和地つかさ 2018年9月27日号

複合機が過去最大赤字 M&Aでつまずいたリコーの暗中模索

掲載日時 2018年04月20日 08時00分 [社会] / 掲載号 2018年4月26日号

複合機が過去最大赤字 M&Aでつまずいたリコーの暗中模索

 コピーやファクス、スキャンなど複数の機能を持つ複合事務機において、日本メーカーは世界シェアの8割弱を占めトップランナーとしてリードしてきた。しかし、そんな日本の事務機器メーカーが、厳しい経営環境にさらされ始めているという。将来、経営が不透明となる企業も出るなど、急ピッチでの事業再建が迫られているのだ。
 複合機メーカー関係者が、その苦境の背景をこう明かす。
 「米大手調査会社IDC(インターナショナル・データ・コーポレーション)によると、世界の複合機出荷額は2008年頃には日本円で3兆円規模でした。ところが、リーマン・ショック後に経営の厳しくなった企業がコスト削減で軒並み複合機の使用を抑えて節約し、大きなダメージを受けたのです。その後、ITの進化による書類の電子化、ペーパーレス化がさらに進み、複合機メーカーは従来のビジネスモデルが崩壊しつつあるのです」

 国内事務機器メーカーの中でも、それが顕著に出ているのが、複合機依存度が高いリコーだ。リコーは今年に入り、'18年3月期の連結業績見通しを急遽引き下げた。それによると、連結最終損益が1700億円の赤字(前期338億円の黒字)。営業利益も200億円の黒字としていた従来の予想から一転、1600億円の赤字となり、過去最大となった。
 「赤字の最大の理由は、'08年に1600億円で買収した米事務機販売大手、アイコンオフィスソリューションズの低迷による1400億円の減損処理のためです。リコーは昨年、北米を中心に5000人以上の人員をリストラしたが、今後もさらに削減を進め、業績回復を目指すといいます」(経営アナリスト)

 リコーの複合機は世界で約19%、国内では27%のシェアを占め、複合機を含めたオフィスプリンティング関連の売上高が全体の過半を占める。そのため、複合機の不況は直に経営に影響するのだ。
 また同社では'16年4〜12月期連結決算で売上高が前年同期比10.6%減の1兆4694億円。'17年3月期は業績予想を二度にわたり下方修正し、その業績悪化の責任を取って当時の三浦善司社長(現・特別顧問)が退任、現在の山下良則社長に交代したばかり。その山下社長のもと、事業所の閉鎖や銀座本社を大田区に移転するなどして経営のスリム化に取り組んできた。
 「'22年までには浮く予定の2000億円を投じ、新たな経営の柱を築きたい意向で、デジタルビジネスにも注力し、'07年に過去最高を記録した1815億円を超える営業利益を目指すという。しかし、果たして現状でリーマン・ショック前の黄金期を取り戻せるのかと懐疑的な見方をする専門家は多い。リコーは過去にもM&Aをしているが、成長分野には手を出しておらず、他のメーカーより一歩遅れているのが気にかかります」(証券アナリスト)

 一方の複合機の雄、キヤノンも、デジカメと同様に複合機が大きなウエートを占めていただけに、経営に暗雲が漂ったことがある。そこで仕掛けたのが、世界中が欲しがっていた、東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)の買収。これにより医療分野というゴールデンカードを手に入れたのだ。
 「キヤノンはそれ以前に、スウェーデンのネットワーク監視カメラでは世界最大手のアクシスコミュニケーションズ、オランダの商業印刷大手、オセなどを買収し、'17年12月期の営業利益は2550億円と前期比で11%も増え、すでに斜陽産業からの脱皮に成功しつつあった。それに加えて、今度は東芝メディカルシステムズの獲得に成功したのです」

 また、デジカメの普及によりメーンのフィルム産業が落ち目となり、沈没寸前に追い込まれた富士フイルムHDも、奇跡の再生を遂げている。写真フィルムに使用されていたコラーゲン技術を応用し、スキンケア化粧品『アスタリフト』を生み出してヘルスケア商品へ大転換。一方、今年1月には世界4位の複合機メーカーの米ゼロックスを買収し、一躍この分野では世界一に躍り出た。
 複合機メーカー世界6位のコニカミノルタも昨年、遺伝子によるがん診断を手掛ける米のアンブリー・ジェネティクスを1100億円、創薬支援の米企業を320億円で買収など本格的に医療分野に進出し、着実に新収益源を確保している。

 「リコーとて、国内ではバイオマス事業への参入や、過去には米IBMデジタル印刷、ペンタックスの買収など、拡大への努力は随所に見られる。しかし、決定的な成長産業でのM&Aがいまだできていないことが、先行き不透明な状態を生み出している」(業界関係者)
 かつてはその営業力から“野武士軍団”とも称されたリコーが、再び勝ちどきを上げるのはいつか。

社会新着記事

» もっと見る

複合機が過去最大赤字 M&Aでつまずいたリコーの暗中模索

Close

マダムとおしゃべり館

▲ PAGE TOP