菜乃花 2018年10月04日号

中国で逮捕! 日本人スパイを雇った黒幕の正体

掲載日時 2015年10月15日 10時00分 [社会] / 掲載号 2015年10月22日号

 「日本の情報機関は情報の収集はするが、外地でオペレーション(工作)はしない。日本政府が民間人に仕立てたスパイを送り込むことなどあり得ない。それが証拠に、対中政策における情報力はお粗末のひと言ですから」(外事警察関係者)

 中国政府が日本人男性2人を「反スパイ法」違反(昨年11月施行)で逮捕した問題。実際、スパイ容疑で拘束されている日本人は他にもいるとのウワサは根強いものの、徐々に明らかになった彼らの素顔から“スパイ”像は見えない。
 「北朝鮮国境に接する中国遼寧省丹東市で5月に拘束されたのは、神奈川県大和市在住の55歳になる男性です。男性は幼少期に北送船で北朝鮮に渡り、'90年代に脱北して2001年に日本国籍を取得している。韓国で脱北を手助けする非政府組織(NGO)とも交流があった。この地域では中国公安当局が、増え続ける脱北者を不法越境者とみなしており、脱北者のみならずNGO関係者も摘発の対象にしています。一罰百戒的な意味合いもあるのでしょう」(日本の脱北支援組織関係者)

 同時期にキリスト教の布教をしていたカナダ人夫婦も「軍事機密窃取」容疑で拘束され、9月15日に身柄を検察当局に送られている。この事例よりも2人の“日本人スパイ”の拘束が長期化しているのはなぜなのか。考えられるのは日本政府機関の関与だ。
 「55歳男性は月に1度くらいの頻度で、中朝国境付近を訪れて北朝鮮関連情報を収集していたというが、問題は旅費や滞在費をどう工面していたかです。資金が韓国のNGOから出ていたとすれば、スパイ容疑はかけられないはずですから、公安調査庁などから資金が出ていた可能性が高い」(軍事評論家・神浦元彰氏)
 実際あるジャーナリストは、公安調査庁から「旅費・滞在費を持つから重信房子(日本赤軍の元最高幹部)のインタビュー記事を取ってきてほしい」と依頼されたことがある。公安は「重信が健康かどうか、ベイルートに住んでいるかどうか」などの情報が欲しかったのだという。

 一方、太平洋側沿岸部の浙江省温州市で同じく5月に拘束されたという愛知県内に住む男性(51)は、県内の中国人経営の調査・人材派遣会社に勤め、浙江省を頻繁に訪れていた。
 この地域では昨年から空軍施設の建設が始まった他、尖閣諸島を巡回する中国海警局の基地建設も始まっている。
 「51歳男性の家族が瀋陽の日本総領事館に訴えたことで事件は発覚したが、これまで日中両政府が表立って対応してこなかったのは不可解です。両国に表沙汰にしたくない事情でもあるのかと疑いたくもなりますが、この男性は軍事オタクらしいとの証言もあります。そしてもう1人、6月に北京で拘束された東京の60代男性がいます。過去に航空会社に勤務し、定年後に北海道で牧場経営に携わりながら日中間の人材派遣の公益団体を立ち上げています。いわゆる『日中友好人士』の1人ですから逮捕には至っていないらしく、この人は釈放される可能性が高い」(通信社外報部記者)

 読売新聞は9月6日、排水量1万2000トンの中国最大の新造巡視船『海警2901』が、浙江省舟山の中国海警局の港湾に係留されていることを報じた。この艦は海上保安庁最大の巡視船『しきしま』(6500トン)の2倍の大きさだ。
 「51歳男性が“うっかり”撮影したとすれば、それは考えにくい。この巡視船は、中国海軍も運用しているZ-8型ヘリ3機を搭載・運用可能ですし、自衛艦が武装している76ミリ速射砲を装備するなど国際的には巡視船ではなく軍艦です。おそらく中国当局が『えっ』というような被写体か、多過ぎる記録が出てきたのでしょう。もっとも本当にスパイなら、カメラなどには納めませんが…」(軍事ジャーナリスト)
 今年1月に軍事施設の写真を海外の雑誌に提供した遼寧省の中国人男性が、懲役8年の判決を受けている。反スパイ法の最高刑は死刑だが、この懲役刑が51歳男性の判例になる可能性がある。

 翻ってスパイ防止法のない日本。現在は中国による産業・経済スパイも日々エスカレートし、守りの甘いわが国は格好の標的にされている。
 「中国は民間取引を装い、千歳基地隣接地や横須賀基地を見下ろせる丘を取得するなど露骨です。またソフトランディング路線を巧みに使い、ターゲットを接待するなどして情報を収集している。海外の大学に留学生に扮した多数の工作員を送り込み、学内に『孔子学院』を開設し、大学教授や知識人を北京旅行に招くなどして親中派知識人を育成しているのです。日本の基幹産業や官庁などの重要部署にある人、発言力のある著名人に中国語の個人教師を付け、この人たちを親中派に養成することもやっている。ハニートラップは大の得意技ですしね」(公安警察関係者)

 主権国家として当然の権利である「スパイ防止法」だが、日本ではなぜか一部のジャーナリストや知識人たちから反対され続けている。しかし、彼らは中国の「反スパイ法」には批判の声を上げなかった。「日本はダメ。中国はOK」では筋が通らない。
 今回逮捕された“日本人スパイ”も「法案に反対しているあの人たちは、いったいどこの国の人?」と思っているに違いない。

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