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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 原発新設は誰の得にもならない

掲載日時 2018年04月09日 15時00分 [政治] / 掲載号 2018年4月12日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 原発新設は誰の得にもならない

 3月16日の読売新聞が、電力5社と政府が、青森県東通で原発の建設と運営を共同で行うための協議会を設置すると報じた。
 もともと東京電力が計画していた原発だが、それを電力会社5社と政府が共同建設するのは、原発の安全対策費用負担を分散し、原発の技術を共有するためだという。「原発依存度をできるだけ小さくしていく」というのが政府の基本方針であるはずなのに、国家ぐるみで原発建設にまい進しようというのだ。

 そうなるのではないか、という予感はあった。'15年に政府がエネルギー基本計画を策定した際に、望ましい電源構成として、原発の比率を20〜22%としていたからだ。
 この比率は、逆算すると、現存するすべての原発を再稼働する水準だ。ただ、既存の原発のなかには、今後、廃炉になるものも当然出てくることから、新たな原発を建設しなければ、望ましい電源構成を実現できないのだ。

 政府が原発を維持しようとする一つの理由は、原発の発電コストが一番安いという点にある。原発の発電コストは1KWH当たり10円とされている。しかし、このコストには原発事故のコストが含まれていない。
 例えば、廃炉になった福島第一原発が生涯で発電した電力は、1兆KWHとみられる。ところが、その廃炉には最大70兆円ものコストが必要とされている。その費用を加算すると、福島第一原発の発電コストは、1KWH当たり79円になる。
 もちろん、すべての原発が事故を起こすというわけではないが、今年の太陽光発電の事業用買い取り単価が18円であることを考えると、原発にコスト面での優位があるのかは、非常に疑わしい。

 原発新設を進める一方で、政府は福島第一原発のメルトダウンで生まれた燃料デブリを取り出して、完全廃炉にする方針を打ち出している。
 しかし、ここにきて、その作業に困難な状況が生まれている。格納容器に亀裂が生じていて、水を満たした状態でのデブリ取り出しが不可能であることが分かったのだ。
 東電は、水を満たさずに取り出す方向で検討しているというが、その方法だとデブリが飛散して、作業員に2次災害が及ぶ危険が生じる。すべてのデブリを取り出すのも、おそらく不可能な状況だと言われる。廃炉にどれだけ時間がかかるのかも、まったく分からない状態なのだ。

 そうしたなかで、原発近くの人口は激減したままだ。特に若者はほとんど戻ってきていない。だから、私は決断すべき時期がきていると思う。福島第一原発の早期廃炉をあきらめて、100年単位の廃炉先送りをするのだ。
 放射能は、時間が経てば、どんどん小さくなっていく。だから、100年先、200年先になれば、廃炉は、はるかに容易になるのだ。そして、廃炉の代わりに、福島第一原発を遮蔽する。チェルノブイリのような石棺にしなくても、現代の技術であれば、コンパクトな遮蔽が可能だ。
 そして、遮蔽が完了した時点で、原発から半径30キロ以内の地域に、太陽光発電パネルを敷き詰めて、現地を太陽光発電の拠点として整備するのだ。そうすれば、若者の雇用も生まれるだろう。

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