葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(126)

掲載日時 2016年10月22日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年10月27日号

◎快楽の1冊
『卑怯者の流儀』 深町秋生 徳間書店 1700円(本体価格)

 現在活躍しているハードボイルド系作家の中で、深町秋生はかなり勢いのある部類に入る。2005年のデビュー長篇『果てしなき渇き』は役所広司主演で映画化され、'14年に公開された。原作と映像作品との間に相違点はある。別の表現形態なのだから普通のことだ。しかし、世界観は一致している。深町作品にあふれる暴力性が、役所広司の限度のないパワフルな演技を導き出したのだった。
 ほかに'10年の『ダブル』も評価が高く、'11年から始まった〈組織犯罪対策課八神瑛子〉シリーズにはファンが多い。
 本書『卑怯者の流儀』も、まさしく深町流を存分に堪能できる連作短篇集だ。主人公・米沢英利は警視庁の組織犯罪対策第4課に所属している。すでに50歳を過ぎているけれど、明らかに悪徳警官だ。いや、ベテランだからこそ過去に作り上げた膨大な人脈を活用し、自分の好きなように行動できるのだ。
 とにかくキャラクターが際立っている。素行の悪さが尋常ではない。酒が大好きで、夜な夜な風俗店やキャバクラで遊んでいる。捜査は単独行動が多く、重役出勤をすることはざらだ。そして裏社会の住民たちと癒着している。しかし、実績を上げているのは確かなので、同僚たちの多くは何も言えないのである。
 加えて愛嬌もあって憎めない。後輩に平気で借金をする。上司の女性管理官には頭が上がらず、いつ叱責されるのかびくびくもする。笑えるシーンもかなりあるのだ。
 彼は“公立探偵”と自称している。この設定がいい。公権力を使って犯罪に関わる相談ごとを解決していく。これは合法的な反権力の態度だ。爽快ささえ感じる。その点でヒーロー小説でもある。
 主舞台は新宿だ。有象無象の欲望が絡み合う。都市小説の要素とハード・アクションの融合が見事だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 20世紀の初めにフランスで生まれ、骨董商やホテル経営で財を成した好事家兼著述家がいたという。
 男の名は“ロミ”。乳房に関する膨大なアイテムを生涯をかけて発掘し、収集したポスターや風俗に関する資料、絵画は2万5000点に及んだという。
 そのロミが集めた乳房の画像から200点近くを選び、1冊の書籍にまとめたのが、『乳房の神話学』(KADOKAWA/1200円+税)である。欧州各地で描かれてきたオッパイがきれいな図版と共に解説されており、さながらバストの画像史といえよう。
 もちろん現在のポルノやヌードグラビアから見れば、過激さはモノ足りない。だが、写真が普及する以前の19世紀まで、人々がどのように乳房を眺め、描いてきたかが伝わってくるのだ。
 乳房とは男を誘惑する女の肉体の象徴であり、描くことはタブーだった。タブーだからこそ、どこか遠慮がちに描く。その遠慮に乳房への男たちの憧れが見てとれ、なんとも感慨深いのである。
 現在の日本でも「おっぱい星人」なんて言葉が使われる。乳房に強い性的嗜好を持つ男を指しており、女の豊かな胸に執着する者は今も数多い。
 本書はフランスの本を翻訳しており、また登場する図版もレトロな趣だが、おっぱいに魅せられた男たちの心情は今も昔も全く同じなのだろう。バストというのはつくづく男を魅了してやまないモノだと、改めて思った。1997年に出版社の青土社が刊行した書籍の文庫版。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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