菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第271回 6月の骨太の方針閣議決定

掲載日時 2018年05月24日 08時00分 [政治] / 掲載号 2018年5月31日号

 安倍政権の経済政策は、国民を豊かにする「経世済民」の政策がほとんどない(あるいは“全く”ない)。基本的には、グローバリズム的な国民を貧困化させる政策ばかりを推進している。
 もっとも、日銀の量的緩和政策“だけ”は評価できる。日本銀行は2013年3月以降、量的緩和政策でひたすら国債を購入。日本円(主に日銀当座預金)を発行していった。結果的に、政府が実質的に返済しなければならない負債は、劇的に減少した。左図(※本誌参照)の通り、日本政府に返済義務がある国債(日銀以外が保有する国債、財投債、国庫短期証券)は、'12年9月にピークアウト。その後は、日銀の量的緩和(国債買取)の影響で、返済義務がある負債は'17年末までに195兆円も減った。
 逆に、日銀が保有する国債は'12年9月から'17年末にかけ、何と344兆円も激増。日本銀行は、日本政府の子会社である。日本銀行の株式の55%を、日本政府が保有している。親会社と子会社間のおカネの貸し借りは、連結決算で「相殺」となる。もちろん利払いも相殺となるため、不要だ。

 安倍総理大臣は日本の歴史上、最も「政府の負債を実質的に減らした」総理大臣なのである。無論、資本主義の経済である以上、負債は「積み上がっていく」のが本道ではある。とはいえ、「国の借金で破綻する!」系の財政破綻論者が跋扈するわが国において、日銀が国債を買い取れば、政府の負債は実質的に消える。しかも、経済がデフレ化しているため、「ハイパーインフレーション(※インフレ率年率1万3000%)」とやらも発生しないことを証明したのは評価できる。
 日銀が保有する膨大な国債の「処理」はどうするのか? と、疑問を覚えた読者がいるかもしれない。無論、永遠に(地球滅亡の日まで)借り換えを続けても構わないし、政府が「無期限無利子国債」を発行し、日銀が保有する国債と交換しても構わない。要するに、日銀が保有する国債など「どうにでもなる」ため、「返済や利払いが必要な借金」として認識する必要はないのである。

 わが国に、財政問題など存在しない。それを証明したのが、経済政策面における“唯一”の安倍政権の成果である。政権自ら「日本に財政問題はない」ことを証明したにも関わらず、安倍政権は相変わらずプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)黒字化という、国民を貧困化させる緊縮財政路線を止めない。
 '18年6月、安倍政権は今後5年間の財政運営の指標ともなる「骨太の方針2018」を閣議決定する。骨太の方針2018に、PB黒字化目標が残るか、あるいは何らかの財政政策の「枠」を設定された場合、わが国の「小国化」「衰退途上国化」は決定的になってしまう。

 '18年5月8日、政府が骨太の方針2018に「財政赤字対GDP比率3%」と、枠を設定するという報道が流れた。財政赤字対GDP比率3%という「枠」は、別に目新しくはない。
 '97年12月5日、日本の国会は「財政構造改革の推進に関する特別措置法(以下、財政構造改革法)」を可決。法律に基づく強制的な緊縮財政が始まり、日本経済はデフレ化した。
 財政構造改革法の中に、
 「財政赤字対GDP比を、毎年3%未満にする(第四条)」
 という条項があったのだ。

 なぜ3%なのか。財政目標を「財政赤字対GDP比を3%以内とする」とは、欧州のマーストリヒト条約と同じである。EU加盟国に財政赤字対GDP比3%以内という目標を強いるマーストリヒト条約が発効したのは、'93年。それに対し、日本の「緊縮財政法」たる財政構造改革法の成立は、1997年。要するに、日本の緊縮財政派は、政府に歳出削減を強要する財政構造改革法策定時に、マーストリヒト条約に「倣い」、財政赤字対GDP比3%以内という目標を財政構造改革法に書き込んだ。
 財政構造改革法により、わが国は社会保障費を抑制し、公共投資、教育費、防衛費、食料安全保障費、科学技術振興費、エネルギー対策費、中小企業対策費、各種人件費、地方の補助金と、国家の基幹に関わる分野でことごとく「予算削減」が続く事態になってしまった。結果、日本経済のデフレ化と国家の小国化、衰退途上国化が始まったのである。

 当たり前だが、財政赤字の対GDP比率は、「環境」によって適正値が変わる。経済状況によっては、財政赤字は対GDP3%よりも絞るべき時期もある。あるいは逆に、10%に拡大しなければならない時期もあるのだ。
 PB黒字化だろうが、財政赤字対GDP比3%だろうが、国家の予算に枠をはめ、「国民の繁栄のために必須の支出」よりも「財政均衡」を優先する。過去20年の日本を苦しめてきた緊縮路線の継続であることに変わりはない。

 これは推測だが、財務省はPB黒字化に対する批判が高まったことを受け、新たな「財政赤字対GDP比率3%」という縛りを提示し、批判をかわしつつ、緊縮財政を推進しようとしているのではないか。
 そもそも、マーストリヒト条約の「対GDP比3%」に、何ら根拠があるわけではない。日本経済が絶好調で、景気対策が不要で、税金が増大している時期であれば、財政赤字は対GDP比3%でも「大きすぎる」ことになる。逆に、現在のようにデフレが継続し、国民が貧困化している状況では、3%だろうが何だろうが、一切の「財政的な枠」は正当化されない。
 6月に閣議決定される骨太の方針において、PB黒字化や財政赤字対GDP比3%といった「財政の枠」を排除しない限り、わが国に未来はない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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