片山萌美 2019年7月4日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★子供に金儲けを教えるべきか

掲載日時 2019年04月04日 06時00分 [社会] / 掲載号 2019年4月11日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★子供に金儲けを教えるべきか
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 村上ファンド代表として、「モノ言う株主」という言葉を流行らせ、注目を集めた村上世彰氏が、久しぶりにマスメディアに登場した。自らの財団を使って、中高生に投資を覚えてもらうため、一人当たり最大10万円を供与するというのだ。

 仕組みはこうだ。財団が、中高生に資金を一旦贈与する。そして、中高生は株式投資で資金を運用し、利益が出た場合は、1年後に元本だけを返済すればよく、利益は自分のものになる。一方、損失が出た場合は、残っている資金だけを戻す。全損になっても、返済義務はない。対象となる中高生は、最終的に累計で100万人を目指すという。

 村上氏は、「金儲けが悪いことではないことを、若い人に感じて欲しい」と言っている。本当に金儲けは、悪いことではないのか。

 今回の「利益が出たら自分のもの、損が出ても支払わなくてよい」というルールの下で、どのような投資行動を取ればよいのか。

 普通に株を買っていても、1年間で得られるリターンは限られている。だから、私だったら、新興市場の値動きの激しい銘柄に投資資金を投入して、短期売買を繰り返す。1年で資金を3倍に増やせれば、2倍分は自分のものだ。一方、全損になってしまっても、自分で負担することはないのだから、負けのないバクチだ。

 実際に、そうした投資行動をとる中高生が、多いのではなかろうか。そして、そのことが、教育上望ましいのだろうか。

 いまやマルクス経済学を教える大学はほとんどなくなってしまったが、私が大学生の頃には必修科目だった。マルクス経済学の肝は、労働価値説だ。つまり、付加価値が生まれる原因は、労働者が一生懸命努力して、額に汗して働くことで生まれる。私は、このマルクス経済学の理念は、いまでも正しいと思っている。

 しかし、村上氏は短期間の株式売買で利益を生み出すことを、子供たちに教えようというのだ。その背後には、「会社は株主のもの」という村上氏の基本理念がある。株主のものだから、値上がりすると思えば、株を買うし、値下がりすると思えば、さっさと売る。

 もちろん、会社法上も会社は株主のものということになっている。村上氏の思想は、法律の観点から見ても正しいかもしれない。しかし、会社は従業員や消費者、さらには地域住民のためのものである。株主が事業資金を出したからといって、会社を単なる金儲けの道具にしてよいということにはならないのではないか。

 もちろん、私は株式投資を否定しているわけではない。ただ、国民生活の向上のために頑張っている企業が事業を行うための資金を長期的な視点で応援するというのが、本来の株式投資なのではないだろうか。5年、10年と株式を持ち続けて、良い時も、悪い時も、会社と運命を共にする覚悟を持った人が、株主になるべきではないだろうか。

 投資資金を1年で精算させるという村上氏の構想には、そうした視点がまったくないのだ。

「子どもたちの中から、スターの投資家が現れれば、社会は変わるはずだ」と村上氏は述べている。それはそうかもしれない。だが、世の中の子供たちが、日々バクチに興ずる社会は、本当に望ましい日本の未来なのだろうか。

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