菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 配偶者控除拡大は罠ではないのか

掲載日時 2016年12月18日 14時00分 [政治] / 掲載号 2016年12月22日号

 政府与党は、2017年の税制改正で、配偶者控除の適用上限を、配偶者の年収が103万円から150万円に引き上げる方針を固めた。
 これによって、妻の年収が150万円までは、夫が配偶者控除を受けられることになる。ただし一方で、上限引き上げにともなう税収減の埋め合わせをするために、世帯主の年収が1120万円を超える世帯は、配偶者控除を圧縮することにしたのだ。

 所得税の配偶者控除は、妻の年収が103万円以下(課税所得がゼロ)の場合、夫の所得から38万円を控除するルールになっている。しかし、妻の年収が103万円を超えると配偶者控除はなくなるが、代わりに配偶者特別控除が発生することになる。
 配偶者特別控除は、配偶者控除と同額の38万円から始まって、妻の年収が上がるごとに減っていき、妻の年収が141万円を超えると消滅する。
 今回の配偶者控除の上限引き上げは、この配偶者特別控除の拡充によって行われると見込まれる。変更点は、そこだけだ。つまり、夫の所得税に関しては変化があるが、妻の所得税に関しては、まったく変化がないのだ。

 ここが重要な点なのだが、配偶者控除を受けようと思ったら、これまでは妻に所得税がかからない年収103万円以下に抑えることが必要だった。ところが、来年から配偶者控除の上限が150万円に引き上げられたとしても、妻の年収が103万円を超えると、いままで通り、妻には所得税がかかってくるのだ。
 しかも、妻の年収が130万円を超えると、厚生年金や健康保険の保険料も支払わなくてはいけない。つまり、配偶者控除の適用上限が拡大したからといって、余分に働くと、税金や社会保険料が増えてしまい、ひどい目にあう可能性が高いということだ。

 例えば、今回の制度改正に合わせて、妻が余分に働き、年収を103万円から150万円に引き上げたとする。収入は43万円増えるが、それと同時に税金が3万7000円、社会保険料の負担が22万5000円増えることになり、手取りは20万8000円しか増えない。余分に稼いだ金額の実に56%が、税金と社会保険料で持って行かれてしまう計算になるのだ。
 パートで年収を47万円増やすというのは、結構、大変なことだ。時給900円だとしても、1日5時間の労働を週2日、毎週しなければならない。それだけ働いて、手取りが月1万7000円増えるだけだ。労働時間増加分の実質的な時給は、たった399円ということになってしまう。

 私は、今回の配偶者控除拡大は、政府の仕掛けた罠なのではないかと思う。“年収150万円まで配偶者控除の適用が拡大されますよ”と政府が言えば、真に受けて働く時間を増やす女性が出てくるだろう。そうなれば、政府にがっぽりと税金と社会保険料が転がり込んでくる。仮に労働時間を増やす女性がいなくても、配偶者控除拡大の財源は、世帯主の年収が1120万円を超える専業主婦世帯の増税で確保している。
 だから、政府にとって配偶者控除拡大は、女性が労働時間を延ばせば延ばすほど儲かる「負けのないゲーム」になっているのだ。そんなイカサマに騙されてはいけない。

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