阪神コロナ特例V浮上 掛布雅之氏「ダメ虎改造」二頭体制

スポーツ・2020/06/19 15:00 / 掲載号 2020年7月2日号
阪神コロナ特例V浮上 掛布雅之氏「ダメ虎改造」二頭体制

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が遅れていたプロ野球が、6月19日にいよいよ開幕する。多くの野球解説者が「今年ばかりは予想不能」と頭を抱える中、人気急上昇中なのが、開幕戦で巨人と対戦する阪神。それを支えるのが、昨季限りで退団した掛布雅之氏の“リモートワーク”!

 今年の阪神は典型的な“二頭政治体制”を敷く。

 球団は昨年10月、矢野燿大監督(51)と新たな3年契約を締結するとともに、次期監候補でオーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザー(SEA)の掛布雅之氏(65)を退任させた。この掌返しにも驚いたが、その後、親会社の阪急阪神ホールディングス(HD)が「レジェンド・テラー」という肩書で再雇用し、2度びっくり。全国の虎ファンのブーイングに苦慮した藤原崇起オーナーが、球団を飛び超えた観点からのアドバイザーを要請して収拾した経緯がある。

 屋上屋を架す形となったが、伝統の「お家騒動」を心配する声をよそに、チームが大きくバージョンアップしたから面白い。

「タイガース回帰主義が強まり、その精神的支柱が掛布氏。チーム関係者によれば、ドラゴンズ化を進める矢野監督が生え抜きの鳥谷敬を退団させたことに加え、藤浪晋太郎投手ら3人のコロナ感染者を出したことで不評を買い、非主流派だった掛布株が急騰している」(スポーツ紙デスク)

 もっとも、掛布氏には上、つまり監督を目指す考えはない。周囲には「功労者である鳥谷を指導者で迎え、藤浪をエースに育てる道筋を付けるのが自分の役目」と話し、いちOBの立場で助言しているという。いま流行りの言葉で言えば、自宅でチームを支える「リモートワーク」である。

 ここまで見ると、順風に見える今季の阪神だが、逆風はなくもない。その一つが、試合数の問題だ。

「今季は140から120試合に短縮され、どのチームもスタートダッシュに心血を注ぐが、中でも阪神が背負うハンデは大きい。開幕カードの巨人戦を皮切りに、ヤクルト戦、横浜戦、中日戦、広島戦と、異例の“5カード連続ビジター”15試合が待っている。いきなり正念場を迎えるわけだ」(阪神OBの野球解説者)

 甲子園高校野球交流試合開催に伴い、本拠地の甲子園球場を高校球児に明け渡す例の「死のロード」もある。出遅れてそのまま脱落という懸念がある中、「巨人戦に勝ち越せば独走も可能」と選手たちを鼓舞しているのが掛布氏だ。

「開幕から約1カ月、選手たちはホテルに缶詰、外出できず気分転換できないという声もあるが、今の選手は部屋でゲームやLINEなどをして時間を費やす。掛布氏はリモートで選手にアドバイスを送ったり、励まそうとしている。矢野監督には打ち明けられない悩みも、レジェンド・テラーが相手なら垣根は低い。掛布氏が噛み砕いて首脳陣に助言することで、チームが機能する可能性はある」(同)

 さらに掛布氏の評価を高めたのが、「甲子園の土」入りのキーホルダーだ。夏の甲子園が中止となり、目標を失った全国の高校3年生の全野球部員(軟式含む)約5万人に贈呈する企画で、同氏がグループ首脳に働きかけて実現したという。

 甲子園を本拠とする阪神だからこそできる企画だが、その裏に込められているのが全国の優秀な高校球児のスカウトだ。

「今年は春夏の甲子園がないため、ドラフト指名は最少にとどめ、高校生中心に育成選手を多く集めて育てる方針です」(トラ番記者)

 だが、新型コロナの影響でスカウトの現場調査ができず、選手の評価が難しい。そこで独自の“トライアウト”を検討しているのだ。

「甲子園の土効果で阪神のイメージは格段に上がり、とりわけ地方の逸材を集めやすい環境が整った。掛布氏自身、ドラフト6位入団で人一倍努力し、ミスタータイガースに這い上がった人。二軍監督の経験もあり、鍛えて育てるのが掛布野球の真骨頂。集大成にしようとしているのです」(同)

 もともと阪神は、伝統的に第4コーナーをすぎた直線半ばまでは強い。’10年と’15年は120試合(全143試合)時点で首位。しかし、最後のせめぎ合いで逆転され、いずれも優勝を逃している。

 その点、今年は全120試合。昨季の投手力(防御率3・46)は両リーグトップで、10勝したエース西勇輝、いずれも防御率1点台のセットアッパー岩崎優、島本浩也、そして、衰え知らずの火の玉クローザー藤川球児らは今季も鉄板で、残す課題は昨季、リーグ最低の攻撃力強化だけだった。だが、厳しい日程で選手の体力消耗を避けるため、外国人枠が5人に拡大され、最多の8外国人選手を抱える阪神に追い風が吹いている。

「先発ガルシア、救援のエドワーズ、スアレス(ソフトバンクから移籍)に加え、3・4番にマルテ、ボーアが使える。1、2番には近本光司、糸原健斗、そこにベテランの糸井嘉男、福留孝介も健在で、6番以降も大山悠輔、木浪聖也、梅野隆太郎らが控え、打線の伸びしろは12球団トップでしょう」(同)

 本命は巨人だが、昨季15勝4敗の成績でメジャーへ移籍した山口俊投手の抜けた穴は大きく、エース菅野智之のマンパワーだけでは山口の「貯金11」は埋められない。一方の阪神は、これまで制球難で自滅していた藤浪が「無観客」のおかげで復活する可能性がある。

 死のロードさえ乗り切れば、15年ぶりの優勝へ…。掛布氏のリモートワークにかかる期待は大きい。

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