葉加瀬マイ 2018年11月29日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第170回 日本に『国の借金』問題など存在しない

掲載日時 2016年04月15日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年4月21日号

 わが国の2016年2月のコアCPI(日銀のインフレ目標の指標)が発表になった。結果は2カ月連続の0%。相変わらずゼロインフレの状況が続いている。
 それに対し、日本銀行の量的緩和により、マネタリーベース(現金、日銀当座預金、硬貨の合計)は増えに増えた。直近のマネタリーベースの総額は358.8兆円。'13年4月と比較すると、209兆円増加である。
 黒田日銀発足以降、日本銀行は209兆円ものおカネを発行したにもかかわらず、インフレ率はゼロ…。安倍総理よ、それでもデフレは「貨幣現象」だと言うのか。

 皮肉はともかく、日本政府の「投資の拡大」、つまりは財政出動の必要性が高まっている。誰かが消費・投資としてモノやサービスの購入におカネを使わない限り、インフレ率は上がらないのだ。日本銀行はおカネを発行する際に国債を買い取っている。国債はモノでもサービスでもないため、たとえ1000兆円を買い取ったところで、その時点ではインフレ率に影響を与えない。
 もちろん、日本政府の投資の拡大とは言っても、別に公的固定資本形成(公共投資)の形を取る必要は必ずしもない。インフラと技術への投資が増えるのであれば、「政府から民間への無利子融資」であっても一向に構わない。

 何の話をしたいかと言えば、リニア新幹線である。
○東京一極集中の解消。
○大阪を中心とする西日本経済の復興。
 現在の日本がリニア新幹線の東京-名古屋-大阪同時開業を目指さない理由はない。加えて、これ以外にも「今こそリニア同時開業を決断する理由」を大きく二つ持っている、

 一つは、もちろんデフレーションである。政府ですら8兆円規模のデフレギャップがあると認めている状況で、総需要を拡大するリニアの早期開業を目指さない理由が分からない。
 そして二つ目は、長期金利のマイナスだ。直近の長期金利は▲0.09%。政府は金利負担なしで、おカネを借りることが可能という異様な状況になっている。
 ちなみに、リニア新幹線が東京-名古屋-大阪間の早期開業で実現すると、GDPが総計で100兆円以上も増える。GDPが100兆円超拡大すると、税収が15.1兆円増える。
 というわけで、政府としては15.1兆円以下の投資であれば、「ビジネス」として見てもペイするという話になるのだ(その上、マイナス金利だ!)。
 リニア新幹線の東京-名古屋-大阪の同時開業は、政府の公共投資として見ても十分以上にB/C(費用便益分析)が高い投資ということになる。リニア新幹線東京-大阪間の建設コストは9兆円だ。

 しかも、筆者は別にリニア新幹線を公共投資で建設するべきとは言っていない。あくまで事業主体はJR東海なのだから、マイナス金利を利用して政府が無利子融資すればいい、と提言しているのだ。
 JR東海の山田佳臣会長は、9兆円の建設費を自己負担するリニア新幹線について、過去に「(無利子融資などの資金調達面で)国から特別の配慮のある提案があれば、同時開業の提案の受け入れを検討したい」と発言している。政府が財政出動の拡大に動いている以上、マイナス金利で政府がおカネを借り、JR東海に東京-大阪間の早期開業を目的に貸し出すことは、圧倒的な合理性を持つはずだ。

 ところが、現実にはいわゆる「国の借金」という、ありもしない財政問題に足を取られ、政府の支出拡大(たとえ融資であっても)に政治家は二の足を踏む。相も変わらず、
 「日本は国の借金で破綻する!」
 「この1000兆円を超す借金を将来世代に残していいのか!」
 といった、バカげたレトリックが幅を利かせ、正しいデフレ対策を妨害する。くどいようだが、わが国にいわゆる「国の借金」問題などない。

 右下の図(※本誌参照)の通り、日銀の国債保有総額は288.3兆円、全体に占める割合は、'15年末時点で32%に達している。直近では、3割を上回っているのは間違いない。
 筆者が図の国債所有者別内訳を初めて作成したのは5年前だが、当時は日銀の保有割合は5%程度にすぎなかった。ところが、その後、日本銀行が日本円(日銀当座預金)を発行し、預金取扱機関(銀行など)から国債を買い取る「量的緩和」を拡大し、すでに3割である。日本銀行が保有する国債について、政府は利払いをする必要はなく、返済も不要だ。すなわち、図の3分の1は、実際には「借金」ではない。
 理由は、日本銀行が日本政府の子会社であるためだ。子会社と親会社間のおカネの貸し借りや利払いは、連結決算で相殺されてしまう。現時点で、約300兆円分の「いわゆる国の借金」については、借金でも何でもない。しかも、現在も日銀は量的緩和を続け、政府の実質的な借金がひたすら減り続けている。
 もっとも、それでも「日本銀行保有の国債」が「いわゆる国の借金」に計上される限り(財務省は続けるだろう)、全体の負債残高は変わらない。

 というわけで、日本銀行が保有する国債について、償還期限が来たものから「無期限・無利子国債」に交換し、政府の負債から消してしまうのだ。さすがに「返済不要・利払い不要」の債権であれば、要するに現金紙幣と同じであるため、「借金」扱いする人もいなくなることだろう。
 もちろん、全額を一気にやる必要はない。償還期限が来たものから順次、交換していけばいいのだ。

 結局のところ、日本円という通貨の発行権限を持つ政府にとって、「借金」とはこの程度の存在なのだ。個人や企業にとって、おカネは重要だ。とはいえ、政府にとっては違う。
 この当たり前の事実を、国民一人一人が理解してほしい。わが国には、いわゆる「国の借金」問題など存在しない。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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