☆HOSHINO 2019年6月27日号

児童相談所の職員に“激烈な負担”を強いる日本の薄っぺらな「虐待対策」

掲載日時 2018年12月15日 17時30分 [社会]

児童相談所の職員に“激烈な負担”を強いる日本の薄っぺらな「虐待対策」
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 年間の児童虐待通報件数は、この10年上昇の一途をたどり、ついに年間12万件超を記録した。虐待によって子供が命を落とすケースは、年間およそ300件とされ、毎日1人の子供の命が家庭内虐待によって奪われていることになる。少子化の昨今、これは緊急に対策を講じる必要がある。

「就学前の0〜5歳の時期は人間形成にとって最も重要です。人口600万人のフィンランドの児童虐待による子供の死亡件数は年間0.3人、つまり3年に1人しか犠牲者は出ていません。同国には『ネウボラ』という仕組みがあって、妊娠期から出産、子供の就学前までの間、母子とその家族を支援する目的で、地方自治体が設置、運営する拠点があるからです。日本でも3年前に各自治体に開設が義務付けられるようになった『母子健康包括支援センター』という組織があり、ネウボラの類似施設として期待されましたが、質量も貧弱で、とてもネウボラとは似て非なる物です」(元児童相談所職員)

 日本における虐待の通報は、児童相談所(児相=都道府県を中心に全国21カ所)に集まる。だから、虐待問題が発覚するたびに児相は批判にさらされる。だが、児相にも言い分がある。

 「児相職員は1人100件近くの事案を抱え、日夜苦闘しているため精神疾患で離職する職員が続出しているのです。もちろん、厚労省もこの状況を看過しているわけではなく、現在人口4万人に1人の児相職員の配置を目指す取り組みを進めています。わずか数年前まで6万人に1人が目標だったことを考えれば、政策的努力の跡はうかがえるのですが、それでも人口4万人なら(子供の数は総人口の約12%として)児相職員1人で5000人弱の子供たちを相手にする計算になります」(同・職員)

 この元児相職員が示したデータが2つある。1つは「5%」という数字だ。これは法律で定められた乳幼児健診を受けていない子供の比率。日本では母子保健法に基づき、1歳半と3歳児健診が法的に定められ、その間も必要に応じて健診が推奨されている。ところが、受診率は、それぞれ95.7%、94.3%となっている。

 つまり、約5%の子供が法律で義務付けられている乳幼児健診を受けていない。この5%の子供たちが潜在的な虐待、あるいは「社会的孤立」に陥っている可能性が高い。

 そう仮定すると、児相職員1人が対象とする潜在的な被虐待児童は、5000人×5%=200〜250人になる。前述した「職員1人で児童100件」という実態の倍の子供に対応しなければならず、厚労省の人口4万人に児相職員1人という目標では到底追い付かない。

 もう1つは「20万人」という数字。3歳児健診を終えて、小学校に入学するまでの3〜5歳児のうち、幼稚園にも保育園にも通っていない子供が20万人も存在するというデータだ。3〜5歳児の人口は約316万人だから約16%にあたる。

 「この16%という数字は、子供の貧困割合と合致しているのです。今、貧困の連鎖が問題となっていますが、これに虐待も連鎖している可能性が高い。となると児童虐待は、単に児童相談所の強化策だけでは済みません。自らの子供を虐待してしまう親を何とかしなければならないというのが根本的な課題です」(同)

 東京地区の若手議員の会による「児童虐待防止プロジェクトチーム」が、小池百合子都知事へ緊急提言した文書がある。それによると《保護者が子供を虐待してしまう背景には、社会的孤立、経済的貧困、保護者や子供の疾患、保護者が過去に虐待を受けた経験など、さまざまな要因があり、児童虐待は保護者の「SOS」でもある》という指摘がされている。

 つまり、児童虐待を防止するためには、子供だけでなく、保護者も含めその家庭ごとケアをしなければならないのだ。

 こうして見ると児相の拡充より、「母子健康包括支援センター」の「ネウボラ」化を一刻も早く始めなければ、日本の未来はないのである。


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