竹内渉 2018年8月2日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「地雷」が怖くて、一歩も動けないのは皆同じ 『ALONE』

掲載日時 2018年06月17日 12時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年6月21日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「地雷」が怖くて、一歩も動けないのは皆同じ 『ALONE』

 広大な砂漠の地で地雷を踏んでしまったために、救助部隊が到着するまで3日間も身動きできないという極限状態に陥った米軍兵士の話。
 昼は灼熱地獄、夜は極寒と野生動物に襲撃されながら、一歩も動かないままに、わずかな水と食料で命をつなぐなんて、まさに想像を絶する事態です。「自分だったらどうするだろう」と思わず考えてしまう絶体絶命の設定を“シチュエーション・スリラー”と呼ぶんですね。

 見ている我々も映画館の椅子に縛り付けられているわけですが、特に自分は「レストレスレッグス症候群」を患っておりまして、飛行機や新幹線などの椅子にジーッと座っていますと、何とも表現しがたい不快感に襲われます。なので、この映画の「一歩も動けない」体勢の辛さは身にしみて分かります。自分だったら、もう死んだっていいやと、あっさり砂漠にダイブしてしまいそうです。
 この映画をこれから見に行く皆さんは、このまんじりともできずジリジリとした状況の何分の一かを体感するために、ポップコーンもコーラも飲まず、トイレもガマンしてご覧になってはいかがでしょう。

 地雷源というと、自分もアフリカやパラオなどで何度かその間近を歩いたことがあります。もちろんここから先は絶対に立ち入らないようにという指示のもとですが、ドクロマークの看板が何とも不気味でした。
 確かに核も脅威ですが、今なお世界中に何十万発も残っている地雷こそ、最も卑劣な兵器の一つと言わざるを得ません。

 この映画の「地雷が怖くて一歩も動けない」という設定は、年をとるごとに背負うものが増え、リスクをとれずに身動きがとれない我々に共通する「メタファー(隠喩)」になっています。しかし、人生の残り時間を意識し始めた自分の場合、最近あきらかに「一歩を踏み出す」ことが多くなりました。
 たとえば、倉庫を借りて、むやみにため込む一方だった自作漫画の原画の数々。母校の早稲田大学で漫画資料をアーカイブとして残すプロジェクトがあると聞き及び、「引き取ってくれた後は、どうしてくれてもいいから」と問い合わせたところです。まさに終活ですね。

 長年、後回しにしていた歯医者通い、運転免許の返上、何十年分もの名刺の整理…少しずつ片付けていくわけですが、最大の山場がB級コレクションの処分なのは間違いありません。
 これが一番執着している案件で、なかなか一歩を踏み出す勇気が出ないんですが…。

画像提供元
(C)2016 Mine Canarias Aie Roxbury Enemy Sl Sun Film Srl Mine Film Llc

■『ALONE』監督・脚本/ファビオ・レジナーロ、ファビオ・グアリョーネ
出演/アーミー・ハマー、アナベル・ウォーリス、トム・カレン
配給/パルコ

 6月16日(土) 新宿シネマカリテ 他全国ロードショー。
 テロリスト暗殺のミッションに失敗したアメリカ兵士のマイク(アーミー・ハマー)は、逃走中に、誤って3000万以上の地雷が埋まる地雷原に入ってしまう。気づいた瞬間、仲間の兵士が目の前で爆死。さらに自らも地雷を踏んでしまい、一歩たりとも動けない窮地に立たされる。救出隊の到着まで52時間。その間、次々に押し寄せる自然の脅威や、過去のトラウマからくるフラッシュバックに襲われ続けるマイク。現実と幻覚の間をさまよいつつ、孤独との戦いを強いられるが…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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