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プロレス解体新書 ROUND40 〈小橋vs健介“魂の名勝負”〉 壮絶極まる剛腕チョップ合戦

掲載日時 2017年02月27日 16時00分 [スポーツ] / 掲載号 2017年3月2日号

 “鉄人”、さらには“絶対王者”として一時代を築いた小橋建太。数多の名勝負を繰り広げてきた中でも、プロレスリング・ノアが隆盛を極めた2005年、東京ドーム大会における佐々木健介とのチョップ合戦は、今もなお伝説として語り継がれている。

 2月1日に株式会社ピーアールエヌ(旧・株式会社プロレスリング・ノア)が破産となった。興行権などはすでに別会社に移譲されているため、ノアの大会は今までどおり開催されるというが、かつての隆盛を知るファンからすれば驚きとともに寂しさを禁じ得ないことだろう。

 三沢光晴を中心とするレスラーやスタッフ総勢約50人が、全日本プロレスを離脱し、2000年に設立されたプロレスリング・ノア。ディファ有明での旗揚げ2連戦のチケットは、わずか20分足らずで完売し、その「新しい闘い」(三沢による試合前のあいさつの言葉)への期待度の高さを示した。
 「この時期、業界最大手の新日本プロレスは格闘技進出で結果を残せず、それに関連してアントニオ猪木やその子飼い選手たちの扱いでもゴタついていた。さらには武藤敬司らの全日移籍や長州力一派が離脱してWJを旗揚げするなど、相次ぐ迷走でファン離れが進んでいた。その一方で、ノアは安定した内容でファンの信頼を集めていきました」(プロレス記者)

 旗揚げ戦こそは、秋山準によるフロントネックロック“秒殺”や垣原賢人のUWF風ファイトが注目されたが、その後はアングルに頼らない全日時代の四天王プロレスをベースとした闘いで、リング上を充実させていった。

 そんなノアの人気が一気に高騰したのは、かねてからの膝の故障などで旗揚げ当初には休場を重ねていた、小橋建太の完全復帰からだった。
 '03年に三沢を下してGHCヘビー級王者になると、新日の東京ドーム大会で蝶野正洋を相手に防衛成功するなど、約2年にわたり王座を守り続けた。
 「力を出し惜しみすることのない小橋のファイトは、ファンからの共感を呼ぶと同時に“お得感”を与えました。新日がアルティメット・ロワイヤルなど訳の分からない試合をしているのに比べて、小橋の試合には間違いがなく、この安定感が集客増にもつながったのです」(同)

 小橋の全力ファイトこそがノアの象徴とされ、いつしか“絶対王者”の呼び名を付けられた。また、ネットスラングとして流行した“ノアだけはガチ”というフレーズも、小橋の存在があったからこそ成り立った。
 「純プロレスであるノアの試合に、総合格闘技的な意味でのガチンコ要素は乏しく、このフレーズは主にノアや、そのファンの“われこそ一番”という態度へのあざけりとして使われていたものです。とはいえ小橋のプロレスに対する真摯な態度は、たとえアンチであっても認めざるを得ないところで、これが“ガチ”という言葉に一片の真実を与えていた。なにせあまりのストイックさゆえに、一時は“小橋ホモ説”までまことしやかにささやかれたほどですから(笑)」(同)

 そんな小橋=ノア人気がピークを迎えたのが、2年連続で開催された東京ドーム大会であろう。'04年の大会では秋山を相手に小橋はメインを飾った。続く二度めのドームでは、メインこそは三沢と川田利明の因縁対決に譲ったが、これに劣らずファンの心に強く刻まれたのが、セミファイナルの佐々木健介戦だった。
 新日時代の健介は、現場監督だった長州の子飼いとして都合よく使われ、ここ一番での試合で負けを“飲まされる”ことも多かった。猪木や武藤などの華やかさに比べ、その泥くささから“塩介(パフォーマンスがしょっぱいという意味)”と、新日ファンに蔑称で呼ばれることもあった。
 だが、努力の質と量では健介もまた小橋に劣らない。いわば似た者同士、共に極めつけのプロレス馬鹿である2人の邂逅が、名勝負となるのは必然のことだった。

 試合開始直後のバックドロップ合戦からエンジン全開で、鍛え上げられた筋肉が問答無用でぶつかり合う。そうして試合中盤を迎えたとき、両者にらみ合って咆哮すると、今なお伝説として語られるチョップ合戦が始まった。
 「2人の繰り出したチョップの数は合計200発を超えました。時間にして5分以上、お互いに一歩も引かず、チョップの威力を減じるために体をそらすこともなく、胸を突き出して受けてみせた。最初は赤くミミズ腫れになっていた2人の胸板が、最後の方ではドス黒く変色したほどでした」(スポーツ紙記者)

 ファンの想像や期待をはるかに超越した意地の張り合いは、チョップ合戦に終わらず、普段ならフィニッシュホールドとなる大技を互いに惜しげもなく繰り出していく。最後は小橋の剛腕ラリアットに凱歌が上がったが、それは試合の終わりを告げる意味でしかなかった。
 「どちらが勝ったかは関係なく、ただ目の前の試合に圧倒されていた。声援を送っていたファンはもちろん、取材をしていただけの記者連中までもがヘトヘトに疲れ果てていた。そんな試合はほかに見たことがありません」(同)

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