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やくみつるの「シネマ小言主義」 ITを駆使した『母をたずねて三千里』 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』

掲載日時 2017年04月24日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年4月27日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 ITを駆使した『母をたずねて三千里』 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』

 テレビアニメ『母をたずねて三千里』的なストーリーは、これまでも繰り返し映画にされてきました。これって「絶対に感動できる」し、最終的に「たずね人は必ず見つかる」のです…。
 ただ、これまでの映画では、なかなかたどり着けなかったり、せっかく居場所が分かっても、すんでのところですれ違ったりと、もどかしさとハラハラの連続が定石だったはず。ですが本作では、Google Earthを駆使。25年前、5歳で迷子になった頃のわずかな記憶だけを頼りに、広大なインドの中から生まれた地を探し当てるという「干草の山の中から1本の針を探す」ような探索をITでやっちゃうわけです。
 まさに今日的ですし、昔の「母捜しもの」の定石を知るものにとっては、“それ使っちゃ反則でしょ”とツッコミたくなるポイントでもありますが、今は一周回って、観る方には違和感ないのかもしれません。これは実話をもとにしているので、IT化の好事例とも言えるかも。
 私は世界の辺境地を旅するのが趣味で、かつて訪れた土地のおさらいをするために、Google Earthを使ってみたいと思ったこともあります。しかし、自分の足でやっとたどりついたときの得難い喜びを思うと、どうしても逡巡してしまうわけです。

 ところで、映画の最後に「インドでは今なお8万人の子供が行方不明になっている」というテロップが入ります。この主人公は、迷子になったあとに、入った施設から1年少しでオーストラリアに養子に出されます。もうちょっと親を捜してやればいいのにとも思いますが、後がつかえているということなのでしょうか。
 幸いにも、彼は養子として幸せに育つのですが、この養母役がニコール・キッドマン。実際に養子を2人育てていることもあり、血のつながらない子に慈愛を注ぐ演技が真に迫り、この映画に深みを与えています。そして映画の最後に実際の養母の映像が出ますが、天下の美女ニコールがものすごく似せて役作りしているのには驚きました。

 自分たち夫婦にも南米ホンジュラスに、あるNPOを通して支援している子供がいます。自宅に引き取って生活を共にするこの映画の養父母とは比ぶべくもありませんが、成長を心から楽しみにしています。
 現地にも訪ね、顔を見に行ったことがありますが、いよいよ足腰が立たなくなって訪ねることがかなわなくなったら、Google Earthを使うかも。まぁその前に、自分はPCを使えないんで、そこから覚えなきゃなりませんが…。

画像提供元:(C)2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

■『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』監督/ガース・デイヴィス
出演/デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム、ニコール・キッドマン、サニー・パワール、アビシェーク・バラト、プリヤンカ・ボセ他
配給/ギャガ

 全国公開中。
 オーストラリアで暮らす青年、サルーには過去があった。それは、5歳のときにインドで迷子になり、家族と生き別れたまま養子に出されたこと。25年の月日が経ち、成長したサルーは、幸せな生活を送れば送るほど、インドの母と兄への想いは募る。そんなある日、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられたサルーは、おぼろげな記憶を頼りに、本当の母や兄が暮らす故郷を探しはじめる

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

関連タグ:やくみつるの「シネマ小言主義」

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