林ゆめ 2018年12月6日号

タクシー業界震撼 押し寄せる“白タク合法化”の波

掲載日時 2016年06月03日 10時00分 [社会] / 掲載号 2016年6月9日号

 「外国人観光客をさらに呼び込む手段として、自家用車の有効利用を拡大する」
 安倍政権が提案しているこの“白タク合法化”案が物議を醸している。ITの活用により自家用車で報酬を得たい一般ドライバーと、簡単に移動したい人とを結び付けるプラットホーム事業者を介在させる方式、いわゆるライドシェア案だ。
 タクシー業界は2002年の規制緩和により新規参入が増加、同業との競合が激しさを増した。リーマンショック以降にはタクシーの輸送人員は減少の一途、さらに運賃の値上げや供給過剰地域に対する減車など、再度規制を強化する動きもある。加えて今、世界中を席巻している配車サービス企業、米Uber(ウーバー)社の存在が業界を脅威に陥れている。

 今年4月、タクシー大手の日本交通が、東京23区、武蔵野市、三鷹市の営業エリアの初乗り運賃を2キロ730円から約1キロ410円に変更する案を国土交通省に提出。認められれば、来年4月から同エリアの初乗り2キロ未満のタクシー利用は新料金が適用される。
 しかし、新料金は長距離料金が数パーセント値上がりする見通しとなっており、子育て世帯や高齢者の短距離利用が期待される一方で「給料日後の週末でさえ長距離客がいなくて困っている。新料金で、より長距離客が減り、収入が一段と減る可能性があるから反対」(都内のタクシードライバー)との声も多い。
 「外国人観光客が増え、コミュニケーションの問題も出てきた。ウチでも英会話研修を導入しているが、ドライバー全体の高齢化が進み、正直、語学研修なんて今さらやってられないという人は多い」(同)

 ドライバーの高齢化は非常に深刻だ。バスやトラックの平均年齢が47歳であるのに対し、タクシーは58歳と約10歳も高い。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(14年度)によると、タクシー事業における39歳未満の若年層の割合は、たったの4.3%しかいない。
 「募集をしても若い人は来ないし、すぐに辞めてしまう」(大手タクシー会社)
 勤務時間も長く、平均収入が300万円台と全産業の中でも低いことも若手離れの要因の一つ。ドライバー募集の広告が通年で目に付くのもそのせいだ。

 近ごろはタクシーチケットを廃止する企業が増えており、利用者の減少に歯止めがかからない。昔は無尽蔵にタクシーチケットを利用していた大手広告代理店関係者さえ「最近は全く使えない。大口取引先であれば上司に事前申請して使えるくらい」と漏らす。タクシーチケットの削減に伴い、長距離客が大幅に減少。前出の都内タクシードライバーは「新宿や銀座など繁華街で客を乗せても5000円圏内の乗客が一番多い。1万円を超える長距離客はめったにお目にかかれない」と嘆く。

 そんな中、動向が注目されているのが冒頭の“白タク合法化”案だ。米国生まれの配車アプリ『Uber』は世界400都市以上でサービスを展開し、創業5年で企業価値5兆円を突破した急成長ベンチャー。自社でタクシーを保有せず、タクシー会社などと提携し配車サービスを提供している。ロンドンではすでにタクシーよりも低価格なUberの利用が拡大している他、オーストラリアの都市部では流しのタクシーが走っていないくらいUberの支持が広がっているという。
 「Uberなどの配車アプリは、利用者自らスマホで配車し、一般ドライバーは空き時間を生かしてドライバーとして送迎するため、タクシー料金よりも低価格で利用することができる。米アップル社も、中国の配車アプリ大手『滴滴出行(ディディチューシン)』へ10億ドル(約1100億円)もの巨額出資を発表しています」(経済誌記者)
 この動きに対し、タクシー業界は断固阻止の構えを見せる。集会やデモで「安全で安心な日本のタクシーを脅かす行為であり、断じてこれを許してはいけない」と訴えている。

 賛否両論−−。発言が常に話題になる実業家、ホリエモンこと堀江貴文氏はこのニュースに触れ「道知らない、カーナビ使えない、横柄なタクシー運転手ばかり」と口撃。自身がUberのサービスを利用した感想として、「目的地はアプリで登録できるし、支払いもその場では必要ない」と、そのメリットを挙げた。
 一方、そんな“賛成派”にかみつくように「変質者が運転していて、女性を誘拐してしまう危険だってあるじゃないか」「つい最近、観光バス会社だって事故を起こして多くの若者を死なせているのに…白タクなんか絶対乗らん!」などの意見も飛び交っている。

 IT化についていけない中小規模のタクシー会社は、市場からの撤退を余儀なくされるのか…。いずれにせよ、利用者がどちらも選べるようになるのが一番いい。

関連タグ:ライドシェア


社会新着記事

» もっと見る

タクシー業界震撼 押し寄せる“白タク合法化”の波

Close

WJガールオーディション

▲ PAGE TOP