森咲智美 2018年11月22日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 怖〜い、怖〜い、「おとな」のホラー映画 『おとなの事情』

掲載日時 2017年03月27日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年3月30日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 怖〜い、怖〜い、「おとな」のホラー映画 『おとなの事情』

 まず、本作の感想は淀川長治節でしゃべりたくなります。「なんとも知れん、恐ろしい映画です。怖いですね〜、怖いですね〜、怖いですね〜」と。
 これほど怖いホラー映画は見たことがないと、思わず震え上がってしまった設定をまずは紹介しましょう。

 ある月食の晩、3組の中年夫婦と1人の男というメンバーでおしゃれなホームパーティーが開かれます。
 どうやら全員が親友であるらしく、酔った勢いで「お互いが本当に信用できるかどうか、スマホのメールや着信を見せ合わない?」という無謀な提案が。
 全員が他人であれば、「いくら親友でもプライバシーはある」などと主張できますが、それぞれのパートナーも隣にいるため、拒否すると隠し事をしていると勘繰られかねません。
 「履歴を公開するわけじゃなし、この短いパーティーの間さえ切り抜けられれば」と思ったのか、全員無理してこの危険なゲームに同意してしまうところから、スリルとサスペンスは始まります。

 何の虫の知らせか、自分はこの映画を珍しく1人で見たのですが、カミさんと一緒でなくてよかったと、どれほど胸をなでおろしたことでしょう。いや、後ろめたいことは何もないのですよ。でも、どんなやぶ蛇を誘発するかと思うと、冷や汗ものです。
 ということで、パートナーと一緒に本作を見る場合は携帯を完全初期化してから、あるいは1人で見てスリルを教訓とされることをお勧めします。
 息詰まる密室劇のような本作はイタリアでは28週のロングラン。日本でもヒットしそうですが、この危険なゲームが一時の王様ゲームのように宴会などで流行しないことを切に願います。

 思えば、携帯の進化、スマホの普及とともに、個人の隠れた趣味嗜好や不穏な交遊関係がこの小さな機具に集中しすぎてしまいました。
 みんなもこの危険を薄々感じてはいますが、生涯、隠しておきたいことを公開処刑のように白日の下に晒すことを楽しむという思いつきが、恐ろしくも新しい。5人の脚本家が集結して作り上げたというこの脚本を、三谷幸喜がリメークしたらどんな日本人役者を配役するだろうと想像してしまいました。

 ところで、私は生涯ガラケー派を表明していますが、品薄と性能の集約化が甚だしい。今年になって変えた機種には、自撮りできる内側カメラ機能がない! 今どき、誰かに携帯を渡して撮影をお願いしないといけないとは恥ずかしい限りですが、意地でもスマホには行きません。

画像提供元:(C)Medusa Film 2015

■『おとなの事情』
監督・脚本/パオロ・ジェノヴェーゼ
出演/ジュゼッペ・バッティストン、アルバ・ロルヴァケル、ヴァレリオ・マスタンドレア、アンナ・フォッリエッタ、マルコ・ジャリー二他
配給/アンプラグド

 3月18日、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。

 新婚や娘の反抗期に悩む夫婦、倦怠期を迎えた2人など7人が集まり、ホームパーティーが開かれる。気心知れた仲間で食事を楽しむ中、「メールが届いたら全員の目の前で開く」「掛かってきた電話にはスピーカーに切り替えて話す」というルールを決め「信頼度確認ゲーム」を開始する。テーブルに7台のスマートフォンを並べ、最初は軽い気持ちで始めたゲームだったが、次第に、7人の隠された姿が露呈していき…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

関連タグ:やくみつるの「シネマ小言主義」

エンタメ新着記事

» もっと見る

やくみつるの「シネマ小言主義」 怖〜い、怖〜い、「おとな」のホラー映画 『おとなの事情』

Close

WJガール

▲ PAGE TOP