葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 小野一光 『殺人犯との対話』 文藝春秋 1,450円(本体価格)

掲載日時 2016年02月08日 20時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年2月11日号

 −−20年以上にわたる殺人事件の取材を始めたきっかけは何だったのですか?

 小野 私は20代の半ばに週刊誌の記者をやっていました。そこで編集部から命じられて、殺人事件の取材に投入されたことがきっかけです。当初はあくまでも与えられた仕事として取り組んでいたのですが、'04年9月に福岡県で発生した『大牟田連続4人殺人事件』の実行犯である北村孝紘(死刑囚)が、弁護人を通じて面会したいと申し入れてきたんですね。それで本人と会うようになったことで、殺人犯という存在に興味を抱くようになりました。その頃はすでにフリーランスのライターでしたが、週刊誌や月刊誌に企画を持ち込んでは殺人事件の取材を続け、可能であれば犯人との面会や文通をするということを繰り返していました。

 −−さまざまな殺人犯と対面していますが、特に印象的だった人物は誰ですか?

 小野 面会した相手については全員の性格がバラバラで、誰もが印象的なのですが、中でもいちばん強烈だったのは、やはり『北九州監禁連続殺人事件』の松永太(死刑囚)ですね。親族同士を殺し合いさせ、遺体処理までさせて計7人を殺害した凶悪な犯行の主犯でありながら、面会室での彼は屈託がないんです。笑顔を浮かべ、私に対して「先生、先生」と呼びかけて、自らの無実を訴え続けていました。しかも面会を重ねるごとに、私の呼び方を「小野さん」に、さらには「一光さん」へと変化させて、親しみを演出するという具合なのです。その姿には悪魔的な要素を感じましたね。また、前述の北村孝紘とは、長い期間をかけて面会を重ねていたのですが、暴力的ながらも人懐っこい部分を見せる彼に、凶悪な殺人犯の心の中にも人間味が共存していることを知りました。

 −−『尼崎連続変死事件』では主犯・角田美代子の恐怖支配が明るみに出ました。

 小野 角田美代子の場合は、まず相手を見極める能力に秀でているのだと思います。つまり、相手が自分の脅しに対して服従するタイプか、そうでないタイプかを見分けるのです。そして歯向かってきそうなタイプに対してはすぐに見切りをつける。「勝てる喧嘩しかしない」からこそ、多くの被害者が生まれたのだと思います。また、実在する広域暴力団の組長の名前を挙げ、「○○ちゃん」と親しげに呼んでは親密さを装っていました。その“虎の威を借る”迫真の演技によって、彼女を敵にまわすと怖いというイメージを抱かせ、服従を強いてきたのです。その結果、多くの被害者が生まれてしまいました。
(聞き手:程原ケン)

小野一光(おの いっこう)
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに数々の殺人事件のほか、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材している。

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