〈企業・経済深層レポート〉販売店の閉店ラッシュで顕在化 携帯電話業界で起きている地殻変動

社会・2019/07/31 06:00 / 掲載号 2019年8月8日号
〈企業・経済深層レポート〉販売店の閉店ラッシュで顕在化 携帯電話業界で起きている地殻変動

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 もはや“生活必需品”と言っても過言ではないアイテムとなった携帯電話。1995年頃から加速度的に普及が始まり、現在まで携帯電話業界は右肩上がりで市場規模を拡大してきた。

 しかし、その成長も最近になって陰りが見え始めている。IT分野専門関係会社の調査によれば、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクといった大手通信キャリアの代理店契約を交わした携帯ショップが、今年2月で8341店舗となり、昨年5月から8カ月間で150店舗以上減少している。

 携帯電話業界に詳しい経営コンサルタントは、「ここ数年で売上が鈍化している携帯ショップが急増している」と、業界で地殻変動が起きていることを指摘する。

 今まで右肩上がりで成長してきた携帯電話業界に、一体何が起きているのか。

 まず、携帯電話業界のビジネスモデルを解説したい。
「大手キャリアの収益の柱となるのは“通信料”です。昨年9月に総務省が公表した2017年度の他国との通信料金を比較すると、最も安かったのはフランス(パリ)で2460円、トップは日本(東京)で月平均7022円です。1台につき、年間約8万4000円となり、端末代金を“実質0円”にしても売上が増える仕組みです」(IT専門ライター)

 一方、携帯ショップは、どうやって売上を出すのか。
「携帯ショップのほとんどは、通信キャリアと代理店契約を結んだ別会社が運営しています。携帯ショップは、お客さんと契約したことによってキャリアからさまざまな奨励金、いわゆるインセンティブが支払われ、こうしたインセンティブが携帯ショップの“売上”となります」(同)

 インセンティブは、新規契約を1人獲得すれば数万円、1台新機種を売れば数千円、オプションを付ければ数百円、回線を継続維持していれば支払われ続ける「回線継続インセンティブ」などがある。
「2007年には、従来のガラケーといわれる形の携帯電話から、スマートフォン(以下、スマホ)に切り替えるユーザーが急増。携帯ショップには、ほっといてもお客さんが足を運んでいたのです」(大手キャリア関係者)

 しかし、冒頭に記したように成長に陰りが見え始め、携帯電話ショップの減少にまでつながり始めている。一体、その原因はどこにあるのだろうか。

 まず、前出の経営コンサルタントは「スマホ需要はすでに頭打ち」だと指摘する。

 実際、2018年の『情報通信白書』(総務省)では、スマホ保有率は過去最高の84%に達したが、前年の83・6%とほぼ横ばい状態なのだ。

 さらにスマホ購入者の意識も変化しているという。
「技術的な進化も一段落したため、新機種に飛びつく層が減っています。購入スパンが大きく伸びていて、それが販売店の収益減にも繋がっています」(携帯電話ショップ店長)

 どの業界にもいえることではあるが、少子高齢化に伴う人口減少の影響を携帯電話業界も受けている。

 総務省が7月に発表した人口動態調査によれば、日本の人口(2019年1月1日時点)は1億2477万6364人で、43万3239人も減少している。さらに総務省の統計(2018年10月)によると、生産人口年齢(15〜64歳)、つまり携帯電話を最も利用すると思われる世代の人口は7545万人。この世代が1995年の8716万人からすでに約1000万人も減少している。この人口減は、当然、携帯利用者減につながっていると考えられる。

 さらに菅義偉官房長官が旗振り役となり、総務省の携帯料金引き下げの特別チームが急ピッチで動き出す。5月には端末代金と毎月支払う通信料を切り分ける「分離プラン」の法案が国会で可決された。

 「つまり端末代金と通信料をからめた複雑な料金が日本の高額携帯料金の温床といわれてきたのを、菅氏がバッサリと切ったのです。さらに6月の有識者会議では追加案が出され、途中解約の違約金が9500円から1000円に大幅減額。端末の値引きも2万円に制限されることになりそうです」(前出・IT専門ライター)

 この「分離プラン」の法案が可決されたことによって、これまでキャリアが長年作り上げてきたビジネスモデルが完全に崩壊する。
「そのため、昨年あたりから撤退する販売店が増え始めている。現状でも苦しい上に今後はさらに苦しくなるでしょうね」(前出・携帯電話ショップ店長)

 楽天が“第4のキャリア”として今秋に参入することも踏まえ、携帯電話業界は今年が大きなターニングポイントになるのかもしれない。

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