金与正ヒステリー 朝鮮戦争「6.25」勃発の戦時体制

社会・2020/07/01 12:00 / 掲載号 2020年7月9日号
金与正ヒステリー 朝鮮戦争「6.25」勃発の戦時体制

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 いまや金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正党第1副部長は“爆破エンプレス(女帝)”と揶揄されている。事実上の後継者を意味する「党中央」という呼称をいただき、6月16日、自らの力を誇示するために開城工業団地内の南北共同連絡事務所を爆破した。

 韓国は南北融和の象徴として、同地区に180億ウォン(約15億8000万円)の国家予算を投入している。それをあっけなく破壊してしまったわけだが、その日がまた意味深なのである。

「連絡事務所が爆破された16日は、2000年に韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記が史上初の南北首脳会談で共同宣言に署名してから、20周年にあたる記念日の翌日だったのです。韓国の文在寅大統領は、与正氏の爆破予告に対して『ともに突破口を探そう』と呼びかけましたが、それを一刀両断して、会話の糸口さえ与えませんでした」(北朝鮮ウオッチャー)

 加えて与正氏は、韓国に対して以下4つの挑発行動を突き付けている。
(1)金剛山観光地区と開城工業団地に連隊を再配置する。
(2)非武装地帯から撤退したミンギョン警戒所(見張り台)を復活させる。
(3)西南海上前線(南北の紛争地域)を含む境界地付近で各種の軍事訓練を再開する。
(4)大規模な対韓ビラ散布を行う。

 これらは事実上、’18年9月に締結された南北軍事合意の破棄を意味するものだ。そればかりか「ソウルを火の海にする」と脅した過去の恫喝まで持ち出し、「火の海説が再浮上し得る」とまで主張した。完全に“開戦前夜”の様相だ。

 ただ、与正氏が韓国への非難や罵倒を繰り返す中、いまだ正恩氏は一言も発していない。それどころか再び健康不安説が流れ、動向の報道は途切れているという。前出のウオッチャーは「ひょっとすると統治能力を失いつつある状態ではないか」とみている。

「5月1日に肥料工場の竣工式典を視察して死亡説を払拭した後、正恩氏は中国の習近平国家主席に『口頭親書』を送ったと報じられました。しかし、口頭ということは、正式な親書に自筆でサインできない状態なのかもしれません。現在の統治権力が与正氏に移動しているのは紛れもない事実ですが、それが短期的なものなのか、継続的なものなのか、それとも両頭政治になるのか見方は分かれています。両頭体制なら北朝鮮の『最高綱領10大原則』に反する一大事ですが…」

 北朝鮮が韓国への強硬姿勢を崩さない背景には、深刻な経済状況がある。’17年に国連安全保障理事会が北朝鮮への制裁を強化し、主要な外貨収入源だった石炭や海産物の輸出を禁じた。さらに北朝鮮は、各国に派遣していた労働者の出稼ぎまで制限され、いまや外貨が枯渇していると伝えられている。

 現在の与正氏が、おカネを必要としていることは間違いない。しかし、韓国の経済援助を必要とするならば、同国の民意を逆なでするような連絡事務所の破壊など逆効果ではないのか。

「与正氏の最優先事項は、瀕死の経済をよみがえらせ、国民を飢餓から救うことではありません。それよりも、彼女自身による新体制の確立を急がなくてはならない。なぜなら金一族にとって、重大な事情があるからです。韓国から経済支援をもぎ取ることは、実績が認められてからでも遅くはないですから」(日本在住の韓国人ジャーナリスト)
 一方、韓国の文政権にとって、南北融和は支持率上昇のために欠かせない。

「文政権が対北融和政策を転換できないのは、再来年に大統領選挙を控えているからです。ですから文氏は、どんなにさげすまれようと与正氏の靴を舐めるしかない。そこを見透かされているのです」(同)

 6月25日は南北にとって重要な日である。’50年6月25日の午前4時、暗号命令「ポップン(暴風)」を受けて、約10万の朝鮮人民軍が韓国になだれ込んだ。朝鮮戦争の勃発である。

「北朝鮮は現在に至るまで『韓国側の先制攻撃に対する反撃が開戦の理由』と主張し続けていますが、ロシアや中国ではすでに否定されています。しかし、反米の文氏や青瓦台を牛耳る左派勢力は、この主張を信じきっている。与正氏に“使用人”扱いされるのは当然のことです」(同)

 前述した「ソウル火の海説」の再浮上は、単なるこけおどしではない。北朝鮮は「核戦争抑止力」「戦略武力」を掲げて、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発再開を示唆しているが、韓国にとって死活問題となるのは、むしろ短距離弾道ミサイル(SRBM)である。

「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の年次報告書によると、北朝鮮は昨年、少なくとも3タイプの新型固形燃料を使ったSRBMの試射を実施している。1つはロシアの『イスカンデルM』と外観が似た『KN23(射程600キロ)』で、次に多連装ロケットシステムの『KN25(同380キロ)』、3つ目は北朝鮮版エイタクムス『KN24(同400キロ)』です」(軍事ブロガー)

 このように、北朝鮮は非武装地帯に多種類のSRBMを実戦配備できるレベルになりつつある。これらを連射すれば韓国軍のキルチェーン(北朝鮮ミサイルへの先制攻撃)は無力化し、韓国や在韓米軍への脅威はいっそう高まる。
 与正氏がヒステリーを起こして、「ポップン!」と命令する日は来るのか。

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