葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 湯浅邦弘 『このせちがらい世の中で誰よりも自由に生きる』 宝島社 1,200円(本体価格)

掲載日時 2015年12月06日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年12月10日号

 −−『老荘思想』とはあまり聞き慣れない言葉ですが、どのような考え方なのでしょうか?

 湯浅 まず「老荘」というのは、中国古代の思想家「老子」と「荘子」の頭文字をとった命名です。諸子百家と呼ばれる多くの思想家のうち、このように2人の名が組み合わせられるというのは、大変特殊なケースなんです。老荘思想とは、一言でいうと、儒家(孔子や孟子)と並ぶ中国思想の大きな柱の一つです。儒家が文明化のすばらしさを説くのに対して、老荘は文明化こそが人間を不幸にしていると説きました。儒家が頑張って勉強しましょうというのに対して、老荘は頑張りすぎるから人は悩むのだと説きます。そして、たどり着いたのが「無為」(自然体)の境地なのです。中国人は古来、お役所では儒家の徒、家に帰ると老荘の徒になると言われています。日本初のノーベル賞受賞者・湯川秀樹博士も、幼少の頃から老荘を愛読し、価値観の大きな転換が、受賞対象となる研究に結びついたと自叙伝で述べています。

 −−頑張らない、欲張らないなど、自然体の考え方をしろと言われると、サラリーマンにとっては受け入れづらい部分もありますが…。

 湯浅 頑張るという“アクセル”だけでは、いつかガス欠になり、また取り返しのつかない事故を起こしてしまいます。人生には適度な“ブレーキ”も必要だということを老荘は教えてくれます。絶対に何もしないということを言っているのではなく、アクセルと共にブレーキを適度に踏むことの必要性を説いているのです。また、足るを知る(欲張らない)ということを知らない人は、たとえ年収が1億円あっても、幸福感は得られないでしょう。老荘は「ほどほど」「頃合い」の大切さを教えてくれます。

 −−会社の人間関係で悩んでいるサラリーマンは多いと思います。それらから開放される極意とは?

 湯浅 価値観を一度、白紙に戻してみることです。老荘は人間の価値観が実はとてもあやふやなものにすぎないと指摘します。会社の中で、しっかりと仕事をすることは大切なのですが、同時にそれは極めて狭い世界での話だということを常に頭の片隅に置いてください。別の世界や価値観があるということを知っている人は、思考の引き出しを一つ多く持っているということで、単なる会社人間にならずにすむことでしょう。会社という価値観の外にも世界を持つ、例えば、仕事以外の趣味を持ち、会社以外の人脈をつくるというのも、視野を広げる有効な手段です。
(聞き手:程原ケン)

湯浅邦洋(ゆあさ くにひろ)
1957年、島根県生まれ。大阪大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。北海道教育大学講師、島根大学助教授、大阪大学助教授を経て、現在、大阪大学教授。著書に『入門老荘思想』など多数。

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