美音咲月 2019年7月25日号

〈企業・経済深層レポート〉 絶対王者てんやが戦々恐々 飲食業界天ぷらチェーン店が急増中の理由

掲載日時 2019年06月19日 06時30分 [社会] / 掲載号 2019年6月27日号

〈企業・経済深層レポート〉 絶対王者てんやが戦々恐々 飲食業界天ぷらチェーン店が急増中の理由
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 天ぷら・天丼専門のファストフード店といえば、株式会社テンヤコーポレーションが展開する「てんや」が有名だ。大都市部を中心に展開する「てんや」は、全国に208店舗あり、“ファスト天ぷらチェーン”の絶対王者である。

 ところが今、その地位が脅かされつつある。
「飲食業界では、天ぷらブームが起きていて、『てんや』と直接競合するようなファスト天ぷらチェーン店が急増し、勢力を拡大しています」(飲食業専門の経営コンサルタント)

 例えば、和食ファミレス「和食さと」で知られるSRSホールディングスが運営する「天丼・天ぷら本舗 さん天」だ。
「同店は2012年に大阪市に1号店を出店しました。300円台で『海老天丼』を提供することで成長し、全国43店舗(2019年5月時点)にまで拡大しています」(飲食業界専門ライター)

 他にも、牛丼チェーン「松屋」を展開する「松屋フーズ」は、神奈川県に300円台で天丼を提供する「ヽ松(てんまつ)」という天ぷら専門店を実験的に始めた。

 現在、天ぷらブームが起きている理由はどこにあるのか。前出の飲食業専門の経営コンサルタントは、「理由は三つある」と分析する。
「一つは、女性の社会進出です。天ぷらは、油さえ沸いていれば簡単に調理できると思われがちですが、下ごしらえや、後始末が大変です。自宅で天ぷらを揚げるとキッチンが油まみれになるため、家も汚れます。専業主婦ならまだしも、共働きの女性が会社から帰宅してから作るには手間暇がかかりすぎるため、天ぷらを揚げる家庭は減少傾向なのです」(同)

 結果、天ぷらを食べたい時はスーパーなどのお惣菜、または“外食”する傾向が強まっているのだという。

 二つ目の理由は、外国人観光客の増加だ。
「’08年に約835万人だった訪日外国人が、’18年には3000万人を突破しました。東京五輪が開催される’20年には4000万人も見込まれ、その経済効果は8兆円とも試算されています。その外国人が来日した際に、まず食べたい日本食といえば『すし』、そして『天ぷら』です。その需要に応えようと、外国人観光客が増えると共に飲食業界でも天ぷらが注目されるようになったのです」(同)

 三つ目は、天ぷらを揚げるオート・フライヤーの普及だ。これが、飲食業界で天ぷらブームが起きている理由として一番大きいという。そもそも美味しい天ぷらを揚げるには長年の経験が必要で、職人の技術に依存していた。
「従来の天ぷら専門店では、職人が素材を油の中に入れて、状態を見ながら一品ずつ丁寧に揚げていたのです。熟練の職人が必須のため、人件費もかかりますし、一定数の天ぷら職人を集めることが難しいため、天ぷらはチェーン展開には不向きな業態だといわれていました」(前出・飲食業界専門ライター)

 その常識を打ち破ったのが「てんや」だった。
「1989年に創業した『てんや』は、海老、魚介、野菜などを揚げた天ぷら5品がご飯の上にのった『天丼 並盛』を、みそ汁付きで税込み480円(現在は540円)で提供。当時は安くても天丼1杯が1000円前後でしたので、価格破壊を起こしたのです」

 価格破壊を起こせた理由は、「てんや」が独自開発したベルトコンベヤー式オート・フライヤーだ。
「このフライヤーは温度制御機能を持っていて、バイトでも素材を画一的にカットし、マニュアル通りに衣を付けてコンベヤーに流すだけで、自動的に美味しい天ぷらを揚げることが可能。つまりこのオート・フライヤーがあれば、店舗に熟練の職人は不要です。人件費が節約できるため、美味しい天ぷらを格安で提供できたのです」(前出・飲食業専門の経営コンサルタント)

 天ぷらの需要の高まりと同時に、こうしたオート・フライヤーが普及したことによって、格安の天ぷら・天丼を提供するチェーン店が急増しているのだ。
「今や天ぷらブームを支えているのは、オート・フライヤーと言っても過言ではありません」(同)

 また、ファスト天ぷらチェーンだけでなく、ファミレスや居酒屋といった飲食店でも、天ぷらに力を入れる店が増えているという。
「2015年に東京・恵比寿にオープンした立ち吞み居酒屋『喜久や』は、ビール、ワイン、日本酒といったお酒と、天ぷら料理を提供するお店です。天ぷらを揚げるのに特殊なフライヤーを使っていて、油切れがよく、低カロリーでヘルシーなため、女性客から大好評。現在は、東京と大阪で5店舗展開しています」(グルメライター)

 東京五輪前でもこれだけ盛り上がっていることを考えると、“天ぷらブーム”はしばらく続きそうだ。

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