リベラル政党はなぜ分裂を繰り返すのか? イデオロギー重視か現実路線か

政治・2022-06-22 18:43
リベラル政党はなぜ分裂を繰り返すのか? イデオロギー重視か現実路線か
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岸田総理はかなり焦っているらしい。楽勝と思われた参院選直前に急激な値上がりがやってきて、支持率がジリジリと落ちてきているからだ。

では野党の支持率がその分上がっているかというとそうでもない。最大勢力である無党派層は、だまって与野党の動きをみている。

さて、7月の参院選でリベラル政党の代表格、立憲民主党が大きく負けることがあれば、またこの党は分裂するのではないかと、筆者は勝手に思っている。共産党を除くリベラル政党は、やたらと分裂してきた歴史があるからだ。

たとえば、90年代に旧社会党は総理まで出し、「自衛隊は合憲」など現実路線を打ち出すと、その後に分裂を繰り返し縮小していった。

2009年8月30日、民主党が300議席を超える圧勝をして政権を奪取し、自民は野党に転落した。このときは一種の民主党ブームといっていい状態だった。蓮舫氏が「2位じゃダメですか?」という迷文句を吐き「脱官僚」「コンクリートから人へ」という言葉が流行った。

しかしそれは長く続かない。民主党鳩山首相はトンチンカンな政治を行い、野田政権では「増税はしない」という約束を破って消費増税10%の法案を通し、消費増税に反対する小沢一郎元代表ら約50人が民主党を離党。民主党は夢にまで見た政権交代を果たしたにも関わらず、政権を握っている間に分裂してしまった。

これらは自民党では考えられないことだ。

自民党内部には、安全保障を重視する清和会(現・安部派)と、経済を重視する宏池会(現・岸田派)がある。

岸田総理が率いる宏池会はハト派と呼ばれ、終戦直後の吉田茂元総理の「軽武装・経済重視」を引き継いでいる。岸田総理自身が「私はリベラル」と語ったこともある。一方、安倍元総理が率いる清和会はタカ派。言わずとしれた保守派である。

自民党内にリベラル派と保守派が、発足当時からずっと存在しており分裂はしてこなかった。

なぜか? これは自民党の「清濁併せ呑む」「水清ければ魚住まず」の精神が浸透しているからかもしれない。

また、通常資本主義国家において、国家が経済に手を出すことはあまりない。しかし日本の場合、1960年の『所得倍増計画』のように国家が経済を主導する政治を行ってきた。これは本来社会主義国がやることだ。

保守派タカ派の安倍政権時代でも、『働き方改革』などリベラル的政策を行ったり、リベラル派ハト派の岸田政権でも『防衛費の相当な増額』と、タカ派的発言をしている。

つまり自民党内に保守派とリベラル派があり、分裂せずに共存共栄しているというわけだ。自民党はイデオロギーよりも現実路線。リベラル野党が分裂を繰り返すのは、現実よりイデオロギー重視であるからかも知れない。

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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