森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★大学入学共通テストは廃止せよ

社会・2019/11/28 06:00 / 掲載号 2019年12月5日号
森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★大学入学共通テストは廃止せよ

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 再来年1月からセンター試験に替わって導入される大学入学共通テストに暗雲が立ち込めている。改革の1つの柱だった英語の民間試験導入が、延期されることになったのだ。

 きっかけは、萩生田文科大臣の発言だった。10月24日のテレビ番組で「裕福な家庭の子が回数受けて、ウオーミングアップできるみたいなことがもしかするとあるのかもしれないけれど、身の丈に合わせて勝負して頑張ってもらえば」という発言が「格差容認」とされ、批判が高まったのだ。

 英語能力の判定に民間試験を導入することは、生徒に受験料の負担を強いるだけでなく、受験会場が大都市に偏っているため、地方の受験生には交通費や宿泊料の負担が降りかかる。さらに会話能力を高めるためには、学校外でのトレーニングが重要になるので、予備校に通える受験生をさらに有利にする。明らかに教育の機会均等に逆行するのが、民間試験の導入なのだ。

 民間試験の導入は、試験を実施する機関と政府の癒着や文部科学官僚の利権があるとの指摘もなされている。私もそれはあると思うが、もっと本質的な問題が控えている。それは、そもそも入試改革の必要があるのかということだ。

 民間試験に頼ろうとしたのは、英語を話す能力を判定基準に入れたいという理由だった。センター試験では、リスニングはあるが、話す能力は評価していない。しかし、共通テストのなかで話す能力を測るのは難しいので、民間試験に任せようということになった。

 確かに、日本人は英会話が苦手だ。しかし、それは話すことに慣れていないからで、いまの教育制度できちんと英語を勉強していれば、数カ月の慣らし運転で、誰でもしゃべれるようになる。その意味で、いまのセンター試験は、英語力の本質をしっかり試せるものになっているのだ。

 私は十数年にわたってセンター試験の監督を務めてきたので、センター試験の問題をほぼすべて見ている。完璧と言っていいほど、問題はよくできている。英語の構文のなかで、どの動詞を使うべきかといった作文の能力の問題、単語の発音の問題、単語のアクセントの問題などが、バランスよく配置されている。これらの問題が解けるということは、作文、発音ができて、アクセントも正しいということ。つまり、たどたどしくても、正しい英語を話せる能力が身についているのだ。あとは、実際に使う場面になったら、それがなめらかに出てくるようにトレーニングをするだけである。

 安倍総理は10月8日の参院予算委員会で、「グローバル人材を育成する上で英語は重要なツールだ。しっかりと準備し、受験生の皆さんも納得できるようなものにしていく上で、責任を果たしたい」と改革自体の見直しを否定した。しかし、私は、英語を話せることは、今後、何の価値も持たなくなるとみている。自動翻訳機が進化するからだ。

 共通テストに関しては、英語だけでなく国語と数学で採用される記述式問題にも批判が高まっている。アルバイトが記述式の採点をすれば、不公平が避けられず、自己採点も困難になるからだ。

 野党4党は、記述式導入を中止する法案を提出する方針だが、この際、大学入学共通テストを廃止して、もう一度原点に立ち返るべきではないのか。

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