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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 中国発世界不況に陥るのか

掲載日時 2015年09月08日 10時00分 [政治] / 掲載号 2015年9月17日号

 8月25日の日経平均株価が1万7807円と、わずか1週間で13%もの暴落となった。株価下落は日本だけではない。アメリカも、ヨーロッパも、そしてアジアの株式市場までが軒並み下落したのだ。
 甘利明経済財政担当大臣は、「中国発の世界同時株安」と評し、市場関係者も、「原因は中国の失速」という見方で一致している。確かに中国の株式市場を代表する上海総合指数は、中国政府が防衛ラインとしていた3500をあっさり割り込み、25日には2747まで下落した。1週間で21%もの大暴落だ。

 ただ、私には大きな違和感がある。中国の4〜6月期の実質GDPは、前年同期比で7.0%も成長している。中国政府が掲げる目標通りで、日本の4〜6月期のGDPが年率1.6%のマイナス成長に陥っているのとは大きな違いだ。しかも、中国の4〜6月期の小売売上高は、前年同期比10.1%増と、消費は二ケタ増という絶好調なのだ。にもかかわらず世界同時株安が起きたのは、中国の経済成長率が一段と下がるのではないかという先行き不安からだ。
 中国政府は、7%という高い経済成長率をも維持しようとしている。そのために公共事業を大幅に増やし、為替を切り下げた。そして、1年前にわずか2000ポイント程度だった上海総合指数を国民の投資熱を煽って、2倍半に持ち上げた。それが行き過ぎたとして、少し規制を強めたら株価が暴落して、慌てて株価維持策に打って出ている。そうした強引な成長戦略が限界にきていると、市場は喝破しているのだろう。

 しかし、7%成長というのは、10年で経済規模が2倍になるという高成長だ。発展途上国ならまだしも、経済規模がある程度大きくなったら、実現できる成長率ではない。しかし、それでも中国が高成長を続けなければならないのは、大きな所得格差を抱えているからだ。全体のパイが拡大しているときには、所得格差があっても低所得層の所得も増えていくから、不満は爆発しにくい。ところが、パイが増えなくなって、そのなかで富裕層が自分たちの所得を増やそうと思えば、低所得層から奪うしかなくなる。そうしたら、暴動が頻発してしまうだろう。
 また、世界経済にとっても中国経済が低成長に陥ることは深刻だ。リーマンショック以降、中国経済はいち早く立ち直り、旺盛な輸入需要で世界経済を潤してきたからだ。つまり、中国経済は、世界経済の牽引車の役割を果たしてきたのだ。その牽引車が、少しスピードを緩めただけで世界経済はガタガタになってしまう。

 私は、世界中が陥っている成長依存症から、そろそろ脱却したほうがよいのではないかと考えている。以前、『朝まで生テレビ』で東京新聞の長谷川幸洋氏が、世界が目指すべき目標は平和と繁栄だと主張していた。経済成長は不可欠だというのだ。私は、そのときに、世界に必要なのは平和と平等だと言ったのだが、相手にしてもらえなかった。
 外資系企業の一部には、「アップ・オア・アウト」原則というのがある。毎年業績を拡大できない社員はクビにするというルールだ。しかし、そんなことはできないから社員が辞めていく。常により速く走り続けることを求める社会は、私は長持ちしないだろうと思う。

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