香港デモ「夜の無法痴態」1カ月以上占領が続く裏面史(2)

エンタメ・2014/11/12 17:00 / 掲載号 2014年11月20日号

 もう一つ、占拠された通りがある。旺角(モンコック)と呼ばれる香港随一の繁華街。東京なら新宿歌舞伎町だ。バリケードで封鎖された交差点を中心に、民主化を求める市民、学生による占拠が続いている。
 ここにいるのは、学生に加えて労働者が多い。『土盤侠は学生を支持する』というスローガンの土盤侠とは、土方のおっさんという意味らしい。当然気も荒い。
 「デモは迷惑、すぐやめろ」
 というヤジ馬の声に、
 「北京の犬は帰れ」
 とやり返す。土方のおっさんがケンカを売っている相手は、黒ずくめに青いマスクをつけている男たちだ。五星紅旗、つまり中国国旗を振りかざしてデモ隊を威嚇している。
 彼らは大陸派と呼ばれる北京政府を支持している勢力。だが、その正体は意外なものだった。
 「あいつら、大陸から来たヤクザだよ」

 モンコックは一本奥に入ると一大風俗街となる。そこは中国に返還前からいる香港ヤクザに、大陸からの中華マフィア、台湾マフィア、北京系の軍隊くずれと、さまざまな勢力が入り乱れているらしい。
 「あいつらは酷いよ。夜になると、こん棒なんかで襲ってくるんだ」
 モンコックはデモでは危険が伴う最前線なのだ。このデモ、夜を見ないと、その本質は見えないらしい。

 モンコックの裏の歓楽街は、道の上に巨大な『夜総会』と書かれた電飾の看板がいくつもかかっている。なかなか刺激的な光景だ。来日経験もある通訳が、ニヤリと笑い解説した。
 「夜総会は、日本でいう連れ出しクラブのようなもの。女の子が横についてくれるし、交渉で店の外のラブホテルに行ってくれる。香港では店の外に出れば、売春も合法なんだよ。でも値段がよくわからなくて、ボッタクられるよ」

 そんな『連れ出しクラブ』がこうも堂々と看板を掲げているのは、さすがにすごい光景だ。夜総会の入っているビルの入口でホステスの一人に声をかけられた。最初は広東語だったが、日本人だとわかると、カタコトでまくしたててきた。
 「日本人? エッチ、大丈夫。セックス、オーケーね」
 推定年齢31歳ほどの女は真剣だ。通訳がニヤニヤしているが、彼女が去ってからこう言った。
 「あの女の広東語は大陸なまりだね。出稼ぎだ」

 ここ数年、大陸の中華マフィアの店が増えたという。大陸から安い金額で働く女たちを連れてきては荒稼ぎをしていたのだ。
 それが現在では閑古鳥が鳴いているらしい。世界に配信されたデモの映像は暴動のように扱われており、さすがに危険を感じた旅行者は香港への渡航を控えるようになった。観光客相手のレストランや夜の歓楽街は、デモの長期化で売り上げが下がっているという。
 「だから、大陸のヤツらがデモを潰そうとしている」

 しかし、客が減るというならば、他の香港ヤクザの店なども同じではないか。
 「香港人は違う。あいつら(中華マフィア)は北京に繋がってるから」
 デモにちょっかいを出しているのは北京政府の息がかかった中華マフィアだという。どうやら、どこかの勢力から金も出て、デモ潰しを組織的にやっているのだ。一方で返還前からいる香港ヤクザの中には、デモに参加している者もいる。
 「これは、我々香港人の戦いだから」
 中国人ではなく、香港人。今回の取材で何度も聞いたフレーズだ。

 偽モノ時計や偽ブランドなどを売る女人街という観光客相手の露店が立ち並ぶ通りも人が減っているらしい。ベンツやBMWのエンブレムがバックルについている、日本人ならまず買わないようなパチモノベルトを売っている店のおばさんが言う。
 「デモで客が来ないのは困るけど、ここにも大陸のヤツらが店を出すようになった。ツアーの客を丸ごと抱え込むのもいて、こっちは商売があがったり。学生たちは、そういうこともなんとかして欲しいね。どうだい、この時計、安くするよ」
 そういって勧められたロレックスは日本円で3万円だという。明らかな偽モノだ。丁重にお断りした。
 香港の人たちは、ここ数年、大量にやってくる大陸からの成金観光客をよく思っていない。いや、むしろ彼ら、大陸の観光客などへの反発が今回のデモのエネルギーになっているという。

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