和地つかさ 2018年9月27日号

本好きリビドー(159)

掲載日時 2017年06月24日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年6月29日号

◎快楽の1冊
『芸人式新聞の読み方』 プチ鹿島 幻冬舎 1400円(本体価格)

 「新聞てのはな、お約束の決まり文句ばかりで成り立ってるんだ。誰かが死んで、もしその人がキリスト教徒なら必ず“敬虔な”クリスチャンだった、と書く。それで葬式はどこかで必ず“しめやかに”執り行われた、としなきゃいけないんだよ」
 朝日の記者だった亡父が晩酌時、やや自嘲気味に呟いたセリフがまだ耳の底に残る。そう言えば植木等さんが亡くなられた翌日の某紙の見出しも酷いものだった。“高度成長下の日本を癒す”、ときたもんだ。病人じゃあるまいし、第一、クレージーキャッツ全盛期の昭和30〜40年代にかけてそんな文脈で“癒し”なんていう卑しい言葉はなかったよ!
 つい熱くなってしまったがいわゆるネット論壇、ニュースの台頭ですっかり大手新聞の偏向報道ぶり、記事や社説の何様気取りの高飛車さなどが改めて浮き彫りにさらされている昨今…と指弾するのは(マスコミではなくマスゴミとか)正しいかもしれないが容易い。
 そこをあえて全部承知の上で、新聞各紙の報道姿勢や論調を“芸風”として捉え、丸ごと味わい尽くそうと誘う著者にとって、朝日も産経も読売も日経も東スポも夕刊フジも日刊ゲンダイ(キャラでいうと「永遠の学生運動」という見立てには思わず爆笑)も同一線上。
 軽減税率の対象に新聞が含まれることが判明した際に、各紙が抱えた「どこかバツの悪さ」に対する処置の仕方(自分で自分を“重要な公共材”と言い切れるか)への愛あるツッコミをはじめ、目線は下世話にと言いつつ行間の読み込み具合は眼光紙背に徹するもの。
 “考えるな、感じろ”ではなく“怒るより、楽しめ”。名著『教養としてのプロレス』から2年、プチ鹿島がまたやってくれた。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 「何だコレは!?」
 三条友美氏の最新作品集『人妻人形・アイIII』(茜新社/1550円+税)を手に取った読者の口から発せられるのは、恐らくこの言葉に違いない。無理もない。本作は今まで誰も見たことのない、まったく新しいエロ劇画なのだから。
 “少年ジャンプ”よろしく王道のバトル漫画の手法で、耽美で退廃的テイストたっぷりのSM劇画。そして、怪異極まりないキャラクターたちが繰り広げるバトルエンターテインメントがとにかくすばらしい。
 作画には大胆にCGを取り入れているのだが、まずパソコンで人物の3Dデータをモデリングし、その後、画面上でポーズをつけたものを紙に印刷。さらにそこにペンや筆で加筆をしているという。途方もない手間暇をかけているのだ。
 三条氏は大河的エロ劇画『少女菜美』シリーズで知られるエロ劇画全盛時代の一翼を担った大御所だ。80年代後半、エロ劇画ブームの終焉とともに消えていく作家が多い中、三条氏はパソコンという新たな道具を獲得し、さらに精緻なエロ劇画を量産し続けている。
 現在、ウェブ雑誌上で世紀の奇書に大胆な解釈で挑んだ野心的『家畜人ヤプーREBOOT』を連載中。『人妻人形・アイ』シリーズを掲載してきたエロ漫画誌『完熟ものがたり』(茜新社)では、スピンオフ編『アイ・ゼロ』がスタートした。
 まずは、この『人妻人形・アイIII』で三条作品に触れてみてはいかがだろうか。きっと病みつきになるだろう。
(おおこしたかのぶ/編集・ライター)

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