森咲智美 2018年11月22日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 社員は道具になった

掲載日時 2017年11月24日 14時00分 [社会] / 掲載号 2017年11月30日号

 トヨタやホンダなど、大手自動車メーカーが期間従業員の雇用ルールを変更した、と朝日新聞が伝えた。
 2013年に改正された労働契約法では、期間従業員でも、累積で5年間勤務すれば、正社員にしなければならないとの規定が設けられた。これまで自動車メーカーは、1年ごとに1カ月とか3カ月の空白期間をおいて、同じ期間工を繰り返し雇ってきた。そうすれば、正社員(期限の定めのない雇用)にしなくて済むからだ。
 改正労働契約法では、さすがに累積で5年も働いたら、正社員にすべきだろうという判断の下で、正社員登用のルールを決めたのだ。ところが、法律には抜け道があった。雇用の空白期間が6カ月になった時点で、累積の雇用期間がリセットされるのだ。つまり、5年ごとに6カ月の空白期間を置けば、期間工を非正社員として雇い続けることができるのだ。その抜け道を、大手自動車メーカーは、足並み揃えて利用することにした。
 期間工として働く労働者の立場からみると、これまでは最短1カ月のインターバルを置けば、ずっと働けたものが、今後はさらに5年ごとに6カ月のインターバルを置く必要になった。雇用は、法律の目指す方向とは裏腹に、確実に不安定化したのだ。

 法律の趣旨とは裏腹の結果になっているのは、一昨年に施行された改正派遣労働法も同じだ。
 3年を超えて派遣労働を続けると、正社員にしないといけなくなったため、派遣労働者は3年ごとに職場を転がされて、技術を身に付けるチャンスを失ってしまったのだ。
 こうした「社員イジメ」の背景は、企業が従業員を“仲間”だとは思わずに、利益を稼ぎ出すための道具として位置付けたことによるものだろう。

 それを裏付けるもう一つの「事件」が起きた。みずほフィナンシャルグループが、今後10年程度をかけて、グループ全体の従業員を6万人から4万人に減らす方向で検討していることが、明らかになったのだ。これは、行員3人に1人が仕事を失う勘定になる大リストラだ。
 その表向きの理由は、人工知能やIT技術の進化によって、人が行ってきた業務を効率化することが可能になったことだとされている。ただし、私が問題だと思うのは、みずほフィナンシャルグループが、昨年度に6035億円という巨額の最終利益をあげているという事実だ。
 つまり、とてつもなく儲かっていても、利益拡大のためには、従業員を切り捨てるということ。しかも、これはみずほフィナンシャルグループだけの話ではない。三菱東京UFJ銀行も、今後3年間で現在ある480店舗のうち1〜2割の統廃合を検討している。店舗がなくなれば、当然、行員もリストラされる。

 かつて日本の大企業は、経営が悪化し、他に手がなくなったときに、初めてリストラに手を染めたものだ。ところが、もはやどんなに儲かっていても、会社が従業員を切り捨てる時代がやってきたのだ。それも、自動車や銀行といった安定雇用の代表業種でもそうなってしまった。
 働く仲間を犠牲にしてまで確保しなければならない利益というのは、一体何なのだろうか。

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