岸明日香 2018年12月20日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第288回 全道ブラックアウト

掲載日時 2018年09月25日 06時00分 [社会] / 掲載号 2018年10月04日号

 9月6日、北海道胆振地方を震源とする震度7の地震が発生。40人以上が死亡し、北海道電力の営業地域ほぼすべてが停電する「全道ブラックアウト」というカタストロフィまでもが発生してしまった。

 筆者は、2011年の福島第一原発事故後、全国各地の電力会社や発電所(原発含む)を取材し、政治的に原発を止めた日本の電力サービスは、やがてはブラックアウトを起こすと予想した。予想が的中したわけだが、全くうれしくない。むしろ悲しい。
 今回の全道ブラックアウトは、
(1)泊原発を再稼働できない状況で、
(2)複数の火力発電機がメンテナンスに入らざるを得ず、
(3)165万kWという北海道の電力需要の半分(!)を担う苫東厚真火力発電所が全機止まり、
(4)周波数が大きく乱れ他の発電機が自動停止した、
 というメカニズムだったと考える。

 誤解している人が少なくないが、電気とは十分な蓄電がいまだに不可能で、今消費されている電気は、今発電されている。電力会社は一定の周波数の変動範囲内で、需要と供給を合わせなければならない。さもなければ、発電機や電気機器が故障する。
 苫東厚真火力発電所のように極端にシェアが大きい発電機が止まると、周波数変動の許容範囲を超えてしまう。すると、送電網に接続されている発電機が故障してしまうため、各地域の発電所がシャットダウンされ、ブラックアウトに至ったのだろう。

 というわけで、ポイントは、
「泊原発が稼働していた場合、苫東厚真火力発電所が止まっても周波数の変動許容範囲内で、ブラックアウトは起きなかったのではないか?」
 となる。この辺りは、今後の検証を待つとして、それ以前に、
「一つの発電所に域内電力の半分を委ねざるを得ない時点で、エネルギー安全保障は成り立っていない」
 という現実を、国民は理解するべきだ。
 相変わらずマスコミでは反原発派の声が大きいが、ならば原発に代わる「エネルギー安全保障強化」に貢献する電源を提言するべきだ。ちなみに、火力はダメである。理由は、原油、石炭、LNGなど、わが国はほとんど自給できないためだ。

 火力を増やすと、エネルギー自給率はむしろ下がる。電力会社の収益も悪化し、使用済み核燃料の処理や廃炉の技術開発すら不可能になってしまう。送電設備のメンテナンスコストも削られ、日本の停電率は上がっていく。もちろん電気料金も上昇し、日本の競争力は低下する。

 そもそも、火力発電所の新設には土地の選定から数えると、少なくとも10年は必要だ(原発は20年)。10年間、日本のエネルギー安全保障の崩壊を見すごすのか。日本のエネルギー安全保障は、すでに崩壊状態であることを全道ブラックアウトが証明したのだ。つまりは「今すぐ」改善しなければならないのである。

 未来永劫、原発を使うべきとは言わない。だが、とりあえず日本はエネルギー安全保障回復のために、原発を再稼働しなければならない。日本の原発は福島第一原発の事故以降、耐震性が著しく強化されている。しかも、東日本大震災の際には、福島第一原発をはじめ、すべての原発は普通に自動停止した。

 福島第一の事故は、津波による電源喪失、ただそれだけなのだ。電源喪失の結果、冷却ポンプが動かせなくなり、事故に至った。建屋の屋上にディーゼルの発電機があれば、それで済んだ話なのである。

 今回の地震でも、泊原発に対する外部からの電源供給が止まり、非常用発電機でポンプを動かし続けた。原発は、停止していれば「完全に安全」というわけではない。また、北海道電力を含む日本の電力会社の火力発電所は老朽化し、使用に堪えないものが少なくない。それを、だましだまし使わざるを得ない状況に追い込まれているのだ。

 火力発電を強化するどころか、一部の発電所は取り壊しをしなければならない時期に至っている。北海道電力の奈井江発電所では、筆者よりも年上の発電所が現役なのである。本来は取り壊すべき。半世紀近く稼働し続けてきた老朽化発電所が、身体にむち打って動き続けている。トラブルやメンテナンスの回数が増えて当然だ。

 地震で被害を受けた苫東厚真発電所が復活したところで、老朽化火力発電所に一定の電力供給を依存せざるを得ない状況に変わりはない。

 来年2月には石狩湾新港発電所が動き出すが、当初の1号機の出力は56・94万kWにすぎない。2号機以降は、'23年以降の稼働予定となっている(さすがに早めたいところだろうが)。

 また、'19年までに運転年数が40年を超す老朽化火力は、132万kW。石狩湾1号機が動き出したところで、老朽化火力の稼働は、泊原発が再稼働しない限りは続かざるを得ない。

 結局、石狩湾1号機が動き出しても、北海道の電力供給は苫東厚真発電所に極端に依存する構造は変わらない。目の前に危機があり、その解決方法は明らかである。泊原発を再稼働し、とにもかくにも「目の前の危機」を乗り越えるのだ。その後は石狩湾2号機以降の建設を早め、老朽化火力発電所を「引退」させ、さらには水力発電の強化など中期的なエネルギーミックスの確保を目指す。

 その後、原発についてどうするのか。使用済み核燃料の再処理や最終処分、廃炉の技術開発を着々と進めていきつつ、原発をエネルギーミックスの中でいかに位置付けるのかを考えていく。これ以外に、北海道のエネルギー安全保障を回復する道はない。

 今回のブラックアウトは、季節が厳冬期でなかったという点が、本当に不幸中の幸いであった。氷点下20度の世界、しかも、大雪で交通もままならない世界において、ブラックアウトが起きていたら、人類史に残る悲劇になってしまったのは確実だ。ちなみに、冬の北海道は電力需要が500万kW(現在は300万kW台)を超すため、苫東厚真が復旧したとしても、万全には程遠い状況が続く。

「今すぐ」に解決する必要がある以上、北電は泊原発を再稼働しなければならないのだ。政治が動く必要がある。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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