安倍首相「9月解散」断行へ 二階幹事長は封じ込め(1)

政治・2020/07/06 06:00 / 掲載号 2020年7月16日号
安倍首相「9月解散」断行へ 二階幹事長は封じ込め(1)

安倍晋三

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「これからも協力していこうと話しました。解散の話はありません」

 安倍首相は6月19日夜、第2次安倍政権発足時の中核メンバーである麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、甘利明自民党税制調査会長の3人と東京・港区の高級ホテルで会食した。その様子を、大阪維新の会創設者の橋下徹元大阪府知事が20日、自身が司会を務めるネットTV番組で首相をゲストに呼んで尋ねた。

「選挙の話はしていない」とけむに巻いた首相だったが、永田町の受け止めは方は真逆だ。「このタイミングにあの4人で会って、政局や解散の話をしないわけがない。政権の設立メンバーで再結束を確認したに違いない」(自民党若手議員)という見方が大半なのだ。

 実際、二階俊博幹事長に近い森山裕国対委員長は翌日、地元・鹿児島で「衆院選はそう遠くない」と発言。枝野幸男立憲民主党代表も「お盆明けにも解散だ。フルピッチで準備を進める」と警戒心を露わにした。首相は24日夜に二階氏とも食事を共にした。

 コロナでは、あらゆる対応が後手に回ったと批判を浴び、世論調査で内閣支持率は20%台後半にまで急落。30万円を10万円とした給付金の支給額など、重要政策の変更や撤回が相次ぎ、政策を進められない政権末期の様相を印象づけた。この状況で解散したら、自民党は惨敗して政権を明け渡すことにもなりかねないと考えるのが普通だろう。

 安倍首相はどう受け止めているのか。全国紙の政治部デスクが話す。

「首相は覇気を失っているどころか、自民党総裁任期が満了となる来年9月までの残り1年2カ月で、安倍政権の最後の総仕上げをしようと、むしろ意気軒昂ですよ。周囲には『今が底。頑張りどころだ』と話す姿も見られた」

 首相は6月以降、麻生氏と4日と10日、1対1で計1時間半にわたり会談し、18日には岸田文雄政調会長とも膝をつき合わせた。首相に近い党関係者によると、今後の政権運営と推進すべき重要政策について整理したという。

「首相はレガシーと考えてきた憲法改正、北方領土問題、拉致問題の解決は3つとも断念した。代わりに政権最後の目標を固めたのです。全世代型社会保障の実現、国家安全保障戦略の改定、東京五輪の実現の3点です。そのために9月に内閣改造と自民党役員人事を断行して態勢を立て直し、そのまま衆院解散に踏み切って国民に信を問うつもりです。投票日は10月18日か25日が有力です」(同)

 麻生氏はもともと解散論者で「追い込まれ解散にならないよう、決断を促している」(党関係者)。甘利氏も時事通信のインタビューで「秋以降はゼロでない」と明言した。菅氏も、衆院議員の残り任期が1年余りとなり、強く反対していないという。9月解散の断行スケジュールは走りだしているのだ。

 自民大勝ないが大敗もなし
 だが、なぜ9月解散なのか。来年9月の自民党総裁任期満了までを見渡すと、1月からの通常国会で予算案の審議中は解散できない。解散するなら通常国会冒頭か、3月下旬の予算成立後となるが、6月に友党の公明党が重視する東京都議選があり、春以降は解散できるタイミングがない。

 また、1月はコロナ対応を迫られる可能性もあり、照準を合わせにくい。すると今年中しかないが、秋が深まればコロナの第2波、第3波が襲ってくる恐れがある。そこで感染拡大のリスクがまだ低いと思われる秋口の解散となるのだ。

 野党の態勢が整っていないのも重要なポイント。候補者擁立が十分に進まず、立憲民主党と国民民主党の合流協議も停滞したまま。共産、社民両党との左派路線に傾斜する立民会派からは離脱者が相次いでいる。立民関係者によると、「枝野氏の求心力は低下しており、解散風が強まれば、離党者はさらに増えそう」な状況だという。

 れいわ新選組の山本太郎代表は、もともと枝野氏との折り合いが悪く、日本維新の会は提案型の「保守系野党」として独自に候補者擁立を進めている。過去3回の衆院選と同様、今回も自民党を利する「多党乱立」になる可能性が高まっているのだ。

 こうした状況から「9月解散以外にありえない」(自民党選対関係者)との判断になるのは合点がいく。この関係者は「9月なら政権への逆風も弱まる。大勝はないが、大敗もない」とした上で、衆院465議席のうち「自民党は40減の240、公明党は30議席前後を取れる」と分析してみせた。

 ちなみに、立民、国民、共産、社民4党で140議席、コロナ対応で評価が高い吉村洋文大阪府知事を擁する日本維新の会は躍進して50議席と見ているという。
(明日に続く)

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