世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第360回 問題を認識しない政府

社会・2020/03/10 06:00 / 掲載号 2020年3月19日号
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第360回 問題を認識しない政府

安倍晋三

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 前回、2019年10月の消費税増税の影響で、経済成長率が年率換算▲6.3%に落ち込んだことを受け、安倍総理が「経済対策の効果もあり基調として緩やかな回復が続く」、麻生財務大臣が「内需のファンダメンタルズはそこそこだ」と発言したことを紹介した。

 さらに驚いたというか、絶句してしまったのは、2月20日に公表した「月例経済報告」において、日本政府は、
〈景気は、輸出が弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増した状態が続いているものの、緩やかに回復している〉
 と「報告」したのである。凄いのは、個人消費(GDPの民間最終消費支出)について〈持ち直している〉、設備投資(同、民間企業設備)について〈緩やかな増加傾向にあるものの、一部に弱さがみられる〉と書いていることだ。
 ’19年10〜12月期の民間最終消費支出は、年率換算で▲11%、民間企業設備が、同▲14.1%と、凄まじい落ち込みになっている。それにも関わらず、「持ち直している」「緩やかな増加傾向にある」と書く。

 ここまで平気で「嘘」をつくのである、現在の安倍政権は。

 景気とは、景気動向指数CIの「一致指数」で判断される。具体的には、鉱工業生産指数、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数、投資財出荷指数、商業販売額(小売業)、商業販売額(卸売業)、営業利益、有効求人倍率という9つの経済指標の合成だ。景気動向指数CIとは、
「景気がどの程度の勢いで回復しているのか、あるいは後退しているのか?」

 を示す指数である。左図の景気動向指数CI(一致指数)の推移を見ると、第二次安倍政権発足後、’14年3月まで景気は勢いよく回復していったことが分かる。当時の安倍政権は、財政を拡大し、確かに景気は改善していた。

 ’14年4月の消費税増税をきっかけに、日本は景気後退期に突入。’16年春頃に底打ちし、その後は、まさに「緩やかな回復」局面に入った。もっとも、緩やかな回復は’17年末には終わり、今度は「緩やかな後退」局面になった。そして、’19年10月の消費税増税をきっかけに、景気は疑いなく「激しい後退」局面に突入したのである。

 景気動向指数CIの推移を見て、「日本は緩やかな景気回復が続いている」などと発言する者は、グラフを読み取る能力を持たないか、もしくは邪な政治目的を持つ嘘つきだ。安倍政権は、もちろん後者であろう。

 それにしても、改めて’19年10月の増税は「最悪のタイミング」であった。景気が「緩やかに後退」している状況における増税ということで、1997年、2014年よりも打撃が大きくなってしまった(特に、名目GDPと設備投資)。日本国内の景気動向から見ても「最悪のタイミング」だったのだが、’20年に入り、新型コロナウイルスが襲来。

 しかも、過去7年、安倍政権の下で日本経済はインバウンドへの依存度を高め、感染症蔓延といった非常事態に対し、脆弱な経済構造に「改革」されてしまっていた。今後、インバウンドはもちろん、我々日本国民の消費も激減することになる。

 例えば、景気絶好調で、国民の所得が堅調に伸び、「消費ブーム」が起きているような状況で、新型コロナウイルスが襲来した場合、我々は少なくとも「マインド」的には、消費を減らそうとは考えない。ところが、今回は’19年10月の消費税増税で実際に消費が減り、消費マインドが凍り付いた状況で新型コロナウイルスの問題が発生したのだ。

 ただでさえ、「消費税が増税された(=消費に対する罰金が増えた)から、消費を減らそう」と考えていた日本国民は、新型コロナウイルスの感染者が増えるに従って、元々、低迷していた消費意欲を最低にまで引き下げることになる。実際、’20年2月のデータは「日本国民の消費意欲の低下」を裏付けている。

 三越銀座店は、2月の来店客数が前年比1割減で推移。そごう・西武は、2月1日〜18日までの売上高が、対前年同期比▲5%。大阪城天守閣は、例年の2月と比べ、利用者が4割減。東京タワーの入場者数は、例年と比べて3割減。サンリオピューロランドは、感染拡大を受け、2月21日から3月12日まで休園。JR東日本は、2月1日〜17日までの新幹線利用者が対前年比10%減。東京駅での切符の運賃収入は、前年同期比7%減。舞浜駅(東京ディズニーリゾートの駅)は、前年同期比9%減。

 恐ろしい事態が、日本で進行している。

 もっとも、さらに恐ろしいのは、日本政府が「景気は緩やかに回復している」と繰り返し、現実を認めようとしない点だ。彼らにとって「問題は発生していない」のである。

 今後、アベ・ショックが深刻化し、日本経済は令和恐慌に突き進むのは明らかだ。そして、安倍政権はもはや絶対に方向転換はしない。何しろ、問題は起きていないのである。

 要するに、現在の安倍政権は以下の状況にあるのだ。

(1)「あからさまな嘘」をついても、野党やメディアや国民から糾弾されず、支持率も落ちないと「なめている」。

(2)状況が悪化していることを認めないため、対策は打たない。

 対策を打つと、自分たちが「嘘をついていた」ことを認めることになってしまう。政権維持のみが目的化している安倍政権は、「消費税増税による景気悪化」から目をそらし続け「緩やかな回復」と繰り返す。

 そして、さらに状況が落ち込んだとしても、「新型コロナウイルスのせいだ」と、決して自らの失政は認めない。となると、我々が救われる道は「政権交代」しかないということが、論理的に導き出せる結論になる。何しろ、安倍政権により他の道を封じられたのである。

 最低でも、「問題が起きている」ことを認める政権が必要だ。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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