葉月あや 2019年5月2日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★モノの自給を守れ

掲載日時 2019年01月21日 06時30分 [社会] / 掲載号 2019年1月31日号

 財政再建をしないと、日本がハイパーインフレに襲われると主張する学者がいる。財政赤字が拡大すると円の信認が失われ、為替が暴落、輸入品の価格が暴騰するため、それがハイパーインフレを招くというのだ。

 そうした見方に私は、これまで一貫して反論してきた。日本はモノ作り大国だ。万が一、極端な円安が訪れたら、日本は世界へ雪崩のように輸出をして、高度経済成長が訪れる。そうなったら、円は再び高くならざるを得なくなる。

 いまでも、その考えに変わりはない。しかし、遠い将来を考えると、この理屈が通用するのか不安になってきた。日本の製造業が空洞化を始めているからだ。

 農業分野では、食料自給率という数字がよく使われる。これは国内消費(=国内生産+輸入−輸出)の何%が、国内生産で賄われているのかという数字だ。

 産業連関表という統計を使うと、すべての産業の自給率を計算できる。製造業の自給率を計算すると、1985年に108・9%あった自給率が、2011年には102・1%に下がっている。産業連関表では、そこまでしかデータが採れないので、SNA産業連関表というGDP計算に使われる統計で、直近の動向をみると、2016年の自給率は、100・6%まで下がっていた。つまり現時点の日本は、モノをギリギリ自給できるところまで追い詰められているのだ。

 なぜそんなことになったのか。それは、製造業の内訳ごとに自給率をみれば明らかだ。輸送用機械の自給率が131・1%と、非常に高い一方で、繊維製品の自給率は、48・5%と半分弱。情報・通信機器の自給率も56・4%という悲惨な状況になっているのだ。

 かつて、日本は家電王国だった。それは、携帯電話が全盛の90年代でも同じだ。ところが、スマートフォン(以下、スマホ)が主流になると、日本の家電メーカーは、次々とスマホ生産から撤退してしまう。いま、スマホの国内メーカーは、ソニーと富士通とシャープだけ。しかも、シャープはすでに台湾資本のため、純粋な国内メーカーと言えるかどうか微妙だ。

 国内家電メーカーがスマホから撤退した理由は、米国、韓国、中国製のスマホが日本の消費者に好まれたからだ。しかし、学生がパソコンやテレビを持たない現状や、IoTで様々なモノがスマホとつながっていく状況を考えると、今後は家電の中心がスマホになることは確実だ。だから私は、国産スマホを守るべきだと考えている。

 中国は、米国がファーウェイ製スマホの使用を禁止する決定をしたのを受けて、国内でiPhoneの使用を止め、ファーウェイに切り替える運動が起きている。日本の人口は中国に比べて少ないので、国産機使用の推奨が、中国のような大きな効果は持たないだろう。それでも、崖っぷちに追い詰められた日本のスマホを少しは元気づけられるのではないか。

 もちろん、国産スマホを守る責任は国にある。ところが、国は経営危機に陥ったシャープを救済しなかっただけでなく、官民ファンドの産業革新投資機構も、国内メーカーだけでなく、アメリカのベンチャー企業にまで出資している始末だ。早く国内製造業を守らないと、日本経済が破たんするリスクは高まるばかりだ。

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