葉加瀬マイ 2018年11月29日号

無理に抑えようとすると危ない! “くしゃみ”の意外な悪影響

掲載日時 2018年04月08日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年4月12日号

 春は花粉やホコリ、インフルエンザウイルスなどが空気中に漂い、それらの異物が鼻に入り込んで何かとくしゃみを出しやすい季節だ。さらにくしゃみは、出そうになった場合に周囲の人に迷惑がかかるからと、無理に抑え込んでしまう人も多い。しかし、これが返って自分へ悪影響を及ぼすことがあるという。
 「例えば、口や鼻を覆ってくしゃみをすると、鼻から咽頭までの上気道にかかる圧力が、通常のくしゃみの5〜24倍になる。英国の医学雑誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』では、鼻と口を覆ってくしゃみを抑えようとした30代の人が、食道の入り口にある梨状窩という部分に穴を開けたとの症例報告を掲載しているほどです。日本国内でも、鼻をつまんでくしゃみをして耳の中を傷つけ、外リンパ液が中耳に漏れて平衡障害を起こす例などがあります。これは、決して珍しいことではありません」(耳鼻咽喉科専門医)
 花粉症や風邪などでするありがちなくしゃみでも、その衝撃によって圧迫骨折、鼓膜破裂、脳動脈瘤破裂などの重大病を引き起こしかねないと指摘する専門家もいる。

 いま、日本列島は全国的に花見シーズンで賑わっているが、その一方で、まだまだ花粉症絶頂の時期でもあり、スギやヒノキの花粉に対するアレルギー反応で目や鼻はムズムズ、鼻水・くしゃみ、涙目のオンパレードだ。そのうち、くしゃみには目のかゆみや鼻汁など他の症状と違って、深刻な問題を抱えている。
 昭和大学病院の耳鼻咽喉科医師はこう言う。
 「花粉症の要因は、体内に多くの抗体が作られるアレルギー反応です。加齢によって自律神経の働きが低下することも挙げられますが、くしゃみ自体にどう対応するか、真剣に考える必要があります。花粉症の重症化の目安となる一つに、“くしゃみの発作が10回以上続く場合”という基準もあります」

 そもそもくしゃみは、鼻に侵入した異物を取り除くための“反射動作”だ。
 「鼻の粘膜に付着した花粉などの異物が神経を刺激して、肺と腹部の間横隔膜が収縮し、息を吸い込んで一気に異物を吹き飛ばす。その速度は、かつては時速300キロ以上で新幹線と同等などと言われていましたが、ハイビジョンシステムを用いた測定を再度行ったところ、最大時速は25キロ程度だということが分かりました。ただし、それでも衝撃は強烈で、脳と脊髄を覆う硬膜に穴があいて、その中の脊髄液が漏れる“脳脊髄液減少症”や“硬膜下血種”などにつながったケースも報告されていますし、やはり骨折の話も多く聞きます。骨がもろくなりがちな高齢者や若い女性の中には、くしゃみで肋骨骨折や脊髄圧迫骨折する方もいるんです」(専門医)

 くしゃみで引き起こしやすい骨折としては、脊髄圧迫骨折のほか、首周りの頚椎圧迫骨折、胸椎が骨折する胸椎圧迫骨折が挙げられる。
 「ぎっくり腰とは違う激しい腰痛に見舞われる圧迫骨折は、加齢とともに骨がもろくなりやすくなることから、くしゃみや体をねじるなど軽い力が加わるだけで引き起こすことが珍しくない。また、くしゃみで骨折しやすいのが、胸椎の一番下の12番目と、それに連なる腰椎の1番目です。ここは湾曲した背骨の頂上付近で負荷がかかりやすいため、骨折すると動けないほどの激しい痛みが襲う。さらに、骨折の破片が脊柱の内部に入り込み、神経を刺激してマヒを起こすことさえあるのです」(整形外科医)

 聞いただけも痛々しいが、糖尿病などで神経障害がある人や高齢者の中には、痛みをさほど感じない人もいるという。
 「『背中が曲がっている』と他人から指摘をされた場合や、あるいは『背が縮んで上に置いたものが取れない』などの症状で、初めて骨折に気が付くこともある。人によって痛みの伝わり方も違うのです。しかし、その骨折を放置しておくと、背骨のバランスが悪くなり他の骨への負担が大きくなる。背骨が骨折すると1年以内に“次の骨折”が起こる確率が高くなるとの研究結果もあります」(同)

 また、胸部のケガで最も多いとされているのが肋骨の骨折なのだが、前述のようにくしゃみをしただけで意外にも簡単に折れることがある。
 肋骨は左右12対の骨で、かご状に胸郭を形作っている。
 その胸郭には心臓と肺という重要な臓器が収まり、また、膵臓、脾臓、肝臓の一部も肋骨によって保護されている。
 「実は、全骨折の10〜20%を占めるほど発生頻度が高いのが、肋骨の骨折なのです。特に、12対の中でも第3〜第10肋骨が折れやすいと言われている。軽い力が加わっただけでも骨折を発生させてしまう可能性があるので、くしゃみなどの強烈な上気道への圧力を受ければ、ヒビが入ったり折れてしまうのは当然の話。高齢者が肋骨を折った場合、疼痛のせいで痰を出しにくくなり、肺炎の併発にも繋がりやすくなるのです。骨折した場合はその箇所を軽く押すと骨同士がきしむ音が鳴ったり、呼吸とともに痛みが強まるため、深呼吸や咳、くしゃみが非常にしにくくなります」(医療ジャーナリスト)

 さらに、くしゃみで引き起こす最も怖い事態としては、突然死を招く重大病で知られる、くも膜下出血がある。
 「その最大の要因は動脈瘤の破裂で、発生時の状況を調べた研究では、それはくしゃみによるものではなく、咳によるものが多い。単発のくしゃみに比べ連続して出る咳の方が、血圧上昇が高いと判断されているからでしょう。しかし、この時期の花粉症のように連続して出るくしゃみは、やはり警戒する必要があるでしょう」(同)

 くしゃみを完全に止める方法はないし、無理に止めてしまうのは危険ということだ。
 「その際は、我慢をせずに自然に出してしまうことです。周囲が気になるのであれば、ハンカチやティッシュなどで覆ってやることです」(同)

 くしゃみは決して侮れない。そのことを頭に入れておくだけでも、危険な状況に陥る可能性は避けられるかもしれない。


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