葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(113)

掲載日時 2016年07月16日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年7月21日号

◎快楽の1冊
『アルゴリズム・キル』 結城充考 光文社 1700円(本体価格)

 本書は作者が書き続けている『クロハ』シリーズの一冊だ。前作、前々作に触れてから本作を読むほうが楽しめるかもしれないが、基本的にシリーズ作品は、それ一冊のみ単体でも読めるように作家が考慮して書くものなので、シリーズすべてを読破しなくても大丈夫だ。今回、本書を紹介するのは、県警の機動捜査隊にいて捜査の第一線で活躍していたヒロインが、所轄の警務課という地味な部署に異動となり、それでも果敢に事件に挑む姿が新鮮だったからだ。
 とは言え、いくらかの補足説明は必要だろう。作者のデビューは2005年だが、飛躍的に筆力を上げたきっかけは'08年に日本ミステリー文学大賞新人賞を得た『プラ・バロック』であった。これが『クロハ』シリーズの1作目である。その後『エコイック・メモリ』、『衛星を使い、私に』と刊行されていく。さらに付け加えて言うと、この作者は日本人の登場人物であっても、カタカナ表記にするという独特の書き方を得意としている。本作の主人公は黒葉佑という氏名だが、作中ではクロハと記されるのだ。実際に読んでいただければ分かると思うけれど、この表記は読みやすさにつながる。それを作者は意図しているのではなかろうか。
 さて本書であるが、クロハは行き過ぎの捜査などを問題視され、いわば左遷されて警務課に配属された。退屈な日々が続く。裏方の事務仕事、という感じでパソコンに向かう毎日だ。しかし、区役所の子供支援室とたまたま関わることとなる。これが端緒となって未成年に対する大人の虐待、未成年によるものらしい殺人事件に取り組むのだ。
 つまり本作は、不本意な立場に置かれ悶々としているヒロインが、子供たちの悶々に寄り添い、問題解決をしていく物語なのだ。ハード・アクションも楽しめるけれど、基本的に優しさが味わえる小説だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 『iroha(いろは)』と名づけられたかわいい外見のローターがヒットするなど、女性がオナニー用アダルトグッズを抵抗なく使用する時代になったといわれる。
 そんな風潮を象徴するように、少年画報社が発行する青年誌『ヤングキング』に連載されていた漫画『おとなのオモチャ』が単行本となった(565円+税)。内容は、地味で奥手、もちろん処女のメガネ娘が、あろうことか社長以下、従業員が全員♀だけのアダルトグッズ製作会社に就職。仕事上の業務に迫られ、夜な夜な自社製品を自宅で試用し、性に目覚めていくというもの。
 主人公がバイブでオナる姿が描れたかと思えば、直後に「振動はいいがパワーに欠ける。★3つ半」など、いきなり真面目にメモをする。会社の会議シーンでは、「(バイブの)亀頭の色がピンクではよくない」と、女同士が玩具の試用感想を赤裸々にぶつけ合う。さらに女社長が同性愛者で、社員を次々に寵愛していくという官能描写もある。
 しょせんは漫画の世界…と思うなかれ。今ではスタッフが女性オンリーという女性向けAVメーカーも実在するし、オナニーグッズの開発にも、使用者の意見がきちんと反映されている、そんなご時世である。女のカラダは女が最も知っており、知識も経験も、むしろ男の方が格段に遅れているのではないか…。この漫画を読むと、そんな風に思えるのだ。
 作者の花見沢Q太郎氏の描く絵が、戸惑うことばかりの主人公の純真さとマッチしていてかわいらしい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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