事業は、これまで日本郵便が中心となって、東京駅前や名古屋に大型複合ビル『KITTE(キッテ)』を展開したり、遊休地を利用した駐車場『ポスパーク』などを展開していたが、今後は順次、新会社に運営を移行するという。郵便局が不動産という畑違いとも思われる事業に乗り出す狙いの背景を、経営コンサルタントが、こう解説する。
 「日本郵政は昨年、海外投資の失敗などで'07年の民営化以来初となる289億円の赤字を出した。稼ぎ頭だったゆうちょ銀行は低金利で不振、加えて本業の郵便事業を引き受ける日本郵便は、インターネットの普及で年賀状利用者がガタ減りするなど、事業自体が縮小の一途をたどっている。日本郵便などは、正社員、非正規スタッフ併せて40万人。これを抱え、どのように強い経営体質に変えるかが、課題だったのですが、それも策が尽き始めているのです」

 日本郵便では、全国200カ所弱に不在時でも荷物を受け取れる宅配ロッカー『はこぽす』の数を増やし、ポイント制度を設けて利用を促して再配達の労力をカットした。さらに、縮小する郵便事業の補強策として郵便はがきを52円から62円に、宅配便『ゆうパック』の個人向け料金についても3月に100円〜200円値上げした。加えて、ふるさと納税では自治体やふるさと納税事業者との連携で、返礼品を郵送する料金収入で売上を伸ばす郵便局も出てきてはいるが、これらはトータルしても微々たる効果。そこで、さらなる“収益の柱”の必要に迫られていた。
 「そうした中、白羽の矢が立ったのが不動産業。一度の売買による収益幅が大きく、全国に約2万4000カ所ある郵便局の他、かんぽの宿など優良な土地を多く持つ。所有する土地の面積は東京ドーム5万5000個分にもなると言われ、その総資産は2兆7000億円〜3兆円とも言われています。それらの土地をフルに利用して、新たな収益を生み出そうとしているのです」(不動産業関係者)

 具体的には、新会社は郵便局の合理化による合併で空いた土地や、老朽化した社宅の閉鎖、すでに閉鎖したかんぽの宿の遊休不動産を活用するという。
 例えば、今年4月からは、東京都板橋区の日本郵便の社宅跡地に、ベネッセホールディングスに運営を任せて保育所を運営する。

 しかし、不動産業で“がっぽり”と思惑どおりにいくのだろうか。
 不動産アナリストは、こう指摘する。
 「日本郵政の'17年3月期の赤字は、アジアの国際物流進出のため'15年に6200億円を投じた、オーストラリア物流会社トール・ホールディングスの実績が上がらず4003億円の損失を計上したことが響いた。つまり、もともと大した価値のない物流会社を打ち出の小づちと見誤った日本郵政の経営感覚に、周囲は首をかしげているのです。それは昨年、野村不動産ホールディングスの買収を検討し、結局は折り合いがつかず失敗に終わったことにもつながっている」

 民営化時に69カ所あった、かんぽの宿の54施設が赤字、さらには14カ所あった逓信病院がすべて赤字であったことからも、ずさんな経営体質が垣間見え、依然、その甘さが抜け切れていないのでは、という見方が、不安視の理由だ。
 「確かに野村不動産の場合、売上高は3期連続で5600億円台。中期的には成長傾向で、'17年は対前年比13.4%増の6460億円、純利益は440億円と絶好調。最近では『プラウド六本木』の2億円台分譲マンションが話題になった。強気の野村不動産にすれば、今は高値で売りたい。日本郵政はTOB(公開買い付け)を実施する方向で検討を進めていたが、買収が公になると野村の株価が暴騰、さらに双方の条件も折り合わなくなり破談となったのです」(経済誌記者)

 その日本郵政が、これらの失敗を教訓に、今度は「ならば自前の不動産業」となって、そう簡単に利益を上げられるかどうか。
 「郵便事業は、過疎地や限界集落などへの配達など、強い公共性も求められる。そのユニバーサルサービスの維持と収益強化を一つのグループ企業内で同時に抱え、成長し続けるには、単に利潤だけを求める民間企業よりも舵取りが難しい。それだけに日本郵政は、単に不動産事業だけではなく、それを応用した、もうワンステップ上の新経営戦略が強く求められているのではないでしょうか」(前出・経営アナリスト)

 いずれにせよ、新事業の運転ぶりに注目だ。

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