菜乃花 2018年10月04日号

電力小売り完全自由化を嘲笑う東電“圧勝”3つの理由

掲載日時 2016年01月27日 16時00分 [社会] / 掲載号 2016年2月4日号

 電力小売りの完全自由化が迫ってきた。それをにらんで東京電力など既存の電力会社が相次いで新料金プランを発表した。東電の場合、モデルケースで従来の料金よりも5%程度安く、他社もほぼ同水準だ。
 これを参考に東京ガスや大阪ガスなどの新規参入組が格安な料金を前面に打ち出すようだと、先行組が対抗値下げに踏み切る可能性も十分にある。ユーザーには朗報だが、電力は安定供給が命綱とあって、早くも「牛丼価格戦争の再現」とばかり体力の消耗戦が危惧されている。

 国内の電力市場は約20兆円だが、その6割を占める大規模工場等はすでに自由化されており、家庭向けと小規模事業者向けなど約8兆円市場が4月から完全自由化される。それを狙って500社を超える新規参入組が、顧客の争奪戦を繰り広げるのだ。
 携帯電話各社ではKDDI(au)が小売りへの直接参入を表明し、NTTドコモも参入の構え。携帯電話とセットで契約すると電気、携帯の料金を割り引く。東電と提携するソフトバンクも、これまたセット割を売りにするなど、新規参入組の大半は異業種からの転身組である。
 「ガス料金やケーブルTVと絡めたセット割やポイント還元など、各社はさまざまなプランを打ち出していますが、限られたパイの奪い合いがヒートアップすれば、体力で見劣る新電力の大半は淘汰される。料金の値下げ競争に走ればなおさらで、既存の電力会社を除けば2、3年後に生き残っている会社が5、6社もあれば御の字でしょう」(証券アナリスト)

 そんな中、最大の激戦地と目されているのが、全国の電力需要の実に3分の1を占める首都圏だ。むろん、長年にわたって地域独占にアグラをかいてきた東電の牙城である。同社に真っ向勝負を挑む新電力にあって「最大の強敵」と衆目一致するのは東京ガスだ。
 とにかく東京ガスの首都決戦シフトは尋常ではない。昨年5月には九州電力、出光興産と共同で石炭火力発電所の建設に向けた特別目的会社を設立し、千葉県袖ケ浦市に原発1基に相当する100万kwの火力発電所を2基建設する。このほか中部電力やJFEスチールと共同で千葉市に、これまた100万kwの石炭火力発電所を建設する。

 それだけではない。東ガスは昭和シェル石油と同出資で横浜市に天然ガス火力発電所を運営しているが、電力小売り自由化に備えて能力を1.5倍に増強する。また石油元売り最大手、JXホールディングス傘下のJX日鉱日石エネルギーと共同運営する川崎天然ガス発電(川崎市)の発電能力を、東京五輪が開催される2020年には現在の倍に相当する195万kwに増強するなど、とにかく突出しているのだ。
 「東ガスがここまで電力ビジネスにのめり込むのは、電力自由化を絶好の商機と捉えたからに他なりません。しかも来年にはガスの自由化も控えており、ここが一世一代の勝負どころと踏んだ。だからこそ、大枚を投じて“首都決戦”に備えてきたのです。にわか参入組とは意気込みからして違います」(経済記者)
 死屍累々の返り討ち組ラッシュが予想される中、東ガスだけは東電の牙城に肉薄するとの見立てである。そんな事態を察知したのか、株式市場では「JXホールディングスが水面下で統合に向け東ガスに激烈なラブコールを送っている」との情報さえ飛んでいる。

 原発事故でミソを付けた揚げ句、4月の小売り自由化を機に持ち株会社に移行して発電、送配電、小売りに分社するとはいえ、かねて強力な政治力を発揮してきた東電が地盤沈下に直結する草刈り場に甘んじるわけがない。東電ウオッチャーは明快だ。
 「東電は去年の4月、中部電力と火力発電でタッグを組み、折半出資で『JERA(ジェラ)』を設立した。液化天然ガスの調達量は世界最大級で、コスト削減効果が期待されています。当時、両社は『来年春をメドに火力発電所の統合を判断する』と口を濁しましたが、手負いの虎と化した東電には火力統合を機に経営統合にまでこぎ着きたいとの野心がある。もし中電が首を縦に振れば、東ガスによる“東電包囲網”はガタガタになる。知恵者ぞろいの東電のこと、あらゆる策を駆使して取り込むでしょう」

 その策士ぶりが怖いのか、東北電力は東電の牙城に切り込むそぶりを見せていない。そこに「東北電力の政治的配慮」があると解説する向きも少なくない。これで中部電力が東電に“配慮”し、関西電力が相乗りするようだと超巨大な電力会社が誕生することになる。
 自由化の手前、政府は簡単には止めることができない。体力と従来の政治力に加え、もはや失うものがなくなった東京電力の逆襲が始まる。

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