葉加瀬マイ 2018年11月29日号

歌謡(うた)のマドンナ 第11回 山本あき 路上ライブでは金髪に変身する異色の歌手 併せ持った「歌謡曲の心」と「ロック魂」

掲載日時 2016年04月24日 12時00分 [芸能] / 掲載号 2016年4月28日号

歌謡(うた)のマドンナ 第11回 山本あき 路上ライブでは金髪に変身する異色の歌手 併せ持った「歌謡曲の心」と「ロック魂」

 −−大人の恋を題材に、しっとりとした歌謡曲を歌う山本あき。だがかつては、エレキギターを弾きながら歌うロック少女だった。
 「中学2年生の時、『プリンセスプリンセス』のきょんちゃん(富田京子)が一生懸命ドラムを叩く姿がかわいくて、“女性でもできるんだ、カッコいい!”と思ってドラムを始めたんです。ドラムセットは買えないので、スネアだけを買って、うるさくないようにタオルを乗せて部屋で練習。雑誌でメンバーを募集してバンドを組んで、プリプリの曲をカバーしていました。ボーカルがいなかったので、私がドラムを叩きながら歌っていました」

 −−高校に入ると、同級生の女の子たちと念願のガールズバンドを結成する。
 「私はギター&ボーカル担当に。主に私が作詞・作曲してオリジナル曲も作り、コンテストにも出場していました。私は音楽の道に進むことしか頭になくて、そのバンドでデビューすることを夢見ていたんですが、高校3年の時、他のメンバーは進学や就職をするつもりだと知って大ショック。今思えば、その判断が彼女たちにとっては正しかったのだと思いますが、ガツンと頭を打たれた感じで、夢破れた瞬間でした」

 −−高校卒業後は、ライブハウスで新たにバンドを組んだり、1人でアコースティックライブをやったりと、音楽の活動を模索したという。
 「ある日、金沢市で、昔の町名『木倉町』を復活させようというイベントが大々的に行われて、その一環として1日だけ“流し”をやってみないか、という企画を紹介されたんです。ギターで歌うのはライブハウスも“流し”も同じだと思って、やってみることに。そこで初めて演歌や歌謡曲をちゃんと聴いたんです」

 −−その時出会ったのが、藤圭子の『圭子の夢は夜ひらく』だった。
 「衝撃的でしたね。藤さんの歌声、詩の世界が自分の心情と重なって、何度も繰り返し聴きながら泣いたのを覚えています。藤圭子さん、江利チエミさん、ちあきなおみさん、美空ひばりさん…。そういった方たちの歌は、それまで漠然と抱いていた演歌のイメージとは明らかに違っていて、歌謡曲の魅力にハマったんです。ロックに通じるものがあると感じました」

 1日だけのはずの“流し”が面白くなり、自分の意志で3カ月ほど続けることに。そんな彼女を、テレビや新聞が「ロックから演歌に目覚める」と見出しを付けて取り上げた。それがきっかけで、香西かおりをはじめ数多くの歌手を育てた作曲家・聖川湧氏と出会う。
 「聖川先生が東京から富山や金沢にいらっしゃる時に、レッスンを受けるようになったんです。地元で別の先生にも演歌を教えてもらいつつ3年半、28歳の時、思い切って上京。アルバイトで生活費を稼ぎながら、聖川先生から直接指導を受けるようになり、デビューを目指しました」

 −−キングレコードのオーディションに合格し、'06年、『哀しみ模様』でデビュー。滑り出しは順調だったが…。
 「年末には日本レコード大賞の新人賞をいただき、期待で胸がいっぱいでした。ところが、2年目からまったくと言っていいほど仕事がなくなってしまったんです。近所の飲み屋に行って『今日もお休みなの?』と聞かれても答えられない自分がいて…。現実の厳しさを知りましたね」

 −−ヒットが出ないまま3年が過ぎ、思い悩んでいた時期に、思い立って挑戦したのがマラソンだった。
 「初めて参加したのは青梅マラソンでした。“自分自身と戦って、走り切れたら次の事を考えよう!”と30キロのコースに個人的にエントリーしたんです。その情報をスポーツ紙が取り上げてくれて話題になったことはいいのですが、逆にプレッシャーに…(笑)。その時は足のケガのせいもあって途中でリタイアしてしまったんですが、その後、ハーフマラソンを2回走って、'11年に東京マラソンで初のフルマラソンに参加。5時間58分で完走しました。話題にしてもらったおかげで、多くの方に私を知っていただくきっかけにもなりましたし、結果的にはよかったかなと思います」

 −−6月でデビュー満10年。大人の歌謡曲を歌う一方、今でもロックへの気持ちは持ち続けている。
 「昨年の6月から、月に一度、錦糸町や蒲田の駅前で歌うマンスリー路上ライブを始めました。不特定多数の方に見てもらえる場所で歌って、ファン層を広げたくて…。その時だけは金髪のカツラを被って歌うんです。プリプリやレベッカをはじめ、フォークソングなど、皆さんが知っていそうな曲を歌います。もちろん私の曲も。駅前ですから、幅広い方が足を止めて聴いてくださいます。おばあちゃんから『ロックもいいわね』と言っていただいたり、少しやんちゃな若い男の子たちが『お前行けよ!』って言い合いながらCDを買いに来てくれたりするのが、すごくうれしかったですね。お客様からの反応もよくて、成果を実感しています。こういったライブ活動が私の原点だし、コツコツと続けていきたい。幅広いジャンルの歌をうたう、ボーカリストでありたいですね」

やまもと・あき
5月24日石川県白山市生まれ。'06年『哀しみ模様』でデビュー、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞。「日本作曲家協会音楽祭2015」にて奨励賞を受賞。ラジオ日本『杉紀彦のラジオ村』アシスタント、ミュージックバード『歌の交差点』木曜パーソナリティー、BS12『平成歌謡塾・2』司会を担当中。最新CD『大阪さみしがり』(キングレコード)発売中。

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