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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 アベノミクスの本質を示す外形標準課税

掲載日時 2014年09月23日 13時00分 [政治] / 掲載号 2014年9月25日号

 政府・与党は、現在35%となっている法人税の実効税率を来年度から引き下げる財源として、法人事業税の「外形標準課税」の部分を2倍以上に拡大する方針を明らかにした。
 外形標準課税とは、企業が黒字か赤字かに関係なく、給与総額などの事業規模に応じて支払う税金のことで、'04年度から資本金1億円超の大企業が支払う法人事業税の計算に導入されている。

 現在、電力会社等を除く一般の大企業が支払う法人事業税の総額は2.8兆円だが、そのうち2.2兆円が法人税と同じ所得割(利益に税金がかかる)で、0.4兆円が付加価値割(付加価値に税金がかかる)、そして0.2兆円が資本割(資本金の額に税金がかかる)となっている。税率は、それぞれ7.2%、0.48%、0.2%だ。
 例えば、法人事業税のうち所得割の比率を半分に下げるとすると、1.4兆円を所得割で徴収すればよいから、税率は現在の7.2%から4.6%となる。単純計算で、法人税の実効税率を2.6%下げることが可能になる。

 一方、外形標準課税の方は、現在の0.6兆円から1.4兆円へと税収を増やさなければならない。しかも、資本割は廃止する方針のようだから、現在0.4兆円の付加価値割を1.4兆円へと、3倍以上に増やさないといけなくなるのだ。
 そうなると法人事業税の付加価値割の税率は、現在の0.48%から1.68%に上昇することになる。

 課税基準となる付加価値は、厳密に言うと、報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料+単年度損益で計算される。つまり、来年度から、赤字企業でも人件費や家賃や支払利子の1.68%程度の税金を納めなくてはならなくなるのだ。赤字企業はそんな税金を支払う余裕はない。しかし、どこからか金を借りてきたり資本を食いつぶしてもいいから、とにかく税金を払えという制度なのだ。
 こうした税制が導入されると何が起きるのか。それは、確実に税金倒産が起きるということだ。そして、それこそがアベノミクスの狙っている外形標準課税の効果なのだ。

 2012年の日本企業のROE(自己資本利益率=株主資本に対する当期純利益の比率)は、3.8%だが、アメリカは10.5%、欧州は8.9%となっている。欧米と比較して低いROEを高めるためには、利益率の低い企業を片端から潰してしまえというのが、成長戦略の本質なのだ。
 経済学では、これを「清算主義」と呼んでいる。弱い者は切り捨て、強い者だけを生き残らせる。そうすれば、全体がよくなるという。とんでもない勘違いだ。

 確かに、儲かっている企業だけを生き残らせれば、全体の利益率は上がるだろう。しかし、それは社会の多様性を失わせることにつながる。
 例えば、各業界のトップだけを生き残らせれば、利益率は上がる。しかし、例えば自動車はトヨタしか選べない、家電はパナソニックしか選べない。そんな社会が果たして豊かな社会と言えるだろうか。

 韓国は、'97年の金融危機以降、サムスンやヒュンダイに事業を集中させた。それで国際競争力は大幅にアップしたが、韓国国民が幸せになったのかは大きな疑問だ。大企業躍進の裏側で、仕事を失った大量の中小企業があるからだ。

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