竹内渉 2018年8月2日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第274回 衰退途上国化を阻止せよ

掲載日時 2018年06月15日 08時00分 [政治] / 掲載号 2018年6月21日号

 世界の主要国のGDP(国内総生産)について、日本がデフレに陥った'97年より前と比べると、背筋が凍り付く思いに駆られる。中国は'96年と比べ、GDPを13倍に増やした。インドは5.7倍だ。
 「中国やインドは新興国だから、GDPが伸びて当然だ」
 などと思ってはいけない。
 先進国の代表であるアメリカにしても、GDPを対'96年比で2.3倍に増やしている。カナダは2.4倍、イギリスは1.9倍。GDP成長という点でみると、「劣等生」はフランス、イタリア、ドイツの3カ国だ。何しろGDPが20年前と比べて1.4倍、1.5倍にしかなっていない。誠に情けない国々である。

 というわけで、わが国がどこに位置しているかといえば、何とダントツの最下位で「1倍」。20年前と比較し、GDPが増えていない。日本は劣等生ではなく、落第生なのだ。日本が経済成長していないのは、別に「日本人の努力が足りない」といった話ではない。単純にデフレであるためだ。
 デフレとは消費や投資という総需要が不足する経済現象だ。総需要が不足し、モノやサービスが売れず、価格が下がり、値下げ競争により生産者の所得が減る。所得が減った生産者が「買い手」に回ると、十分におカネがないわけで、モノやサービスを買えない。すると、またまた総需要の不足というわけで、悪循環が終わらない。これが、デフレーションだ。
 そして、モノやサービスの生産、消費や投資という支出(需要)、生産者が稼いだ所得の合計のことを「GDP(国内総生産)」と呼ぶのだ。GDPは生産面、支出面、(所得の)分配面と3つの面があり、3つのGDPは必ず総額が一致する。これをGDP三面等価の原則と呼ぶ。

 デフレとはGDPが必然的に伸び悩む(あるいは減少する)経済現象だ。というより、GDPが増えないからこそデフレだ。'97年以降、デフレからの脱却を果たせなかった日本のGDPが伸びていないのは、至極当たり前なのである。もっとも、長引く日本経済の低迷は、すでに「国家存亡の危機」をももたらしつつある。何しろ、GDPは所得の総計で、そして「税金」は所得から支払われる。当然ながら、GDPと財政規模は強い相関関係にある。
 現時点で中国のGDPは日本の2倍を上回っている。このまま日本が成長せず、中国が経済規模を拡大していくと、やがて「中国のGDPが日本の10倍」という時代が訪れる。財政規模も10倍、おそらく軍事支出は20倍を超えるだろう。わが国の20倍の軍事費を使う共産党独裁国家に、日本国は、日本国民はいかにして立ち向かえばいいのだろうか。立ち向かえない、というのが残酷な答えだ。現在の日本のデフレーション、低成長が続く限り、わが国は間違いなく将来的に中国の属国となる。

 子々孫々に「中国の属国」という悪夢を引き継ぎたくないならば、成長するしかない。より具体的には、GDPを増やすのだ。
 日本のGDPが増えていない理由は、明白だ。総需要不足というデフレーションが継続しているためである。すなわち、政府が消費、投資という支出を増やし、総需要不足を埋めるのだ。あるいは、消費税を「減税」し、民間最終消費支出という需要を拡大しても構わない。現在の日本に必要なのは、政府や民間の支出を拡大する政策なのである。というよりも、それ以外に日本を「中国の属国という未来」から救う手段は存在しない。
 それにも関わらず、日本政府は相変わらず存在しない財政問題とやらに両手両足を縛られている。

 政府は間もなく、今後の政策の「バックボーン・ポリシー」となる骨太の方針2018版を閣議決定する。すでに原案が報じられているのだが、財政関連は、
●財政目標
・プライマリーバランス
(基礎的財政収支、以下PB)黒字化目標達成を'25年度に先送り
・'21年度時点で中間検証
(1)PB赤字を対GDP比1.5%程度
(2)財政赤字を対GDP比3%以下
(3)政府の負債対GDP比率180%台前半
●消費税
・'19年10月に税率を10%に引き上げる
・'19年度と'20年度の当初予算で、消費税増税による需要減をカバーする景気対策に取り組む
●財政抑制策
・盛り込まない
 となる可能性が濃厚とのことである。すなわち、消費税率10%への引き上げが、骨太の方針に盛り込まれてしまうのだ。しかも、諸悪の根源である「PB黒字化目標」も、達成時期は先送りされるとはいえ、残ってしまう。

 公明党の石田祝稔政調会長によると、安倍総理大臣は、
 「'19、'20年度に相当思い切った財政出動をする」
 と述べたとのことだが、あくまで増税が前提の財政出動だ。結局のところ、安倍総理は「消費税率の10%への引き上げ」と「財政支出拡大(景気対策)」をバーターしたとしか思えない。つまりは、全力でブレーキを踏みつつ(消費税増税)、軽めに2回、アクセルを踏むわけだ。
 消費税増税の悪影響は継続する。二度の景気対策が終わったとして、別に消費税が減税されるわけではないのだ。総理の言う「相当思い切った財政出動」をやったところで、短期で終了してしまうのでは、わが国のデフレ脱却は不可能だ。

 筆者らは、今回の骨太の方針2018にあたり、
●'19年の消費税増税の凍結
●PB黒字化目標の破棄
●大規模財政出動
 と、3つを求めていたわけだが、すべて実現しそうにない。このままでは日本の「衰退途上国」化は避けられない。
 という「現実」を踏まえた上で、われわれは政治家に「正しいデフレ対策」を求めていかなければならない。少なくとも、日本国民の多数派は「中国の属国という未来」を好ましく思いはしないだろう。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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