菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第275回 移民送り出し国「日本」

掲載日時 2018年06月22日 14時00分 [政治] / 掲載号 2018年6月28日号

 資本主義では、インフレギャップ=人手不足の環境下において、「設備投資」「公共投資」「人材投資」「技術投資」という4つの投資により、モノ、ヒト、技術という経済の3要素を強化する。生産者1人当たりの生産量の拡大は、つまりは生産性向上によりGDPを拡大(=経済成長)するモデルになる。
 過去20年間、わが国が経済成長してこなかった理由は、単純に投資が不足していたためだ。投資の拡大なしでは、資本主義国は成長できない。
 投資による生産性向上は、実質賃金の上昇と(ほぼ)イコールになる。生産性向上で豊かになった国民は消費や投資を増やすため、総需要が拡大。またもやインフレギャップ=人手不足が深刻化する。
 あるいは、生産性向上の投資そのものが「民間企業設備」「民間住宅」「公的固定資本形成」という、需要そのものであるため、やはりインフレギャップは広がる。インフレギャップを生産性向上で埋め、豊かになった国民が需要を拡大し、またもやインフレギャップ。それを生産性向上で埋める。この回転こそが「経済成長の黄金循環」なのだ。

 幸いなことに、日本は少子高齢化により生産年齢人口比率が低下し、人手不足が深刻化している。この人手不足を「生産性向上のための投資」で埋めたとき、わが国の経済成長の循環は回り始める。
 ところが、現実の日本にはデフレを継続させ、経済成長を妨害しようとする組織が存在する。すなわち、政府である。政府は'18年6月に閣議決定予定の骨太の方針2018に、
●'19年10月、消費税率の10%への引き上げ
●PB黒字化目標(達成時期は延期されるようだが)
 と、2つの強烈な緊縮路線を盛り込み、さらには、
●外国人労働者の大々的な受け入れ
 までもが入る可能性が濃厚なのだ。

 政府が緊縮路線を改め、移民受け入れではなく生産性向上の投資への支出を増やせば、日本は再び「高度成長期」を迎えることになる。それにも関わらず、現実の政府の方針は「緊縮財政+移民受け入れ」と、まさに真逆になっているわけである。
 骨太の方針2018では、一旦帰国した技能実習生が再び来日し、追加的に5年間働くことが可能になる(もはや技能「実習生」でも何でもない)ことが盛り込まれると報じられている。加えて、建設、農業、宿泊、介護、造船業の5分野について「特定技能評価試験(仮称)」を新設。試験に合格すれば、就労資格を得られるようにするとのことだ。
 安倍政権が推進する、資本主義の原則に逆らう「移民受入」プラス「緊縮財政」により、日本国民は貧困化していく。何しろ、われわれは「(相対的に)安い賃金でも働く外国人」と、賃金切り下げ競争をさせられることになるのだ。もっとも、すでに日本国民の実質賃金は下がりに下がり、先進国最低。間もなく、東南アジアと肩を並べることになるだろう。すでに、サービス分野では東南アジアを下回っているジョブがいくつも存在する。

 日本の実質賃金はピーク('17年1〜3月期)と比較し、15%も下がってしまった。理由はもちろんデフレーションだ。
 デフレとは、確かに「継続的に物価が下がる」現象だ。とはいえ、厳密には「物価も下がるが、それ以上に所得が下がる」経済減少と表現するべきなのだ。理由は、デフレ期には物価下落と同時に「販売(=生産)数量の減少」が必ず発生するためである。すなわち、需要の縮小だ。
 実質賃金とは、物価の変動の影響を除いた所得水準である。所得が増えたとしても、それ以上に物価が上昇してしまうと実質賃金は下がる。同時に、物価が下落したとしても、それ以上のペースで所得が小さくなると、やはり実質賃金は下落する。デフレ期に発生する実質賃金の低下は、後者によるものだ。
 過去20年間のデフレで、実質賃金が15%も下がった日本国民。その上、日本政府は緊縮財政や移民受け入れにより、国民をさらなる貧困化に追い込もうとしているのだ。

 というわけで、賃金が下がり続ける日本に耐えられず、われわれ日本国民が先進国や中国に「出稼ぎ」に行く日が近づいている。移民送り出し国「日本」の誕生だ。無論、所得水準が下がった日本であっても、魅力的(相対的に賃金が高い)に見える国々も数多く存在する。
 将来的に、わが国は「安い賃金でも働く」外国人が続々と流入し、同時に日本国民が「高い賃金」を求めて外国に移民していく国家に落ちぶれることになるだろう。というよりも、すでに落ちぶれつつある。流入する移民と入れ替わるように「日本国民」が外国に出稼ぎに行く。そんな有様で、われわれ日本国民は「ナショナリズム(国民意識)」を維持できるのだろうか。日本国の中心たる、世界最古の皇統を守り通せるのか。
 大災害の際に、互いに助け合う、日本人のDNAに刻み込まれている「健全なナショナリズム」が失われ、その後、大災害が起きたとき(必ず起きる)、果たして日本は「日本」として存続できるのだろうか。

 重要なのは「だからダメなんだ! もう、おしまいだ!」ではない。ダメなことは分かっている。ダメなことを理解した上で、「政治」を動かさなければ「移民送り出し国『日本』」化は避けられない。という現実を踏まえて、国民一人一人が思考停止状態から脱し、真剣に国家、経済について考えるのだ。
 人口構造の変化により訪れた、千載一遇の「経済成長の機会」を緊縮財政と移民受入により潰す。誰が悪いのかといえば、もちろんこれらの政策を推進する安倍晋三内閣総理大臣であり、国会議員であり、官僚であり、学者であり、エコノミストであり、経済界だ。とはいえ、彼らの愚行の責任は、われわれ日本国民と「われわれの子孫」が引き受けなければならないのである。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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