葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 小野一光 『全告白 後妻業の女「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと』 小学館 1,600円(本体価格)

掲載日時 2018年08月12日 13時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年8月16日号

 ――判明しているだけで11件、そのうち4件の殺人罪で起訴された筧千佐子ですが、容疑段階から一審の死刑判決まで、長期間にわたり取材していますね。

 小野 最初はここまで長く関わるとは思っていませんでした。しかし、取材が進むにつれ、かなり異常な事件だなと思うようになりました。11人の結婚、交際相手が死んでいる。しかも青酸化合物が使用されている。この尋常ではない事件を起こした筧千佐子とは、一体どんな人物なのか、興味が湧いてきたんです。1994年に最初の夫である矢野正一さん(仮名)が死亡してから、20年にわたり事件が繰り返されました。当初は事故として処理されていた事件もあり、他府県警は“今さら覆したくない”という態度があからさまだったですね。実際、薬物を使った殺人事件は立証が難しいため、事件化するのは大変だったと思います。

 ――逮捕後、裁判を傍聴して、筧千佐子の印象はどうでしたか?

 小野 とにかく饒舌でした。もともと、九州の進学高校出身で、銀行勤めをしていたこともあり、エリート意識が高い印象を受けました。頭の回転が早く、言葉がすぐに出るタイプでしたが、一方で、明らかに女性裁判官を敵視していました。男と女に対する接し方や話し方にかなり差があるんです。

 ――その口の上手さに被害者は騙されてしまったわけですね。

 小野 高齢者にとっては、たとえ金が目当てと分かっていても、皆、年下の千佐子に舞い上がってしまうんです。死に水を取ってくれるならすべてを渡しても構わない、という心境になるほど、のめり込んでしまうんですね。社会的に成功した立派な老人が『公正証書遺言』を言われるがまま、いとも簡単に作成し、全財産を譲る約束をしてしまうのですから、どれだけ千佐子が相手の心の中に深く入り込むのがうまかったかが分かるでしょう。

 ――死刑確定後、拘置所で22回の面会をしたそうですが、筧千佐子の様子に変化はありましたか?

 小野 すでに明らかになっている“事実”をぶつけて反応を見たのですが、自分に不利な出来事は、記憶の低下を理由にごまかすんです。恐らく本人は死刑になりたくないのでしょう。今後の裁判で無期を勝ち取るためにも、事実を認めないんだと思います。“生”に対する欲求はかなり強いと感じましたね。
 千佐子は、見た目は普通のおばさんですが、私が会った何人もの殺人犯の中で、“恐怖”を感じた数少ない人物だったと言えるでしょう。
(聞き手/程原ケン)

小野一光(おの・いっこう)
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。

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