菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第174回 安倍政権は『外国移民推進政権』である

掲載日時 2016年05月21日 16時00分 [政治] / 掲載号 2016年5月26日号

 もはや安倍政権と自民党は、隠すこともなく「外国移民」を推進し始めた。

 現在の日本は少子高齢化が原因で、生産年齢人口(15歳-64歳)の総人口に占める割合が下がってきている。バブル期に70%だった生産年齢人口比率は、今や60%だ。すなわち、今後のわが国では、人手不足が深刻化していくことが確実なのである。
 素晴らしい話だ。経済成長とは、人手不足環境下における生産性向上(生産者一人当たりの生産量を増やすこと)以外では起きない。高度成長期の日本も、超人手不足であった。当時の日本の政治家や経営者は、外国移民の受け入れではなく、生産性向上のための設備投資、公共投資、人材投資、技術開発投資により人手不足を解消した。
 投資拡大で生産性が向上すると、GDP三面等価の原則により「生産者一人当たりの所得」も増える。実体経済は「生産=需要=所得」なのだ。生産性向上こそが、国民を実質的に豊かにする。
 豊かになった高度成長期の国民は、消費や投資を増やした。結果、企業や生産者の仕事が激増し、またもや人手不足。さあ、どうするか。もちろん、生産性向上あるのみだ。

 と、高度成長期に「人手不足+生産性向上」という資本主義の王道を突き進み、わが国は世界第2位の経済大国に上り詰めた。そして今、生産年齢人口比率の低下により、日本国は再び経済成長率を高める“絶好のチャンス”を迎えようとしている。
 そのチャンスを、安倍政権や自民党は外国移民受け入れでつぶそうとしている。

 安倍総理は、4月19日の産業競争力会議において、
 「第4次産業革命を担う優秀な人材を海外から呼び込みたいと思います。このため、永住権取得までの在留期間を世界最短とします。『日本版高度外国人材グリーンカード』を導入します」
 と、語った。
 第4次産業革命とは、まさに人手不足を生産性向上で補うための技術開発投資になる。日本が第4次産業革命を推進するべきという主張は正しいのだが、なぜそこで「永住権取得」の話が出てくるのだろうか。

 断っておくが、筆者は別に第4次産業革命をすべて日本独自の技術で成し遂げるべきなどと言いたいわけではない。優秀な人材や技術を外国から招くのも大いに結構だ。
 ただ、それと「永住権取得」は全く結び付かない。そもそも永住権取得が外国人の来日の条件だとするならば、現時点で90万人も外国人労働者がわが国で働いていることについて説明がつかない。
 永住権取得までの在留期間が長かろうが、現実に外国人労働者の数は増え続けている。安倍総理の言からは、「わが国が永住権取得までの在留期間が長いため、外国人労働者が働けない」という印象を受けてしまうが、現実を無視している。
 要するに、安倍政権は端から「外国移民を推進したい」という目標を持っているのである。とはいえ、外国移民受け入れ政策は、国民の反発を買う。だからこそ、第4次産業革命にかこつけ、永住権の話を持ち出しているにすぎない。

 そもそも意味不明なのは、第4次産業革命はサービス産業の生産性を高め、わが国が、
 「外国移民に頼らずとも、国内のサービス業の需要を満たすことができるようにする」
 ことを目的に推進されるべきなのだ。外国移民の受け入れを回避するための第4次産業革命までもが、移民推進に活用されている。
 姑息である。

 姑息といえば、筆者が「亡国の特命委員会」と呼ぶ自民党の労働力確保に関する特命委員会は、人手不足のため労働力が必要な分野に外国人労働者を受け入れるべきとの提言を、政府に提出しようとしている。提言では、わざわざ「移民政策ではない」とデマゴギーが明記され、さらに木村義雄委員長が「移民」について、
 「入国のときから永住を許可されて入国する人」
 と、勝手に定義を変更してしまった。
 国連により、移民は「出生あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人」と定義される。というわけで、現在の安倍政権や自民党が推進している「外国人労働者受け入れ政策」は立派な移民政策なのだ。
 現実に移民政策を推進していながら、「移民の定義」を変更することで、移民政策ではないと強弁しようとする。姑息、以外に表現しようがない。

 先に述べた「亡国の特命委員会」は4月26日の初会合の講師として、モルガン・スタンレーMUFG証券チーフ・アナリストのロバート・フェルドマン氏を招いた。フェルドマン氏はロイターの取材に対し、
 「日本政府は、実質的な移民政策に向かっている。『移民』という言葉には慎重だが、優良な住民となる可能性の高い、定住を希望する外国人を受け入れたいと思っている」
 と指摘したが、その通りである。

 日本政府は、実質的な移民政策にまい進している。もっとも、木村委員長の姑息なレトリックからも分かる通り、安倍政権や自民党は「移民政策」を推進していると有権者に思われるのは嫌なようである。
 というわけで、安倍政権や自民党が「移民推進」をしているという現実を、できるだけ多くの国民が知るべきなのだ。

 わが国が、「日本国民の日本国家」として生き延びられるのか、正念場を迎えようとしている。現在の日本が外国移民を大量に受け入れると、日本人労働者は外国人労働者と過酷な「賃金切り下げ競争」を強いられる。実質賃金はさらに下がり、国民は貧困化していく。また、第168回で解説したが、資本主義経済において、経済成長に必要なのは「ヒトを増やす」ことではない。生産性向上のため、資本や技術におカネを投じることだ。
 産業革命後の資本主義の世界では、生産量は「ヒトの量」ではなく、生産性向上のための投資に依存している。生産性こそが、すべてを決する。
 「亡国の特命委員会」の木村委員長をはじめ、日本で移民推進をしている政治家は資本主義の基本すら理解しておらず、発想が300年前に退化してしまっている。
 国家を守り、国民を守り、さらには経済成長を達成するためにも、日本は外国移民を受け入れてはならない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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